18 / 48
16.
しおりを挟む
『こんばんは。今、何をしていますか。きっきさんの新しいブログの写真を見ました』
メッセージを書き終えると、スマホを側に置いて、しばらくパソコンをいじくっていたが、十数分経った頃、着信音が鳴り響いた。スマホを確認すると、きっきさんからのメッセージがこう書き込まれていた。
『こんばんは。僕は風呂から上がって、髪を乾かしていた所。僕の写真はどうだった? 』
私は嬉しくなって、返信した。
『良い写真でした。どの写真にも情緒があり、しんみりと伝わるものがあります』
返信はすぐ来た。
『ありがとう。僕にとってかなりの誉め言葉だね』
それからしばらく、きっきさんとのやりとりが続いた。
『私が今日アップした写真はどうですか。良ければ感想を聞かせてください』
『今、見たよ。僕のツボが押されて、少し笑ってしまった』
『きっきさんの写真はいつ撮ったのですか? 写真を撮りに行くのは、大変ではないですか? 』
『アップしたのは、かなり前に撮ったものだよ。五年くらい昔のものだと思う。写真は僕にとって趣味であり、楽しみたいものだから、心や体に無理をして、写真を撮りに行くようなことはしない』
『つまり、ブログは大変ではない……?』
『う……ん。大変ではないけれど、時々やめようかと思うことはあるな』
『それはなぜ』
『意味のないことをやっている気になることがあるんだ。虚しさというのか』
『虚しさ、ですか』
『自分の中にいつしか存在していた「穴」みたいなものを埋めるために、ブログを始めたという、一つの理由があるのだけれども、ブログのせいで、却って穴が際立ってきたような気がする』
『それは、人が沢山来るようになれば、虚しさがなくなり、満足できるようになる? 』
『どうだろう。有名なブロガーになったら、使命感は生まれてくるかもしれない。ただそれが、心の穴埋めに役立つかどうかは分からないな』
『良い写真や、面白い写真が撮れた時、自分だけで見ているのがつまらないと感じることがありますよね』
『あるね』
『だから、私も、きっきさんも、ブログにアップしているのだと思います。始まりはそんなシンプルな気持ちだったと思うのです』
『そうかもしれない』
『ブログにアップすれば、みんなとこの気持ちを共有できる! そう思って始めた。だけど結果は……、違うんですよね』
メッセージを書き終えると、スマホを側に置いて、しばらくパソコンをいじくっていたが、十数分経った頃、着信音が鳴り響いた。スマホを確認すると、きっきさんからのメッセージがこう書き込まれていた。
『こんばんは。僕は風呂から上がって、髪を乾かしていた所。僕の写真はどうだった? 』
私は嬉しくなって、返信した。
『良い写真でした。どの写真にも情緒があり、しんみりと伝わるものがあります』
返信はすぐ来た。
『ありがとう。僕にとってかなりの誉め言葉だね』
それからしばらく、きっきさんとのやりとりが続いた。
『私が今日アップした写真はどうですか。良ければ感想を聞かせてください』
『今、見たよ。僕のツボが押されて、少し笑ってしまった』
『きっきさんの写真はいつ撮ったのですか? 写真を撮りに行くのは、大変ではないですか? 』
『アップしたのは、かなり前に撮ったものだよ。五年くらい昔のものだと思う。写真は僕にとって趣味であり、楽しみたいものだから、心や体に無理をして、写真を撮りに行くようなことはしない』
『つまり、ブログは大変ではない……?』
『う……ん。大変ではないけれど、時々やめようかと思うことはあるな』
『それはなぜ』
『意味のないことをやっている気になることがあるんだ。虚しさというのか』
『虚しさ、ですか』
『自分の中にいつしか存在していた「穴」みたいなものを埋めるために、ブログを始めたという、一つの理由があるのだけれども、ブログのせいで、却って穴が際立ってきたような気がする』
『それは、人が沢山来るようになれば、虚しさがなくなり、満足できるようになる? 』
『どうだろう。有名なブロガーになったら、使命感は生まれてくるかもしれない。ただそれが、心の穴埋めに役立つかどうかは分からないな』
『良い写真や、面白い写真が撮れた時、自分だけで見ているのがつまらないと感じることがありますよね』
『あるね』
『だから、私も、きっきさんも、ブログにアップしているのだと思います。始まりはそんなシンプルな気持ちだったと思うのです』
『そうかもしれない』
『ブログにアップすれば、みんなとこの気持ちを共有できる! そう思って始めた。だけど結果は……、違うんですよね』
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
昭和少年の貧乏ゆすり
末文治
現代文学
迫り来る「2025問題」ーー超高齢化社会。いろいろと複雑な事情が絡んでくるようです。
ここまで生きてきた・・・・・・こんな感慨に耽るとき、決まって遠い昔のこと、子供のころの情景が頭に浮かんできます。
戦後の昭和時代を「少年」として歩んできた事実。あれから何十年も過ぎているのに、その時々のシーンを昨日のことのように思い出せる不思議。
これは一風変わった少年記です。
団塊世代あたりの人たちに、その懐かしさを共鳴・共感してもらいたい。
令和をいく若い人には貧しさ豊かさの、今の時代との違いを嗅ぎ取ってもらえれば、の思いです。
わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。
からした火南
現代文学
◇主体性の剥奪への渇望こそがマゾヒストの本質だとかね……そういう話だよ。
「サキのタトゥー、好き……」
「可愛いでしょ。お気に入りなんだ」
たわれるように舞う二匹のジャコウアゲハ。一目で魅了されてしまった。蝶の羽を描いている繊細なグラデーションに、いつも目を奪われる。
「ワタシもタトゥー入れたいな。サキと同じヤツ」
「やめときな。痛いよ」
そう言った後で、サキは何かに思い至って吹き出した。
「あんた、タトゥーより痛そうなの、いっぱい入れてんじゃん」
この気づかいのなさが好きだ。思わずつられて笑ってしまう。
“help”の音は、聴こえない
明星 詩乃
青春
過去の傷を抱え、心を閉ざした少年と、
真っ直ぐで どこか危うい少女。
“その時”は、突然訪れる。
決して他人事ではない、誰にでも起こり得ること。
その時、あなたは どうするのかー
“ 楽しかったり、嬉しかったり
幸せは一瞬なのに
傷付いたり、悲しかったり
苦しみは
幸せよりも、ずっと長く感じるんだね
生きるのって、こんなにも苦しい
…でも、どうか切り捨てないで
あなたの、
大切な誰かを失わない為に
どうか、気付いて
…この声を、聴いて ”
※無事完結しました!!!
最後まで読んで下さって、
ありがとうございました(´;ω;`)
イラスト:おこめ様( ˘ ³˘)♥
https://instagram.com/okome.7272?utm_medium=copy_link
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる