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③ 「健さん」
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③ 「健さん」
おじさんは、希の肩に手をあて、少し下に力を入れ、再びベンチに座らせた。
「お姉ちゃんは、本田さんっていうねんな。おいちゃんは、備里健。「そなえざと」は「備品の備」に「里帰りの里」。珍しい名字やろ。日本で10人もおれへんねんで。名前の「けん」は俳優の「高倉健さんの健」や。 まあ、高倉健さんには似ても似つけへんけどな。本田さんみたいに若い子には「高倉健」さんが分からへんかな?カラカラカラ。」
と楽しそうに笑った。
希は無意識に自分のお尻をベンチの左端に寄せ、健が座れるスペースを空け、右手を「どうぞ」と差し出した。
「あぁ、えらいすんませんな。じゃあ、おいちゃんも座らせてもらうわな。「よっこいしょうきち」っと。」
と希の父が使うような昭和ギャグとともに、大きなお腹を抱えて健は希の右側に腰を下ろした。
健は、大きな黒いリュックサックを下ろし、両足の前に置いた。少し開いたチャックの隙間からほのかな「揚げ物」の香りがした瞬間、希のお腹が「ぐるるるる」と鳴った。
「きゃっ、ごめんなさい。は、恥ずかしい…。」
希は真っ赤になって両手で顔を隠した。
健は、特段気にする様子もなく
「本田さん、お腹すいてるんか?お腹すいてたら「元気」もでえへんやろ。おいちゃん、ここでお昼ご飯食べるつもりやったから、一緒に食べるか?駅前の「まつい」の串カツ買ってきてんねん。」
と言って、カバンから香りの元を取り出した。
透明なプラスチックのパックに約10本の串カツが入っていた。一番上にアスパラガスのカツがのっているのが見えた。珍しそうにカツを見つめる希に健が尋ねた。
「本田さん、大阪の人とちゃうんか?串カツ、そんなに珍しいか?」
希は小さく頷いて、
「私、広島の世羅町の出身なんです。大阪に来て1年2か月なんですけど、まだ、大阪の串カツって食べたことなくて…。「2度漬け禁止」とかルールがあるんですよね。ちょっと敷居が高くて…。それにしてもアスパラガスのカツなんかあるんですね。びっくりです。世羅町はアスパラの名産地なんですけど初めて見ました。」
と答えた。
「へー、本田さんは、世羅町の出身か?世羅ちゅうたら、「高校駅伝」と「世良公則」さんくらいしか思いつけへんかったわ。アスパラの名産地なんや。」
と健が感心して大きく頷くと、
「高校駅伝は世羅高校が有名ですね。ただ、世良公則さんは、近くの福山市出身ですね。「せら」の字が違うでしょ?よく勘違いされるんですよ。」
と希はスパッと返して笑った。
「おっ、本田さん、笑ったな。女の子は泣き顔より笑顔の方がええでな。かわいい笑顔できるんやないか。じゃあ、笑顔代として、おいちゃん「一推し」のアスパラは本田さんが食べてくれてええで!まだ、あったかいから旨いでー!」
健がプラパックを開け、ウスターソースを振りかけた。
「ホンマは、店でオリジナルのソースにドボンとつけて食べるともっと旨いねんけど、今日は持ち帰りやからかけるわな。本田さん、ウスターソース大丈夫か?広島の人は、オタフクソースやカープソースみたいな「ドロ」系のソースでないとあかんか?」
と気遣う健の厚意に甘えた。
「ウスターでも大丈夫です。じゃあ、アスパラいただいちゃってもいいですか?」
とアスパラのカツの下に巻かれたアルミホイルをつまむと「ぱくっ」と食べた。
「わー、美味しい!こんな食べ方があるんや。これは、お父さん、お母さんや高校の時の友達にも教えたらなあかんな。ありがとう、そ、そなえ…、えっと叔父さんの名前なんやったっけ?」
「本田さん、関西弁話せるんや。おいちゃんの名前は「そなえざと」。覚えにくいし言いにくいやろうから、「おっちゃん」って呼んでくれたらええで。その方が、楽やし、親しみも湧くやろ。」
「関西弁はお母さんが大阪出身なんで、伝染ってしもて、広島では浮いてたんです。うーん、呼び方は「おっちゃん」っていうのもあれやから「健さん」って呼ばせてもらってええですか?私のことは「のぞみ」って呼んでください。」
アスパラを食べながら、希が健に笑顔を見せた。
「じゃあ、希ちゃんって呼ばせてもらうわな。次は、このレンコン食べてみ。シャクシャクでこれも旨いで!あと、この牛串も食べてや。豚の串揚げはようあるけど、牛串は珍しいやろ?どんどん食べや。」
どんどん、串のネタの説明をして勧めてくれる健に
「健さんの食べる分無くなってしもたら申し訳あれへんから、健さんも食べてよ。」
と言うと、足元のバッグから銀色の缶を取り出して
「おいちゃんの「主食」はこれやから、遠慮せんでええで。」
とビールのステイオンタブを手前に引き起こした。
「1、2、3、4、5、6、7、あー、やっぱり、お日さんの下のビールは旨いな!」
健は空に向かって呟いた。
おじさんは、希の肩に手をあて、少し下に力を入れ、再びベンチに座らせた。
「お姉ちゃんは、本田さんっていうねんな。おいちゃんは、備里健。「そなえざと」は「備品の備」に「里帰りの里」。珍しい名字やろ。日本で10人もおれへんねんで。名前の「けん」は俳優の「高倉健さんの健」や。 まあ、高倉健さんには似ても似つけへんけどな。本田さんみたいに若い子には「高倉健」さんが分からへんかな?カラカラカラ。」
と楽しそうに笑った。
希は無意識に自分のお尻をベンチの左端に寄せ、健が座れるスペースを空け、右手を「どうぞ」と差し出した。
「あぁ、えらいすんませんな。じゃあ、おいちゃんも座らせてもらうわな。「よっこいしょうきち」っと。」
と希の父が使うような昭和ギャグとともに、大きなお腹を抱えて健は希の右側に腰を下ろした。
健は、大きな黒いリュックサックを下ろし、両足の前に置いた。少し開いたチャックの隙間からほのかな「揚げ物」の香りがした瞬間、希のお腹が「ぐるるるる」と鳴った。
「きゃっ、ごめんなさい。は、恥ずかしい…。」
希は真っ赤になって両手で顔を隠した。
健は、特段気にする様子もなく
「本田さん、お腹すいてるんか?お腹すいてたら「元気」もでえへんやろ。おいちゃん、ここでお昼ご飯食べるつもりやったから、一緒に食べるか?駅前の「まつい」の串カツ買ってきてんねん。」
と言って、カバンから香りの元を取り出した。
透明なプラスチックのパックに約10本の串カツが入っていた。一番上にアスパラガスのカツがのっているのが見えた。珍しそうにカツを見つめる希に健が尋ねた。
「本田さん、大阪の人とちゃうんか?串カツ、そんなに珍しいか?」
希は小さく頷いて、
「私、広島の世羅町の出身なんです。大阪に来て1年2か月なんですけど、まだ、大阪の串カツって食べたことなくて…。「2度漬け禁止」とかルールがあるんですよね。ちょっと敷居が高くて…。それにしてもアスパラガスのカツなんかあるんですね。びっくりです。世羅町はアスパラの名産地なんですけど初めて見ました。」
と答えた。
「へー、本田さんは、世羅町の出身か?世羅ちゅうたら、「高校駅伝」と「世良公則」さんくらいしか思いつけへんかったわ。アスパラの名産地なんや。」
と健が感心して大きく頷くと、
「高校駅伝は世羅高校が有名ですね。ただ、世良公則さんは、近くの福山市出身ですね。「せら」の字が違うでしょ?よく勘違いされるんですよ。」
と希はスパッと返して笑った。
「おっ、本田さん、笑ったな。女の子は泣き顔より笑顔の方がええでな。かわいい笑顔できるんやないか。じゃあ、笑顔代として、おいちゃん「一推し」のアスパラは本田さんが食べてくれてええで!まだ、あったかいから旨いでー!」
健がプラパックを開け、ウスターソースを振りかけた。
「ホンマは、店でオリジナルのソースにドボンとつけて食べるともっと旨いねんけど、今日は持ち帰りやからかけるわな。本田さん、ウスターソース大丈夫か?広島の人は、オタフクソースやカープソースみたいな「ドロ」系のソースでないとあかんか?」
と気遣う健の厚意に甘えた。
「ウスターでも大丈夫です。じゃあ、アスパラいただいちゃってもいいですか?」
とアスパラのカツの下に巻かれたアルミホイルをつまむと「ぱくっ」と食べた。
「わー、美味しい!こんな食べ方があるんや。これは、お父さん、お母さんや高校の時の友達にも教えたらなあかんな。ありがとう、そ、そなえ…、えっと叔父さんの名前なんやったっけ?」
「本田さん、関西弁話せるんや。おいちゃんの名前は「そなえざと」。覚えにくいし言いにくいやろうから、「おっちゃん」って呼んでくれたらええで。その方が、楽やし、親しみも湧くやろ。」
「関西弁はお母さんが大阪出身なんで、伝染ってしもて、広島では浮いてたんです。うーん、呼び方は「おっちゃん」っていうのもあれやから「健さん」って呼ばせてもらってええですか?私のことは「のぞみ」って呼んでください。」
アスパラを食べながら、希が健に笑顔を見せた。
「じゃあ、希ちゃんって呼ばせてもらうわな。次は、このレンコン食べてみ。シャクシャクでこれも旨いで!あと、この牛串も食べてや。豚の串揚げはようあるけど、牛串は珍しいやろ?どんどん食べや。」
どんどん、串のネタの説明をして勧めてくれる健に
「健さんの食べる分無くなってしもたら申し訳あれへんから、健さんも食べてよ。」
と言うと、足元のバッグから銀色の缶を取り出して
「おいちゃんの「主食」はこれやから、遠慮せんでええで。」
とビールのステイオンタブを手前に引き起こした。
「1、2、3、4、5、6、7、あー、やっぱり、お日さんの下のビールは旨いな!」
健は空に向かって呟いた。
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