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俺がどんどん、構うことなくチンピラと女の子に向かって近づいていくと、
「助けて!」
と悲痛な叫び声を上げた女の子が、俺の存在に気が付いて助けを求めた。すると、その声で男共は、彼らに向かって猛突進してくる俺を認めて、一旦動きを止めた。
目をキラキラさせて俺は、彼らのすぐ側まで行くと、3人の男達は、キンキンに張りつめた瞳で俺を見つめ、無言の圧力をずんずんかけてくる・・・。
その怖い雰囲気にゾクゾクして、俺は思わずこう呟いたものだ。
「・・・カッコいい。」
するとチンピラ3人組の中でも、おそらく一番年の若い、(もしかしたら俺より若いかもしれない)髪を肩まで伸ばした男が、1歩俺に向かって進み出て言った。
「はあぁ?何だ、お前?
・・・何ぶつぶつ言ってんだ。」
「かっこいいですよね、あなたたち。」
俺が少しうっとりとしてそう言うと、その男はますます目を剝いて、一声叫んだ。
「・・・はあ?」
俺は特に敵意がないという事を示すために、その3人組に笑みを湛えて、気さくに声を掛けたさ。
「あの、・・・もしよかったら俺も、仲間に入れて下さい。」
すると彼らは一斉に黙り込んだ。そして無理矢理掴んでいた女の人の手を離し、(その直後、彼女は逃げ去るネズミのような猛スピードで駆け出しては、何処かへと消えていった。)気がつくと3人で円陣を組んで、俺を取り囲んでいた。
俺は次第に空気がどんどん悪くなっていく様子を、まるで冷気でも感じるように、肌身にビンビン感じ続けていたが、それでも友好的な態度は崩さず、希望を持ち、明るく彼らに向かって話し続けた。
「あの、僕は・・・、いや、俺も、ぜひあんな可愛い女の子と関係を持ちたかったんです。
だから、その・・・、」
「なめてんじゃねえぞ、コラァ!」
髪の長い、若いチンピラが再び叫んだ。俺は弁解するように言った。
「いや違います、決してなめているわけではなく、つまり・・・、」
「―つまりだ。
あんたは、俺達の邪魔をしに来たんだろう。」
一番太ってがたいのいい、スキンヘッドの男が、ねめつけるように俺を見て、そう言った直後。
強烈なアッパーカットが俺を襲った。
その後に繰り広げられた、3人のチンピラが俺に浴びせかける暴力は、止まる所を知らなかった。
「ぎゃあ!」
「痛い!」
「誰か!」
「やめて!助けて!」
と俺は様々な叫び声を上げたが、そこに救いの手が、どこからも差し伸べられることはなく、長々とむごい暴力が続けられた。
「おい、ちょっと待て。」
茶色のサングラスを掛けている、この3人の中では一番ちんまりとしたサイズの男がそう言うと、やっと暴行はいったん収まりを見せた。そして喘ぎながら、ボロボロになって地面に蹲っている俺に向かって、彼は話し掛けてきた。
「おい、あんたさ。女の子には逃げられちまったし、俺らは目的を果たし損ねたし。
・・・この落とし前を、どうやってつけてくれるんだ?」
「あの、・・・本当にすみません。俺は別にそんなつもりではなくって・・・、」
「そんなつもりも、こんなつもりもねぇんだよ。
そうだな、だがただ一つ、簡単な解決方法があるにはある。」
「えっ、それは・・・?」
「財布を出しな。」
男はそう言うと、俺に向かって手を差し出した。それからその手に捕まって、やっとの事で立ち上がった俺は、ジーパンのポケットから財布を取り出して、素直にその男に手渡した。
すると彼は手早く財布の中を開いて、手際よく中に入っているお札だけを綺麗に全部抜き取ると、(それは本当に手慣れた手つきだった)金額を確認して、(全部で3万3千円もあったのだ。俺は今でもその金額を忘れる事ができずにいる。)すっからかんになった財布を俺に投げつけて言った。
「今日の所はこれでチャラにしておいてやる。
これに学んでもう二度と、・・・馬鹿な真似をしようとするなよ。」
そう凄んでみせてから、彼らは顔を見合わせて頷き合うと、惨めな僕を置き去りにして、何処かへと姿を消していったのである。
「助けて!」
と悲痛な叫び声を上げた女の子が、俺の存在に気が付いて助けを求めた。すると、その声で男共は、彼らに向かって猛突進してくる俺を認めて、一旦動きを止めた。
目をキラキラさせて俺は、彼らのすぐ側まで行くと、3人の男達は、キンキンに張りつめた瞳で俺を見つめ、無言の圧力をずんずんかけてくる・・・。
その怖い雰囲気にゾクゾクして、俺は思わずこう呟いたものだ。
「・・・カッコいい。」
するとチンピラ3人組の中でも、おそらく一番年の若い、(もしかしたら俺より若いかもしれない)髪を肩まで伸ばした男が、1歩俺に向かって進み出て言った。
「はあぁ?何だ、お前?
・・・何ぶつぶつ言ってんだ。」
「かっこいいですよね、あなたたち。」
俺が少しうっとりとしてそう言うと、その男はますます目を剝いて、一声叫んだ。
「・・・はあ?」
俺は特に敵意がないという事を示すために、その3人組に笑みを湛えて、気さくに声を掛けたさ。
「あの、・・・もしよかったら俺も、仲間に入れて下さい。」
すると彼らは一斉に黙り込んだ。そして無理矢理掴んでいた女の人の手を離し、(その直後、彼女は逃げ去るネズミのような猛スピードで駆け出しては、何処かへと消えていった。)気がつくと3人で円陣を組んで、俺を取り囲んでいた。
俺は次第に空気がどんどん悪くなっていく様子を、まるで冷気でも感じるように、肌身にビンビン感じ続けていたが、それでも友好的な態度は崩さず、希望を持ち、明るく彼らに向かって話し続けた。
「あの、僕は・・・、いや、俺も、ぜひあんな可愛い女の子と関係を持ちたかったんです。
だから、その・・・、」
「なめてんじゃねえぞ、コラァ!」
髪の長い、若いチンピラが再び叫んだ。俺は弁解するように言った。
「いや違います、決してなめているわけではなく、つまり・・・、」
「―つまりだ。
あんたは、俺達の邪魔をしに来たんだろう。」
一番太ってがたいのいい、スキンヘッドの男が、ねめつけるように俺を見て、そう言った直後。
強烈なアッパーカットが俺を襲った。
その後に繰り広げられた、3人のチンピラが俺に浴びせかける暴力は、止まる所を知らなかった。
「ぎゃあ!」
「痛い!」
「誰か!」
「やめて!助けて!」
と俺は様々な叫び声を上げたが、そこに救いの手が、どこからも差し伸べられることはなく、長々とむごい暴力が続けられた。
「おい、ちょっと待て。」
茶色のサングラスを掛けている、この3人の中では一番ちんまりとしたサイズの男がそう言うと、やっと暴行はいったん収まりを見せた。そして喘ぎながら、ボロボロになって地面に蹲っている俺に向かって、彼は話し掛けてきた。
「おい、あんたさ。女の子には逃げられちまったし、俺らは目的を果たし損ねたし。
・・・この落とし前を、どうやってつけてくれるんだ?」
「あの、・・・本当にすみません。俺は別にそんなつもりではなくって・・・、」
「そんなつもりも、こんなつもりもねぇんだよ。
そうだな、だがただ一つ、簡単な解決方法があるにはある。」
「えっ、それは・・・?」
「財布を出しな。」
男はそう言うと、俺に向かって手を差し出した。それからその手に捕まって、やっとの事で立ち上がった俺は、ジーパンのポケットから財布を取り出して、素直にその男に手渡した。
すると彼は手早く財布の中を開いて、手際よく中に入っているお札だけを綺麗に全部抜き取ると、(それは本当に手慣れた手つきだった)金額を確認して、(全部で3万3千円もあったのだ。俺は今でもその金額を忘れる事ができずにいる。)すっからかんになった財布を俺に投げつけて言った。
「今日の所はこれでチャラにしておいてやる。
これに学んでもう二度と、・・・馬鹿な真似をしようとするなよ。」
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