10 / 57
謎との出会い
しおりを挟む
外では濃い霧が漂い、緑があちらこちらに霞んで見えて、それは神秘的な光景が広がっているのでした。土の匂いを感じながら、森の中へ足を踏み入れ、薬草を見つけると摘み取り、腰に付けたいくつもの袋に、分類しながら入れていきます。
「確かにリンゴ草がはびこっている。時計花もよく見るな。リンゴ草は砂糖漬けにするとおいしいんだよね」
「トイ! 」
「シシ、何」
「妖精! ふわふわ! 」
「ああ、ほんと」
霧に紛れて、森の中では白いぼんやりとした光を放つ妖精たちが、飛び回っていました。彼、もしくは彼女たちは、姿を見られることをあまり好まないので、霧が出ている時に、活発に活動するのです。透けるような白さの羽をばたつかせ、囁くような笑い声をまき散らし、それは楽しそうにしていました。彼らにつられることなく、私は草の観察に集中しました。
「ここに根の木がある。樹液を頂きたいから、器具をセットしておいて、数日後、またここに来よう」
そう言って、バックパックから器具を取り出し、木の幹にセットしてから、目立つ枝にピンクのリボンを結び付けて目印にすると、私は森のさらに奥の方へ、ずんずん進んでいきます。
「トイ」
「何、シシ」
「野原。広~い、広い」
「うん、そうだね。私はよくここで、草を探しているんだよ。あれ? 何かいるね」
「緑、緑」
霧が相変わらず立ち込める中、緑色の大きな生き物が、野原にうずくまっているのが見えます。
「声を掛けてみようか」
シシにそう言うと、ちょっと勇気を出して、私はその生物に近づいていきました。近づけば近づくほど、その生き物が放つ異様な存在感に圧倒されます。人間でもなく、植物でもなく、妖精のようなマジカルな存在でもなく……。
「カベーーー」
突然、それはとてつもない大声を放ちました。
「カベー、カベー、カベー」
私は驚きながらも、側に行って声を掛けました。
「こんにちは。どうかされました」
「カベー。ぼくのなまえ」
「ああ、あなたのお名前が、もしかするとカベー……」
「だれ? 」
「あ、私はトイと言います。こちらは、ネズミのシシ」
「トイとシシ。トイとシシ」
「確かにリンゴ草がはびこっている。時計花もよく見るな。リンゴ草は砂糖漬けにするとおいしいんだよね」
「トイ! 」
「シシ、何」
「妖精! ふわふわ! 」
「ああ、ほんと」
霧に紛れて、森の中では白いぼんやりとした光を放つ妖精たちが、飛び回っていました。彼、もしくは彼女たちは、姿を見られることをあまり好まないので、霧が出ている時に、活発に活動するのです。透けるような白さの羽をばたつかせ、囁くような笑い声をまき散らし、それは楽しそうにしていました。彼らにつられることなく、私は草の観察に集中しました。
「ここに根の木がある。樹液を頂きたいから、器具をセットしておいて、数日後、またここに来よう」
そう言って、バックパックから器具を取り出し、木の幹にセットしてから、目立つ枝にピンクのリボンを結び付けて目印にすると、私は森のさらに奥の方へ、ずんずん進んでいきます。
「トイ」
「何、シシ」
「野原。広~い、広い」
「うん、そうだね。私はよくここで、草を探しているんだよ。あれ? 何かいるね」
「緑、緑」
霧が相変わらず立ち込める中、緑色の大きな生き物が、野原にうずくまっているのが見えます。
「声を掛けてみようか」
シシにそう言うと、ちょっと勇気を出して、私はその生物に近づいていきました。近づけば近づくほど、その生き物が放つ異様な存在感に圧倒されます。人間でもなく、植物でもなく、妖精のようなマジカルな存在でもなく……。
「カベーーー」
突然、それはとてつもない大声を放ちました。
「カベー、カベー、カベー」
私は驚きながらも、側に行って声を掛けました。
「こんにちは。どうかされました」
「カベー。ぼくのなまえ」
「ああ、あなたのお名前が、もしかするとカベー……」
「だれ? 」
「あ、私はトイと言います。こちらは、ネズミのシシ」
「トイとシシ。トイとシシ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる