40 / 48
38.
しおりを挟む
「何となく行きたい場所ってことで、函館と小樽を行き先に選んでしまったけれど、函館から小樽まで、俺、電車で行ったの。それが凄く時間がかかってしまって。ま、楽しかったからいいけどね。道民の方たちの雰囲気が伝わってくるし、窓の外で移り変わる景色も、明らかに本州と空気感が違うんだよな。ずっと見ていても、全然飽きなくてさ」
「なんか、いいな」
「ん? 」
「旅っていいものですよね。私も行きたい」
「今度、一緒に行こうか」
「そう……ですね」
「旅の写真を見る? ちゃんと持ってきたんだよ」
「あ、見たいです」
「良いのだけ選んできたんだ。……はい、これ」
「えーと。多分、これが函館でしょう? レンガ何とか……」
「レンガ倉庫ね。おみやげ屋さんがぎっしり入っていた」
「そうなんだ。こちらは西洋風の奇麗な建物ですが……」
「教会群ね。ずらーっと、教会が建つ通りがあるの」
そんな感じで、私と川村さんは時間をかけて、旅の話をした。コーヒーを飲みつつ、想像を巡らせ、川村さんが楽しげに話す横顔を、話を聞きながら眺めていた。面白いし、楽しい時間だったけれど、話の途中で、ある思いが頭を占めだして、しばらくして話が落ち着いたときに、私は突然こう言った。
「川村さん」
「うん、何? 」
「私、ブログをやめようと思っています」
「―え。本当に? 突然の告白でびっくりしたけれど」
「ごめんなさい、唐突で。でも今日お会いできたらその話をしようと、何となく思っていました」
「何か理由でもあるの? 変なコメントでも来たとか」
「変なコメントが来るほど、人気のブログでもないですよ。そうだな、……違和感を感じるようになったんです、ブログを書くことに。何か違うという思いが、どうにもならない程に育ってしまい……」
「違和感って、ブログが楽しくないとか、そういうことではないの? 」
「違うと思います。私のブログとの関わり方の問題かもしれません。自分がやっていることが、どこへ向かおうとしているのか、見失ってしまった。そういう感じ」
「なら、やり方を変えればいいんじゃない? 方向性を変えて、新たなブログを始めるとかさ」
「でも、今はやりたくないんです。理由はきっと、根が深い。そんな気がする」
「そうか。残念な気もするけれど、それが自分の意志なら、仕方がないね。今すぐやめるの? 」
「自分の中でけりがついた時点で。そう考えています」
「ま、ブログがなくなっても、俺らの関係は続くんだろう? 」
「そう、ですね。あの、川村さんは、私のことが好きですか? あけすけですけれど」
「うん。だから付き合っているんでしょう」
「なんか、いいな」
「ん? 」
「旅っていいものですよね。私も行きたい」
「今度、一緒に行こうか」
「そう……ですね」
「旅の写真を見る? ちゃんと持ってきたんだよ」
「あ、見たいです」
「良いのだけ選んできたんだ。……はい、これ」
「えーと。多分、これが函館でしょう? レンガ何とか……」
「レンガ倉庫ね。おみやげ屋さんがぎっしり入っていた」
「そうなんだ。こちらは西洋風の奇麗な建物ですが……」
「教会群ね。ずらーっと、教会が建つ通りがあるの」
そんな感じで、私と川村さんは時間をかけて、旅の話をした。コーヒーを飲みつつ、想像を巡らせ、川村さんが楽しげに話す横顔を、話を聞きながら眺めていた。面白いし、楽しい時間だったけれど、話の途中で、ある思いが頭を占めだして、しばらくして話が落ち着いたときに、私は突然こう言った。
「川村さん」
「うん、何? 」
「私、ブログをやめようと思っています」
「―え。本当に? 突然の告白でびっくりしたけれど」
「ごめんなさい、唐突で。でも今日お会いできたらその話をしようと、何となく思っていました」
「何か理由でもあるの? 変なコメントでも来たとか」
「変なコメントが来るほど、人気のブログでもないですよ。そうだな、……違和感を感じるようになったんです、ブログを書くことに。何か違うという思いが、どうにもならない程に育ってしまい……」
「違和感って、ブログが楽しくないとか、そういうことではないの? 」
「違うと思います。私のブログとの関わり方の問題かもしれません。自分がやっていることが、どこへ向かおうとしているのか、見失ってしまった。そういう感じ」
「なら、やり方を変えればいいんじゃない? 方向性を変えて、新たなブログを始めるとかさ」
「でも、今はやりたくないんです。理由はきっと、根が深い。そんな気がする」
「そうか。残念な気もするけれど、それが自分の意志なら、仕方がないね。今すぐやめるの? 」
「自分の中でけりがついた時点で。そう考えています」
「ま、ブログがなくなっても、俺らの関係は続くんだろう? 」
「そう、ですね。あの、川村さんは、私のことが好きですか? あけすけですけれど」
「うん。だから付き合っているんでしょう」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる