3 / 48
1.
しおりを挟む
「友ちん、ありがと、来てくれて」
「せっかくの休日を潰して、会いに来たんだからね。で、何の用なの? 」
「うん。ここで、バエを探そう」
「バエ、バエ……。この寂れきった街で?! 」
私と十歳年上の友人友ちんは、都会のある街に来ていた。大都会の片隅にある、人々から忘れ去られたような廃墟みたいな雰囲気の場所で、見栄えのするもの=バエを探そう、というのが、今回のお出掛けで自分に掲げたテーマだったのである。
「うん、そう」
私が軽く返すと、友ちんは胡散臭げにキョロキョロ周りを見つつ、言った。
「バエって、インスタグラムとかで、皆さんが気になさることだよね。華やかで、パーッとした雰囲気の……」
「そうだね」
「なのに、なぜにここへ来たの。あの美里がやっている妙なブログに載せるために―」
「もちろん、そのために来た」
「……それなら少し、分かる気がするかも」
錆びている看板、人の少ないメインストリート、シャッターで閉ざされたままの店、性格の悪そうなノラネコ、何もかもがイケていなくて、私はゾクゾクしてしまった。張りぼての華やかさより、こちらの方が、圧倒的に目をひく。意味は違っても、確かに『バエ』なのである。私はふと、目に留まった案内板を指さして言った。
「あそこで写真を撮ろう」
「うわ、怨念がこもっていそうね。美里、あっちに行って。看板と一緒に写真を撮ってあげるから」
「ありがとう。私はバスガイドさんを演じるからね」
「観光でこちらに来ました~。何かアイロニックね」
何枚か写真を撮ってもらうと、次に私は喫茶店を探し始めた。きっとここならば、前時代の遺物のような店に出会える。早速、何かが目に留まった。
「あ、あれ」
「なになに? 食べ物屋さん? 」
「友ちん、おなか空いていない? 」
「まあ、食べられないこともないけれど」
「あの店を見て。絶対にイケている」
「正確に言えば、『イケていない』じゃない。入るの? 」
「入ろう。入れば、すっごく面白いから」
「美里がね。分かった、付き合うよ」
「せっかくの休日を潰して、会いに来たんだからね。で、何の用なの? 」
「うん。ここで、バエを探そう」
「バエ、バエ……。この寂れきった街で?! 」
私と十歳年上の友人友ちんは、都会のある街に来ていた。大都会の片隅にある、人々から忘れ去られたような廃墟みたいな雰囲気の場所で、見栄えのするもの=バエを探そう、というのが、今回のお出掛けで自分に掲げたテーマだったのである。
「うん、そう」
私が軽く返すと、友ちんは胡散臭げにキョロキョロ周りを見つつ、言った。
「バエって、インスタグラムとかで、皆さんが気になさることだよね。華やかで、パーッとした雰囲気の……」
「そうだね」
「なのに、なぜにここへ来たの。あの美里がやっている妙なブログに載せるために―」
「もちろん、そのために来た」
「……それなら少し、分かる気がするかも」
錆びている看板、人の少ないメインストリート、シャッターで閉ざされたままの店、性格の悪そうなノラネコ、何もかもがイケていなくて、私はゾクゾクしてしまった。張りぼての華やかさより、こちらの方が、圧倒的に目をひく。意味は違っても、確かに『バエ』なのである。私はふと、目に留まった案内板を指さして言った。
「あそこで写真を撮ろう」
「うわ、怨念がこもっていそうね。美里、あっちに行って。看板と一緒に写真を撮ってあげるから」
「ありがとう。私はバスガイドさんを演じるからね」
「観光でこちらに来ました~。何かアイロニックね」
何枚か写真を撮ってもらうと、次に私は喫茶店を探し始めた。きっとここならば、前時代の遺物のような店に出会える。早速、何かが目に留まった。
「あ、あれ」
「なになに? 食べ物屋さん? 」
「友ちん、おなか空いていない? 」
「まあ、食べられないこともないけれど」
「あの店を見て。絶対にイケている」
「正確に言えば、『イケていない』じゃない。入るの? 」
「入ろう。入れば、すっごく面白いから」
「美里がね。分かった、付き合うよ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる