11 / 67
10.意見
しおりを挟む
そう言うと父は大きく深呼吸をして、空を眺めた。私も空を眺める。空って果てがない。私は自分と同類の人に会うということが、本当にこの空のように、果てしなく『無い』ことだと思っていた。でもシンプルに考えれば、私がいるのなら、誰かが他にいてもおかしくないはずだ。その出会いが現実的に迫ってきたこの感覚。怖くもあったが、楽しみな気持ちもある。それなのに―。
父が口を開いた。
「父さんは水希の味方だが、」
「うん」
「お前がかわいそうだなと思うこともあったよ。何というか、仲間に出会ったことがないだろう、自分の思うことを正直に話した時に、共感してくれる人に。なんとも孤独じゃないか。それがいるとするなら―」
「奇跡に近い出会いだよね」
「うん。いい出会いになるだろうと思ったんだが、そうじゃないのか」
「……父さんなら分かってくれると思ったんだ、今私が抱いている複雑な気持ちを」
「会いたいけれど、会うなら会うで、不安ってことか」
「そう。自分の力の、ある意味異常な所を知っているから、同じことができる人はやっぱり、どこか異常なんだと思うの。自分のことを分かっている分、怖くもある。どんなことをしてくるのだろうって」
「異常というよりも、特異なんだと思うよ。同音異義語で得意、つまり優れているとも言えるだろう? 良い言い方をするならば」
「特異と得意か……」
「そうそう。水希、原点回帰してみたらいい」
「うん? 」
「この森で昔、私と色々試したよな。水希の言うハーモニーを探し求めて。あの感覚を、ここでもう一度探ってみたら」
「調和について理解し直せ、ってこと? 」
「まあそんな所だ。父さんはお前の感覚を推察することしかできないから、昔の練習を思い出しつつ、自分の力について理解し直してみたらどうだろうと。何となくそう思っただけなんだが」
「いいかもしれない。ありがとう、とてもいいことを聞けた気がする」
「なら、私は仕事に戻るからね。水希は昔から私を、大なり小なり振り回してきたが、何というか、憎めない所が長所というか、利点というのか」
「ふふ。父さんは仕事に戻って。私はここで、これから色々試してみる」
「森をぶっ壊さないでくれよ。じゃあな! 」
父はそう言うとベンチから立ち上がり、私の肩をポン! と叩いてから、小走りで事務所へ戻っていった。その後ろ姿を目で追うと、私は我に返り、すっと立ち上がって、心を落ち着かせながら、辺りの気配を探る。
父が口を開いた。
「父さんは水希の味方だが、」
「うん」
「お前がかわいそうだなと思うこともあったよ。何というか、仲間に出会ったことがないだろう、自分の思うことを正直に話した時に、共感してくれる人に。なんとも孤独じゃないか。それがいるとするなら―」
「奇跡に近い出会いだよね」
「うん。いい出会いになるだろうと思ったんだが、そうじゃないのか」
「……父さんなら分かってくれると思ったんだ、今私が抱いている複雑な気持ちを」
「会いたいけれど、会うなら会うで、不安ってことか」
「そう。自分の力の、ある意味異常な所を知っているから、同じことができる人はやっぱり、どこか異常なんだと思うの。自分のことを分かっている分、怖くもある。どんなことをしてくるのだろうって」
「異常というよりも、特異なんだと思うよ。同音異義語で得意、つまり優れているとも言えるだろう? 良い言い方をするならば」
「特異と得意か……」
「そうそう。水希、原点回帰してみたらいい」
「うん? 」
「この森で昔、私と色々試したよな。水希の言うハーモニーを探し求めて。あの感覚を、ここでもう一度探ってみたら」
「調和について理解し直せ、ってこと? 」
「まあそんな所だ。父さんはお前の感覚を推察することしかできないから、昔の練習を思い出しつつ、自分の力について理解し直してみたらどうだろうと。何となくそう思っただけなんだが」
「いいかもしれない。ありがとう、とてもいいことを聞けた気がする」
「なら、私は仕事に戻るからね。水希は昔から私を、大なり小なり振り回してきたが、何というか、憎めない所が長所というか、利点というのか」
「ふふ。父さんは仕事に戻って。私はここで、これから色々試してみる」
「森をぶっ壊さないでくれよ。じゃあな! 」
父はそう言うとベンチから立ち上がり、私の肩をポン! と叩いてから、小走りで事務所へ戻っていった。その後ろ姿を目で追うと、私は我に返り、すっと立ち上がって、心を落ち着かせながら、辺りの気配を探る。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
うりふたつ
片喰 一歌
恋愛
「あの、お心遣いには感謝しますけど、お兄さんのことは半分も信じてませんからね」
「しっかりしてるねえ。ひとまずは俺、初対面の馴れ馴れしくて怪しいお兄さんってことで」
(※本文より抜粋)
ある日、アキノの前に現れたナンパ男は、死んだ恋人・ハルトにうりふたつだった。
無口な彼とは対照的におしゃべりなその男は、自分をハルト本人だと言い張る。
アキノは半信半疑ながらもその男の誘いに乗り、『冥界デート』に付き合うことに。
聞くと、彼は生前の目的を果たすために戻ってきたらしい。
その口から語られたのは、亡き恋人しか知らないはずの『一緒のお墓に入りたい』というアキノの願いだった。
戻ってきたハルトは、どのようにしてアキノの願いを叶えるつもりなのか?
衝撃のラストは必見です!
2024/5/6~ 1話あたりの分量を変えて帰ってきました!
あなたはこの結末をどう読みますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる