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集いが二時間を過ぎたころ、喫茶店の貸し切りの時間が終わりになるため、名残惜しくも解散ということになりました。女性達は金サンに声を掛けたり、ぺたぺたと触ったり、写真を撮ったりして、楽しげに帰っていくのでした。私と金サンも得体のしれない満足感にどっぷりと浸り、家路についたのです。
「金サン、どうだった? ファンクラブは」
「うん、凄かった。ネコだったら決してできない体験を、僕はした」
私と金サンはそう言い合って、ふと見つめ合い、その時金サンが、あまりに素直な目で見つめるので、私は何だか隠し事ができない気分になり、率直に今日訪れた幸せを、告げることにしました。
「金サン、ちょっと報告がある」
「ん、何?」
「私は、三条はじめさんと付き合ってみることにしたの」
「え、ほんと?」
「うん」
「ふぁ~~~~~」
金サンは訳の分からない奇声を発しましたが、おそらくネコでいう興奮状態にあったのだと思います。私は笑みを浮かべて言いました。
「金サンの望み通りね。金サンって、凄いパワーを持っているのかも」
「サエは、あの人のことを、好きになったの?」
「もちろん嫌いではないけれど、恋している感じでもない。ただ純粋にあの人のことを、もっと知りたくなったの」
「うん。良い始まりだと思う」
「金サンを飼うことを決心した時にはね、多分多少の寂しさが、私にあったと思うんだ」
「僕もそんな気がする。だからこそ僕は、サエとこんなに仲良しになれた」
「でも彼、……はじめさんと話していると、不思議ね、寂しさがどこかへ行ってしまうのよ」
「いい匂いだ」
「……は?」
「いい匂い気配がする、今の言葉」
「何を言っているの。ネコらしすぎて、よく分からないわ」
「良い風向きってこと? 占い的に言えば。サエの幸せは、僕の幸せなんだよ。僕っていい奴なの」
「そんなこと、分かっているわ。いい結果に結びつくといいわね」
「ほんと、そう願う」
それからは、他愛もない話をしながら、私達は外灯でキラキラしだした街の中を歩いていきました。外の景色とリンクして、私のハートまできらめきだしたような気がするのは、何故でしょうか。
「金サン、どうだった? ファンクラブは」
「うん、凄かった。ネコだったら決してできない体験を、僕はした」
私と金サンはそう言い合って、ふと見つめ合い、その時金サンが、あまりに素直な目で見つめるので、私は何だか隠し事ができない気分になり、率直に今日訪れた幸せを、告げることにしました。
「金サン、ちょっと報告がある」
「ん、何?」
「私は、三条はじめさんと付き合ってみることにしたの」
「え、ほんと?」
「うん」
「ふぁ~~~~~」
金サンは訳の分からない奇声を発しましたが、おそらくネコでいう興奮状態にあったのだと思います。私は笑みを浮かべて言いました。
「金サンの望み通りね。金サンって、凄いパワーを持っているのかも」
「サエは、あの人のことを、好きになったの?」
「もちろん嫌いではないけれど、恋している感じでもない。ただ純粋にあの人のことを、もっと知りたくなったの」
「うん。良い始まりだと思う」
「金サンを飼うことを決心した時にはね、多分多少の寂しさが、私にあったと思うんだ」
「僕もそんな気がする。だからこそ僕は、サエとこんなに仲良しになれた」
「でも彼、……はじめさんと話していると、不思議ね、寂しさがどこかへ行ってしまうのよ」
「いい匂いだ」
「……は?」
「いい匂い気配がする、今の言葉」
「何を言っているの。ネコらしすぎて、よく分からないわ」
「良い風向きってこと? 占い的に言えば。サエの幸せは、僕の幸せなんだよ。僕っていい奴なの」
「そんなこと、分かっているわ。いい結果に結びつくといいわね」
「ほんと、そう願う」
それからは、他愛もない話をしながら、私達は外灯でキラキラしだした街の中を歩いていきました。外の景色とリンクして、私のハートまできらめきだしたような気がするのは、何故でしょうか。
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