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迷宮
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「なら、話します。僕は……、語るのが少し恥ずかしいですが、今恋愛をしている相手が出てきました。彼女と話したり、彼女と手を繋いだり、彼女と美しい場所へ行ったり。日常的なことですが、そこに言いようのない幸福感があった。草の効果が切れて現実に戻ったとき、僕はこう思いましたね。
僕は本当に、……彼女と結ばれるべきではないだろうか、そういう定めなのかもしれないって」
「いいのう。未来の話は、わしには縁のない話じゃ」
ご老人がふくふくした顔でそう言うと、ボウが言葉を返します。
「ホーリー、悲しいことを言わんでください。とにかく皆、形はそれぞれだが、未来へと繋がり、導かれることを思い出しているんですね。何かしらを悟りながら」
「確かに」
「そうね」
「そうみたいですね~」
私はふと思いついたことを口にしました。
「未来の話を、すればいいのではありませんか? 」
賢者たちは皆、話すのをやめて私を見つめました。私はさらに言いました。
「未来へと続く道を見失って、時が止まった。つまり、そういう理由で時間のラビリンスに入り込んだのではないでしょうか。あの草は未来に繋がる思考へ至るきっかけを、ここにいる人々全員に与えてくれています。ならば我々がそのことについて話し合い、確かに未来を見出せれば―」
シュリが少しの間考え込んだ顔をしてから、私に言いました。
「今、私たちがやったように、草が掘り起こした記憶について、話し合うのね? 」
「そう。それが色々な意味で、途切れた繫がりを再び結びつける気がする」
皆は、ふーんとか、ふむとか、唸りつつ考えこんでいると、巨大な男性が再び、
「あ、」
と声を発しました。馬頭のサライは面倒くさそうに言いました。
「何だ、ジェイ」
「十一時五分です。五分だけ時間が……、進んでいるんです」
全員が呆気にとられた顔をして、再び時計に目をやると、本当に、今の時刻は十一時ではなく、十一時五分になっていました。ホーリーは数十秒の空白の後、目を丸くして言いました。
「こりゃ、驚いた」
シュンが真剣な顔で、皆に問いました。
「これは……。トイさんの言う通りなのでしょうか」
「でもね、トイさんの提案は、やること自体に何のリスクもないじゃない。ならば、やってみたらいいんじゃないかしら」
そこにパキッとおばあさんが、口を挟みました。
「しかしここにいる大勢の者たちに、『話せ』と言ってもね。話したがらない人も、それなりにいるかもしれませんよ」
するとシュリは少し面白そうな顔をして、こう言いました。
「パーティを開きましょうか」
「は?」
「ぱーてー?」
「シュリ、今はそんな時では……」
「何のパーティですか? 」
「何で? 」
皆の口答えを受け止めて、シュリは微笑みを浮かべて言いました。
僕は本当に、……彼女と結ばれるべきではないだろうか、そういう定めなのかもしれないって」
「いいのう。未来の話は、わしには縁のない話じゃ」
ご老人がふくふくした顔でそう言うと、ボウが言葉を返します。
「ホーリー、悲しいことを言わんでください。とにかく皆、形はそれぞれだが、未来へと繋がり、導かれることを思い出しているんですね。何かしらを悟りながら」
「確かに」
「そうね」
「そうみたいですね~」
私はふと思いついたことを口にしました。
「未来の話を、すればいいのではありませんか? 」
賢者たちは皆、話すのをやめて私を見つめました。私はさらに言いました。
「未来へと続く道を見失って、時が止まった。つまり、そういう理由で時間のラビリンスに入り込んだのではないでしょうか。あの草は未来に繋がる思考へ至るきっかけを、ここにいる人々全員に与えてくれています。ならば我々がそのことについて話し合い、確かに未来を見出せれば―」
シュリが少しの間考え込んだ顔をしてから、私に言いました。
「今、私たちがやったように、草が掘り起こした記憶について、話し合うのね? 」
「そう。それが色々な意味で、途切れた繫がりを再び結びつける気がする」
皆は、ふーんとか、ふむとか、唸りつつ考えこんでいると、巨大な男性が再び、
「あ、」
と声を発しました。馬頭のサライは面倒くさそうに言いました。
「何だ、ジェイ」
「十一時五分です。五分だけ時間が……、進んでいるんです」
全員が呆気にとられた顔をして、再び時計に目をやると、本当に、今の時刻は十一時ではなく、十一時五分になっていました。ホーリーは数十秒の空白の後、目を丸くして言いました。
「こりゃ、驚いた」
シュンが真剣な顔で、皆に問いました。
「これは……。トイさんの言う通りなのでしょうか」
「でもね、トイさんの提案は、やること自体に何のリスクもないじゃない。ならば、やってみたらいいんじゃないかしら」
そこにパキッとおばあさんが、口を挟みました。
「しかしここにいる大勢の者たちに、『話せ』と言ってもね。話したがらない人も、それなりにいるかもしれませんよ」
するとシュリは少し面白そうな顔をして、こう言いました。
「パーティを開きましょうか」
「は?」
「ぱーてー?」
「シュリ、今はそんな時では……」
「何のパーティですか? 」
「何で? 」
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