buroguのセカイ

桃青

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「友ちん、ありがと、来てくれて」
「せっかくの休日を潰して、会いに来たんだからね。で、何の用なの? 」
「うん。ここで、バエを探そう」
「バエ、バエ……。この寂れきった街で?! 」
 私と十歳年上の友人友ちんは、都会のある街に来ていた。大都会の片隅にある、人々から忘れ去られたような廃墟みたいな雰囲気の場所で、見栄えのするもの=バエを探そう、というのが、今回のお出掛けで自分に掲げたテーマだったのである。
「うん、そう」
 私が軽く返すと、友ちんは胡散臭げにキョロキョロ周りを見つつ、言った。
「バエって、インスタグラムとかで、皆さんが気になさることだよね。華やかで、パーッとした雰囲気の……」
「そうだね」
「なのに、なぜにここへ来たの。あの美里がやっている妙なブログに載せるために―」
「もちろん、そのために来た」
「……それなら少し、分かる気がするかも」
 錆びている看板、人の少ないメインストリート、シャッターで閉ざされたままの店、性格の悪そうなノラネコ、何もかもがイケていなくて、私はゾクゾクしてしまった。張りぼての華やかさより、こちらの方が、圧倒的に目をひく。意味は違っても、確かに『バエ』なのである。私はふと、目に留まった案内板を指さして言った。
「あそこで写真を撮ろう」
「うわ、怨念がこもっていそうね。美里、あっちに行って。看板と一緒に写真を撮ってあげるから」
「ありがとう。私はバスガイドさんを演じるからね」
「観光でこちらに来ました~。何かアイロニックね」
 何枚か写真を撮ってもらうと、次に私は喫茶店を探し始めた。きっとここならば、前時代の遺物のような店に出会える。早速、何かが目に留まった。
「あ、あれ」
「なになに? 食べ物屋さん? 」
「友ちん、おなか空いていない? 」
「まあ、食べられないこともないけれど」
「あの店を見て。絶対にイケている」
「正確に言えば、『イケていない』じゃない。入るの? 」
「入ろう。入れば、すっごく面白いから」
「美里がね。分かった、付き合うよ」
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