金サン!

桃青

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金サンとは?

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 金サンは、家の飼い猫です。ある雨の日にやってきた、灰色の毛と輝く金の瞳を持つ、美しい雄ネコです。
 金サンと私はいつも一緒。家にいるときはもちろん、仕事場にだって連れていきます。私の仕事は占い師。いつか占いの本を出すのが夢ですが、まあ、その話は置いておきましょう。
 やや寂れたショッピングセンターの片隅にある、私の仕事場へ金サンを連れていくようになってから、金サンはすぐアイドル的存在になりました。他のお店の方達にはもちろん、何よりも占いにやってくるお客様に、好評でした。今では金サンは、私の仕事になくてはならない相棒となっています。
 私は自分の将来、この国の将来や世界の未来に、漠然とした不安を持っています。今の時代を生きる人なら、誰しもそうなのかも。でも占い師なんて仕事を、本気で一生続けていくのか。正直それほど儲かるわけではないし、人生の先が見えません。
 人生とは何なのか。
 己の人生をどうしたいのか。
 いくら占っても、そのことに対する答えは出ない。何故ならそれは、自分の頭で考えて、見つけ出したり、決めたりしなければならないものだから。

 今の毎日に不満はないけれど、何かが足りない。
 何が足りないのか。
 どうすれば自分が満たされるのか。
 
 惑う私の心の隙間を、いつもそっと埋めてくれるのが、金サンの存在です。この灰色の毛の手触り、私を見つめる真っ直ぐな瞳……。ニャーと鳴いただけで、思わず人を笑顔にさせてしまう偉大な力。
 ネコに頼って、辛うじて生活を成立させている自分。これでいいのだろうか。金サンはどう思っているのでしょうね? 知りたい気もしますが……。
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