206 / 207
修道女、邂逅する
1
しおりを挟む
翌朝。
やはり乾いていないワンピースを着て、それでも前日よりは決意も新たに身支度をした。
外はまだ雨だが、昨夜よりは小ぶりで、穏やかな雨音だ。
汚れたガラス越しに見える森は、ぼんやりと歪んで見えた。朝にもかかわらずどんよりと雲が重く、また一日中雨なのだろうと予想がつく。
国土の多くが砂漠地帯で、乾きで死ぬ者も多い地方で生まれ育ったメイラにとっては、日をまたいでもまだ続く長雨など初めての経験だった。
この半分でも雨が降れば、多くの人々が救われるのに。水オーブの利権や不正に頭を悩ませることもなく、ひろく皆が幸せになれるのに。
故郷の村を思いながら、くすんだ窓ガラスに伝う幾筋もの雨粒を見つめる。
神のつくりたもうた自然の摂理だ、メイラごときにどうこうすることはできない。きっとないもの強請りで、雨が多い地方には多いなりの苦労があるのだろう。
そっと窓に手を触れて、ぷっくりとした雨粒を内側からなでようとして。
ふと、気づいた。
「……そう」
すとんと納得した。今日なのだ……と。
理由があるわけではないが、今日というこの日が運命なのだと悟った。
もしかすると、明日の朝はないのかもしれない。
こんなふうに窓の外を見て、こんなふうに雨をうらやみ、背後にストーブの温もりを感じながら朝を感じることは、もう二度とないのかもしれない。
「御方さま?」
ほんのりと笑ったメイラを見て、ルシエラが訝し気に声を掛けてくる。
「どうかなさいましたか?」
「いいえ。用意が済んだなら部屋を出ましょう。顔を洗う水が欲しいわね」
「はい」
何年もこの家に置き去りにされていた布を身体に巻き付けながら、ルシエラを振り返る。
メイラ同様、すっかり形の崩れたワンピースドレスを着ているが、それでもなお彼女の美しさは輝かんばかりで、櫛を通さずともつやつやとした銀髪が眩い。
「……ところで、そんなものいつ運んできたの」
「昨夜遅くに。整理箪笥だけでは不安だったもので」
そんな彼女が、四肢を踏ん張り、ずりずりと重い音を立てて動かすのは大きな石臼だ。
ほっそりと嫋やかで、強く握れば折れそうな手首をしているにもかかわらず、メイラでは絶対に動かせない重量のものを平気な顔で引っ張っている。
「手伝うわ。重いでしょう」
「お気遣いなく」
重いという事は否定しなかったが、ルシエラには問題ないらしい。
手を貸そうと近づく前にあっさりドアの前から退けてしまって、更にその向こうにある衣装棚も両手で持ち上げて運ぶ。軽々と。
「……相変わらず力持ちね」
「鍛えておりますので」
「前々から一度聞きたいと思っていたのだけれど、ルシエラは騎士なの?」
初めて会ったとき、彼女は憲兵士官の服装をしていた。見たのは一度だけで、あとは大抵女官服、あるいはドレス姿だけだが、最も似合っていてしっくりきていたように思う。
「正式に叙勲されているわけではございませんが、資格は持っております。学院の騎士科を専攻しましたので」
学院というのは、平民あるいは下級貴族の優れた若者が通うところだ。適正と希望があればさらに上の大学に行くことも可能で、その身分によらず極めれば文官あるいは騎士としてかなりの所まで上り詰めることが出来る。
「優秀なのね」
「そうあるよう常に精進しています」
彼女が極めて有能だというのは紛れもない事実だから、これ以上はもう精進しなくともいいのではないか。……ついそう言いたくなって、苦笑した。
一介の平民がどれだけ努力を重ねようと、受験レベルに達することは難しく、帝都にある学院に通う者が出るなど、メイラの故郷では十年に一度あるかないかの事なのだ。
ルシエラが平民だとは思えないが、下級貴族であるにしても、学院に通えるだけでも優秀なのだとわかる。
「よければ今度、学院のことを聞かせて」
「はい。いつでも」
ルシエラはドアを塞いでいたものをすべて動かし、軽く両手をはたきながら首を上下させた。
メイラはすっきりとした立ち姿の彼女を、眩しいものを見るように眼を細めて見つめた。
彼女が騎士科の制服を着て、大柄な青年たちに混じって剣を学ぶ様子を想像する。
当時の彼女の様子などまったく知らぬメイラであったが、掃き溜めに鶴状態だったのだろうと容易に想像がついた。思わず吹き出しそうになった口元を手で押さえる。
「……何か?」
「いいえ。きっとあなたは昔も変わらないのだろうと思って」
「そうでしょうか。自身のことはよくわかりませんが」
メイラは「ふふふ」と声に出して笑い、手早くストーブの火を落とすルシエラの背中をじっと見つめた。
今よりも年若い少女時代の彼女もきっと、今と変わらず有能で、凛としていて、誰彼かまわず周囲を振り回していたに違いない。
想像しただけで笑ってしまう自分自身に、ああまだ笑えていると安堵する。
もう二度と、こんなふうにたわいのない会話を交わすことはないのかもしれない。
そう考えると物悲しい気持ちになるが、最後までともにいてくれるのが彼女でよかったと、心から思う。
ストーブの火を落とすと、すぐに室温が下がってきた。
放置されて長い布は色褪せ、みすぼらしいが、体温を保つ役には立つ。茶色いその布を身体にまきつけ、ルシエラを促すと、彼女もまた擦り切れた布を羽織りドアに手をかけた。
大きな家ではないので、個室のドアをあけるとそこはすぐにリビングになっている。家具が残っているわけではないが、動物の皮でできた古い敷物があって、黒墨色の肌の海賊がその上に直接座って寛いでいた。
「おはよう、お嬢さん方」
挨拶は耳を素通りした。
何故なら、暖炉の前にひと際巨漢の男がうつ伏せに伸びていて、しかも血まみれだったからだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつも読んで下さってありがとうございます。
この一週間ほど体調が優れず、倦怠感と食欲不振、頭痛に眩暈、身動きした際の肋骨当たりの神経痛と、ちょっと心配になる症状になやまされてきました。
風邪の初期症状のように思えますが、時期が時期だけに、病院にいくべきか不安になっています。
巷でよく言われているような症状にはあてはまりませんし、熱もほとんどありませんが、子どももおりますし、万が一……と考えてしまって。
連休中にうつしてはいけないからとPCから離れ、部屋に籠っておりました。
体重計に乗ると、たった一週間で五キロも減っていました。これまでどんなダイエットをしても三キロ以上減ったことがないのに!!
部屋から必要以上に出ず、台所に行かないようにしていただけで効果覿面です。
体調不良だという理由だけでは説明できない体重の減り具合に、やはり普段から食べ過ぎていたんだろうと納得できました。
更新が遅れまして申し訳ございません。
明日から子供たちも学校に行きますので、また執筆活動ができるようになります。
ご心配をお掛けしております。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
やはり乾いていないワンピースを着て、それでも前日よりは決意も新たに身支度をした。
外はまだ雨だが、昨夜よりは小ぶりで、穏やかな雨音だ。
汚れたガラス越しに見える森は、ぼんやりと歪んで見えた。朝にもかかわらずどんよりと雲が重く、また一日中雨なのだろうと予想がつく。
国土の多くが砂漠地帯で、乾きで死ぬ者も多い地方で生まれ育ったメイラにとっては、日をまたいでもまだ続く長雨など初めての経験だった。
この半分でも雨が降れば、多くの人々が救われるのに。水オーブの利権や不正に頭を悩ませることもなく、ひろく皆が幸せになれるのに。
故郷の村を思いながら、くすんだ窓ガラスに伝う幾筋もの雨粒を見つめる。
神のつくりたもうた自然の摂理だ、メイラごときにどうこうすることはできない。きっとないもの強請りで、雨が多い地方には多いなりの苦労があるのだろう。
そっと窓に手を触れて、ぷっくりとした雨粒を内側からなでようとして。
ふと、気づいた。
「……そう」
すとんと納得した。今日なのだ……と。
理由があるわけではないが、今日というこの日が運命なのだと悟った。
もしかすると、明日の朝はないのかもしれない。
こんなふうに窓の外を見て、こんなふうに雨をうらやみ、背後にストーブの温もりを感じながら朝を感じることは、もう二度とないのかもしれない。
「御方さま?」
ほんのりと笑ったメイラを見て、ルシエラが訝し気に声を掛けてくる。
「どうかなさいましたか?」
「いいえ。用意が済んだなら部屋を出ましょう。顔を洗う水が欲しいわね」
「はい」
何年もこの家に置き去りにされていた布を身体に巻き付けながら、ルシエラを振り返る。
メイラ同様、すっかり形の崩れたワンピースドレスを着ているが、それでもなお彼女の美しさは輝かんばかりで、櫛を通さずともつやつやとした銀髪が眩い。
「……ところで、そんなものいつ運んできたの」
「昨夜遅くに。整理箪笥だけでは不安だったもので」
そんな彼女が、四肢を踏ん張り、ずりずりと重い音を立てて動かすのは大きな石臼だ。
ほっそりと嫋やかで、強く握れば折れそうな手首をしているにもかかわらず、メイラでは絶対に動かせない重量のものを平気な顔で引っ張っている。
「手伝うわ。重いでしょう」
「お気遣いなく」
重いという事は否定しなかったが、ルシエラには問題ないらしい。
手を貸そうと近づく前にあっさりドアの前から退けてしまって、更にその向こうにある衣装棚も両手で持ち上げて運ぶ。軽々と。
「……相変わらず力持ちね」
「鍛えておりますので」
「前々から一度聞きたいと思っていたのだけれど、ルシエラは騎士なの?」
初めて会ったとき、彼女は憲兵士官の服装をしていた。見たのは一度だけで、あとは大抵女官服、あるいはドレス姿だけだが、最も似合っていてしっくりきていたように思う。
「正式に叙勲されているわけではございませんが、資格は持っております。学院の騎士科を専攻しましたので」
学院というのは、平民あるいは下級貴族の優れた若者が通うところだ。適正と希望があればさらに上の大学に行くことも可能で、その身分によらず極めれば文官あるいは騎士としてかなりの所まで上り詰めることが出来る。
「優秀なのね」
「そうあるよう常に精進しています」
彼女が極めて有能だというのは紛れもない事実だから、これ以上はもう精進しなくともいいのではないか。……ついそう言いたくなって、苦笑した。
一介の平民がどれだけ努力を重ねようと、受験レベルに達することは難しく、帝都にある学院に通う者が出るなど、メイラの故郷では十年に一度あるかないかの事なのだ。
ルシエラが平民だとは思えないが、下級貴族であるにしても、学院に通えるだけでも優秀なのだとわかる。
「よければ今度、学院のことを聞かせて」
「はい。いつでも」
ルシエラはドアを塞いでいたものをすべて動かし、軽く両手をはたきながら首を上下させた。
メイラはすっきりとした立ち姿の彼女を、眩しいものを見るように眼を細めて見つめた。
彼女が騎士科の制服を着て、大柄な青年たちに混じって剣を学ぶ様子を想像する。
当時の彼女の様子などまったく知らぬメイラであったが、掃き溜めに鶴状態だったのだろうと容易に想像がついた。思わず吹き出しそうになった口元を手で押さえる。
「……何か?」
「いいえ。きっとあなたは昔も変わらないのだろうと思って」
「そうでしょうか。自身のことはよくわかりませんが」
メイラは「ふふふ」と声に出して笑い、手早くストーブの火を落とすルシエラの背中をじっと見つめた。
今よりも年若い少女時代の彼女もきっと、今と変わらず有能で、凛としていて、誰彼かまわず周囲を振り回していたに違いない。
想像しただけで笑ってしまう自分自身に、ああまだ笑えていると安堵する。
もう二度と、こんなふうにたわいのない会話を交わすことはないのかもしれない。
そう考えると物悲しい気持ちになるが、最後までともにいてくれるのが彼女でよかったと、心から思う。
ストーブの火を落とすと、すぐに室温が下がってきた。
放置されて長い布は色褪せ、みすぼらしいが、体温を保つ役には立つ。茶色いその布を身体にまきつけ、ルシエラを促すと、彼女もまた擦り切れた布を羽織りドアに手をかけた。
大きな家ではないので、個室のドアをあけるとそこはすぐにリビングになっている。家具が残っているわけではないが、動物の皮でできた古い敷物があって、黒墨色の肌の海賊がその上に直接座って寛いでいた。
「おはよう、お嬢さん方」
挨拶は耳を素通りした。
何故なら、暖炉の前にひと際巨漢の男がうつ伏せに伸びていて、しかも血まみれだったからだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつも読んで下さってありがとうございます。
この一週間ほど体調が優れず、倦怠感と食欲不振、頭痛に眩暈、身動きした際の肋骨当たりの神経痛と、ちょっと心配になる症状になやまされてきました。
風邪の初期症状のように思えますが、時期が時期だけに、病院にいくべきか不安になっています。
巷でよく言われているような症状にはあてはまりませんし、熱もほとんどありませんが、子どももおりますし、万が一……と考えてしまって。
連休中にうつしてはいけないからとPCから離れ、部屋に籠っておりました。
体重計に乗ると、たった一週間で五キロも減っていました。これまでどんなダイエットをしても三キロ以上減ったことがないのに!!
部屋から必要以上に出ず、台所に行かないようにしていただけで効果覿面です。
体調不良だという理由だけでは説明できない体重の減り具合に、やはり普段から食べ過ぎていたんだろうと納得できました。
更新が遅れまして申し訳ございません。
明日から子供たちも学校に行きますので、また執筆活動ができるようになります。
ご心配をお掛けしております。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
0
お気に入りに追加
656
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる