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前奏曲2
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「そういうことなら、私とホストクラブへ行く? 初回だけならお金を払ってあげてもいいわよ、庶民のために」
「ええと、私は多分―。運命の人を待っているんです。でもなあ。花屋で働いている限り、運命的出会いなんてない、」
「お客様がいるじゃない」
「ナンパよ。私もよくホストを口説くの」
「ああもう、二人とも。お客さんと恋に落ちるなんて無理です。有り得ぬシナリオですよ。それよりももっとこう……、キレイになって、いい女に……」
「いい女に、ねえ」
「努力していい女にならなくても、案外何でもお金で解決できるものよ、庶民には無理な話でしょうけど」
「オキヨさん、マリアさん。それと私。なんか私達三人って、何かをこじらせていませんか? 」
「何が? ね、マリア」
「ええ。どこが? 」
「ま、別にいいです。幸せだったら、何も問題はないです」
「幸せ、幸せ、幸せ、体重百三十キロの幸いとは」
「私は九十キロになったわ、少し太ったわね」
「マリアさん、この間は八十五キロって言っていたのに……。私はダイエットを頑張って、六十五キロ」
「……。ね、私達って、やっぱり痩せないとダメかしら」
オキヨのあまりに核心をついた発言に、三人ともむっつり黙り込んだ。
保健センターの講習会は、無論健康のために開かれたものだったが、この三人は見事にその道からズレていた。心と体の健康以上に素晴らしいことは、この世でそうないはずだが、女性の美に対する憧憬は、時として健康すら超えていく。
可愛くなりたい。美しくなって、モテたい。
三人に共通して存在する、根本にある願望だ。それと現実とのギャップに三人三様でもがいていた。可愛かったら、特大の幸福がやってくる。女の子が陥る間違った妄想だ。しかし。
だから女の子は楽しいのだ。世間からフリルとリボンとレースで埋まることに対して、白い目で見られようとも。
女の子はやめられない。というか、やめる必要はあるだろうか。
「ええと、私は多分―。運命の人を待っているんです。でもなあ。花屋で働いている限り、運命的出会いなんてない、」
「お客様がいるじゃない」
「ナンパよ。私もよくホストを口説くの」
「ああもう、二人とも。お客さんと恋に落ちるなんて無理です。有り得ぬシナリオですよ。それよりももっとこう……、キレイになって、いい女に……」
「いい女に、ねえ」
「努力していい女にならなくても、案外何でもお金で解決できるものよ、庶民には無理な話でしょうけど」
「オキヨさん、マリアさん。それと私。なんか私達三人って、何かをこじらせていませんか? 」
「何が? ね、マリア」
「ええ。どこが? 」
「ま、別にいいです。幸せだったら、何も問題はないです」
「幸せ、幸せ、幸せ、体重百三十キロの幸いとは」
「私は九十キロになったわ、少し太ったわね」
「マリアさん、この間は八十五キロって言っていたのに……。私はダイエットを頑張って、六十五キロ」
「……。ね、私達って、やっぱり痩せないとダメかしら」
オキヨのあまりに核心をついた発言に、三人ともむっつり黙り込んだ。
保健センターの講習会は、無論健康のために開かれたものだったが、この三人は見事にその道からズレていた。心と体の健康以上に素晴らしいことは、この世でそうないはずだが、女性の美に対する憧憬は、時として健康すら超えていく。
可愛くなりたい。美しくなって、モテたい。
三人に共通して存在する、根本にある願望だ。それと現実とのギャップに三人三様でもがいていた。可愛かったら、特大の幸福がやってくる。女の子が陥る間違った妄想だ。しかし。
だから女の子は楽しいのだ。世間からフリルとリボンとレースで埋まることに対して、白い目で見られようとも。
女の子はやめられない。というか、やめる必要はあるだろうか。
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