buroguのセカイ

桃青

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「美里に男がいなかった期間って、長いものねえ。男性へ恐怖心を抱く気持ちも分かるよ。どういう所が怖いの? 」
「ひゅーっと、ひゅーっと、彼に吸い込まれそうになる」
「なんで、二回言った」
「そこが彼に惹かれるポイントで、それと同時に、怖いと思うポイントでもあるの」
「モテそうなタイプの人なのかしら」
「どうだろう。ルックスは悪くないし、性格もマイルドだから、付き合いやすいタイプじゃないかな。好きな人は好きかもしれない」
「あんまり恋に落ちたって感じじゃないんだね。ま、色恋沙汰で冷静でいられるのは、相手に対して盲目にならないし、いいことでもあると思うけれども」
「友ちん、『恋』って何? 」
「勘違い、じゃない? いい意味での」
「恋、恋……、恋……。若い頃は、好みの異性だったら誰でも、胸が痛むほどキュンキュンしたんだけどなー、二次元から三次元まで」
「恋はときめきと似ているかもね。十代の頃、私はときめきすぎて、痛いと言ってもよかった」
「十代ね。……思い出したくもない」
「美里の十代って、楽しくなかったの? 」
「精神崩壊三秒手前、って感じ。感受性が強すぎて、メンタル的に何もかもが痛くて、生きられるのが不思議なくらい大変だった」
「そうなんだ。十代の青春と呼ばれる時をさ、楽しく過ごせればよかったなあと、思った時もあるけれど、三十代、四十代、もっと言ったら五十代を、幸せに過ごせる人の方が、人生に安定感があるよね。いつまでも青春にしがみつかないし」
「私達は、安定型の方だね」
「そうだね。だから川村さんって人が、美里の安定を脅かす人だったら、己の世界の破壊神みたいなものだから、美里には不向きなんじゃないかな」
「彼は……、自立して、ちゃんと収入もあって、人間的に悪い人でもない」
「そう」
「だから私が不安になる理由は、どこにもなさそうなのに―」
「不安になるんだね、美里は」
「うん。何なんだろう、うまく言えないけれど、でも彼のことをもっと知りたいと思っている。それも確か」
「うーん、悪魔のカード」
「悪魔? 」
「タロットカードの話。美里の状況は、『悪魔』のカードの意味合いに、似ている気がしたの。私にはどうなるか想像できないけれど、そのまま行ってみれば? 」
「付き合ってみろと? 」
「いや、そこを決めるのは、美里の判断だよ~。ただ、私が言いたいのは、自分の思いを優先したら? ということ。思いのまま行ってみたら、アンサーに辿り着くのではないでしょうか~? 」
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