4 / 39
1-4
しおりを挟む
またしても私は仕事が出来なかった。
仕事をしようと思うと必ず鬼ごっこが始まり、
長い鬼ごっこが終わるころには、仕事の時間も終わっている。
たまに早く切り上げて仕事に戻ろうとすると、優秀な皆さんがすべて終わらせてしまっているのである。
皆さん、どれだけ優秀なんですか……。
そして段々と疑いが出始めた。
もしかして私に仕事をさせないようにしている……なんて、ううん、そんなことはないわよね!
もはや通常運転となっている、そんな毎日が続く日々。
今日も私は警戒心を最大級にあげ、相手を睨みつけている。
「本当に懲りないよね、ミアも。いつになったらわかってくれるのかな?」
「わかっていないのは魔術師長のほうです! い、いいですか!! 十分!! 十分間逃げきれたら、私の勝ちです!! もし、私が勝つことが出来たら、絶対に言うことを聞いてくださいね!」
私は生涯、宮廷魔術師としてここで勤めていくために、真面目にちゃんと仕事がしたいんです!!
なのでいいかげんに私に仕事をください!!
「準備はいいですか?」
「いつでもどうぞ?」
……その、余裕しゃくしゃくな態度が憎らしい……。
「いいい、いきますよ!……よーい、スタート!!」
私は生暖かい目を向けてくる同僚達に目もくれず、一目散に全速力で廊下を走り抜ける。
振り返らずに、どこまでも、どこまでも走り続けた。
「何度やっても結果は変わらないのにな。ほんと、かわいいな僕のミアは。一生この僕から逃げられるわけないのに。さあ、今日はどんなご褒美をかなえてもらおうかな。そうだ、今日はこの書類にサインをしてもらおうかな」
ローブの下から取り出した婚姻承諾書を持って、どうやって獲物を捕まえようかな、と悪い笑みを浮かべながら、詠唱もなくスッ、とその場から消えた。
その一連を、空気になりきってずっと見ていた周りの部下たちは、音もなく消えた上司の腹黒い笑みを見なかったことにして、今日も哀れな同僚の分の仕事を、無言でせっせと片づけることにした。
ミアさんに決して仕事を回してはいけない。
師団長と心置きなく鬼ごっこが出来るように、ミアさんの分の仕事を最優先に片づけることが、皆に与えられた仕事なのである。
誰も何も言わなくても、それぞれの役割分担もいつも完璧である。
今日も謎のチームワークを発揮して、各々取り掛かった。
部下たちの思うことはただ一つである。
『毎日無駄な鬼ごっこなんかやめて、早くその書類にサインしてくれないかな……』
仕事をしようと思うと必ず鬼ごっこが始まり、
長い鬼ごっこが終わるころには、仕事の時間も終わっている。
たまに早く切り上げて仕事に戻ろうとすると、優秀な皆さんがすべて終わらせてしまっているのである。
皆さん、どれだけ優秀なんですか……。
そして段々と疑いが出始めた。
もしかして私に仕事をさせないようにしている……なんて、ううん、そんなことはないわよね!
もはや通常運転となっている、そんな毎日が続く日々。
今日も私は警戒心を最大級にあげ、相手を睨みつけている。
「本当に懲りないよね、ミアも。いつになったらわかってくれるのかな?」
「わかっていないのは魔術師長のほうです! い、いいですか!! 十分!! 十分間逃げきれたら、私の勝ちです!! もし、私が勝つことが出来たら、絶対に言うことを聞いてくださいね!」
私は生涯、宮廷魔術師としてここで勤めていくために、真面目にちゃんと仕事がしたいんです!!
なのでいいかげんに私に仕事をください!!
「準備はいいですか?」
「いつでもどうぞ?」
……その、余裕しゃくしゃくな態度が憎らしい……。
「いいい、いきますよ!……よーい、スタート!!」
私は生暖かい目を向けてくる同僚達に目もくれず、一目散に全速力で廊下を走り抜ける。
振り返らずに、どこまでも、どこまでも走り続けた。
「何度やっても結果は変わらないのにな。ほんと、かわいいな僕のミアは。一生この僕から逃げられるわけないのに。さあ、今日はどんなご褒美をかなえてもらおうかな。そうだ、今日はこの書類にサインをしてもらおうかな」
ローブの下から取り出した婚姻承諾書を持って、どうやって獲物を捕まえようかな、と悪い笑みを浮かべながら、詠唱もなくスッ、とその場から消えた。
その一連を、空気になりきってずっと見ていた周りの部下たちは、音もなく消えた上司の腹黒い笑みを見なかったことにして、今日も哀れな同僚の分の仕事を、無言でせっせと片づけることにした。
ミアさんに決して仕事を回してはいけない。
師団長と心置きなく鬼ごっこが出来るように、ミアさんの分の仕事を最優先に片づけることが、皆に与えられた仕事なのである。
誰も何も言わなくても、それぞれの役割分担もいつも完璧である。
今日も謎のチームワークを発揮して、各々取り掛かった。
部下たちの思うことはただ一つである。
『毎日無駄な鬼ごっこなんかやめて、早くその書類にサインしてくれないかな……』
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜
長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。
幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。
そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。
けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?!
元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。
他サイトにも投稿しています。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる