10 / 48
9.リフレイン
しおりを挟む
遊歩道の曲がり角を曲がって、自分達の姿が隠れたところで、私は母から手を放し、また元のペースで歩き始めた。辺りの緑が目に優しく染み渡る。母は軽やかに歩きながら、嬉しそうに言った。
「高木さん、私のことをいい人だって言っていたわ」
「うん」
「私って、いい人だったのね」
「……お母さん」
「あら、何?」
「いい人って何?」
「うーん、性格が良い人ってことかしら」
「その性格の良い人に、どうして私はこんなに苦しめられたの」
「道子」
「お母さんが正義なら、私は悪で、消えるべき存在なの」
「そんなに気にしちゃだめよ。心によくないわ」
「お母さんと生きた二十五年が、私は本当に辛かった―」
そう言うと自然に涙が溢れてきそうになった。母はただ私を見ていた。悲しみも苦しみも迷いもない瞳で―。私は母から目を逸らし、黙って道を歩き続けた。
「高木さん、私のことをいい人だって言っていたわ」
「うん」
「私って、いい人だったのね」
「……お母さん」
「あら、何?」
「いい人って何?」
「うーん、性格が良い人ってことかしら」
「その性格の良い人に、どうして私はこんなに苦しめられたの」
「道子」
「お母さんが正義なら、私は悪で、消えるべき存在なの」
「そんなに気にしちゃだめよ。心によくないわ」
「お母さんと生きた二十五年が、私は本当に辛かった―」
そう言うと自然に涙が溢れてきそうになった。母はただ私を見ていた。悲しみも苦しみも迷いもない瞳で―。私は母から目を逸らし、黙って道を歩き続けた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
『恋しくて! - I miss you. 』
設樂理沙
ライト文芸
信頼していた夫が不倫、妻は苦しみながらも再構築の道を探るが・・。
❧イラストはAI生成画像自作
メモ--2022.11.23~24---☑済み
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
チェスがしたいだけなのに!
奏穏朔良
ライト文芸
「……なんでこうなった??」
チェスがしたかっただけなのに、いつの間にか反社会勢力のボスに祀りあげられ、暴力団やテロ組織と対決することになる男子高校生の話。
戦犯は上手く動かない表情筋と口である。
****
2023/07/17本編完結しました。
ちまちま番外編あげる予定です。
【注意】勘違いの関係で視点がよく変わります。
見直していますが誤字脱字やりがちです。
ライト文芸大賞にて最高順位が32位でした。投票して下さった読者の皆様本当にありがとうございます!(2023/06/01)
魔術師セナリアンの憂いごと
野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。
偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。
シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。
現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。
ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。
公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。
魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。
厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる