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だが彼と出会えたことで、降って湧いた混乱は一時的であれ収束をみせた。再び家路についた私は、必死に自分に言い聞かせながら歩いた。
(私の何かが壊れ始めているんだ)
(自分で自分を救わないといけないんだ)
(aoという天使だか何だか、素性の知れない男性が私を導いてくれるんだ)
(だから大丈夫)
(私は心配しなくても大丈夫)
いつもは見慣れているはずの街並みや人が、訳もなく遠くに感じる。自分が、自分の存在が、異質な感じがした。いやそれとも、私が正当で、世の中の方が異端なのか? 深く考えようとすると、何かがうまくいかなくなりそうで、とりあえず家に帰ることだけに集中しようと思った。手狭な自宅に着くと、やるべきことだけを考え、着替えを済ませ、ご飯を食べ、シャワーを浴びて、歯を磨く。儀式のように全てを終え、深呼吸した私は布団の上に座り、チラリと枕を眺めて、ぼそぼそと喋った。
「寝れば、あの人に会えるんだよね」
「そんなこと、あるのかしら?」
「現実的に考えるとどうなの」
「でも今、私がやるべきことはただ一つだ」
「寝よう」
「とにかく寝てみよう」
心を固めた私は布団に潜りこみ、固く目を閉じたのだった。
(私の何かが壊れ始めているんだ)
(自分で自分を救わないといけないんだ)
(aoという天使だか何だか、素性の知れない男性が私を導いてくれるんだ)
(だから大丈夫)
(私は心配しなくても大丈夫)
いつもは見慣れているはずの街並みや人が、訳もなく遠くに感じる。自分が、自分の存在が、異質な感じがした。いやそれとも、私が正当で、世の中の方が異端なのか? 深く考えようとすると、何かがうまくいかなくなりそうで、とりあえず家に帰ることだけに集中しようと思った。手狭な自宅に着くと、やるべきことだけを考え、着替えを済ませ、ご飯を食べ、シャワーを浴びて、歯を磨く。儀式のように全てを終え、深呼吸した私は布団の上に座り、チラリと枕を眺めて、ぼそぼそと喋った。
「寝れば、あの人に会えるんだよね」
「そんなこと、あるのかしら?」
「現実的に考えるとどうなの」
「でも今、私がやるべきことはただ一つだ」
「寝よう」
「とにかく寝てみよう」
心を固めた私は布団に潜りこみ、固く目を閉じたのだった。
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