上 下
18 / 49

「陽気な浮遊霊」

しおりを挟む
「陽気な浮遊霊」

 零が顔を上げると、おじさんの幽霊の方が話しかけてきた。女の子の幽霊はおじさんの後ろで興味を持って零の顔を覗き込んでいる。
「お姉ちゃん、「集霊」のオーラが出てるけど、「コンタクター」か「スピリチュアリスト」なんか?わしや娘の声聞こえてるんやろ?」
 零は黙ってうなずいた。
「さよか、生きた人間と話すのはどえらい久しぶりやなぁ…。お姉ちゃん、かわいい顔してコンバットゲーム、いや、今はサバゲーっていうんやったな。わしらの頃は、アメリカ製のペイント弾で撃ちあってた時代やから、女の子の参加者なんか全くナッシングの時代や。ほんま、世の中、だいぶ変わったなぁ…。ケラケラケラ。」

 「お、おじさん、ここのホテルで死んだっていう幽霊だべか?」
「おっ、お姉ちゃん津軽弁か?吉幾三って知ってるか?わし、ファンやってん。」
「はい、青森では今も人気がありますし、イタコのお母さんもファンでした…。」
「おっ、お母さん、イタコかいな!どおりでわしらと霊波が合うわけや。ほっほー、イタコは女系承継やもんな。将来はお姉ちゃんもイタコになるんやったら、こうやって、わしらと話せてるんは納得やな。」
おじさん幽霊は零の前で何度もうなずいた。
「お父ちゃん、このお姉ちゃん、私が銃で撃たれそうになったんを体を張って助けてくれたんやで。私じゃ何のお返しもできへんから、お父ちゃん、なんかお返ししてあげてや。」
と赤いスカートの女の子の幽霊がおじさん幽霊に言った。

 おじさん幽霊は腕を組んで、一瞬考えこみ、零に尋ねた。
「お姉ちゃん、なんか「反省」のオーラと「自虐の」オーラが出てるんやけど、なんか、悩みがあるんか?こんなおじさん幽霊やけど、なんか役に立てるかもしれへんから、聞かせてくれへんか?
 言葉にして出すだけでも心が楽になる場合もあるからな。」
(えっ?私、「反省」と「自虐」のオーラが出てるんだべか?うーん、溺れる者は何とやらよね。この際、言っちゃえ!)覚悟を決めて零はおじさん幽霊に話した。

 「私、門真工科高校サバゲー部の三菱零と言います。新米サバゲーマーです。今日、これまでに2戦やったんですけど、ノーキルのツーダイでクラブのみんなの足引っ張るばかりで…。
 みんなは全国大会目指して頑張ってるんで何とか応援、いや、足を引っ張らないくらいのことはやりたいんですけど…。第1戦はカミキリムシに驚いて声出しちゃうし、さっきは絶好のチャンスに緊張して外しちゃってもうダメダメなんです。
 こんな私でもみんなの力になれることってあるんでしょうか?」

「ほっほー、そんなことかいな?そんなもん、ビフォーブレックファーストや!わしに任せとかんかい!
ただし、わしの姿が見えて、話せるっていうのは、ほかのもんには内緒やで。普通の人は、すぐに「塩」まいたり「お経」唱えて、「お祓い」とかしよるからな。わしは、好きで浮遊霊やっとるんや。
それだけ、約束してくれるんやったら、次の試合から、お姉ちゃん、大活躍させたるわ!」
どや顔で零に語るおじさん幽霊の言葉に引き込まれていった。

「いったい、どうするんですか?」
「死んで30年、ベテラン浮遊霊のわしに任せんかい!わしも、生前はミリオタやったから、ようけあの世には知り合いがおんねん。お姉ちゃん、ちょっと耳貸しや…。」
 おじさん幽霊の話に、零は納得し第7人目のサバゲー部メンバー(?)としての参加をお願いした。
 最後に零は聞いた・
「おじさんのことなんて呼ばせてもらったらいいんだべ?」
「あぁ、まだ名乗ってへんかったな。関西生まれの関西育ちで関西死亡の「川崎飛燕かわさき・ひえん」ちゅうねん。「飛燕ひえんのおっちゃん」って呼んでもろたらかまへんで。
 名前と違って「オバQ」みたいに空は飛ばれへんけど、呼ばれたら「ハクション大魔王」みたいに零ちゃんのところにすぐ現れるからな。
 まあ、今日は決勝戦終わるまでずっと一緒に居るから安心してや!」

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~

あらお☆ひろ
現代文学
白血病の診断を受けた20歳の大学生「本田望《ほんだ・のぞみ》」と偶然出会ったちょっと変わった太ったおじさん「備里健《そなえざと・けん」》の1週間の物語です。 「劇脚本」用に大人の絵本(※「H」なものではありません)的に準備したものです。 マニアな読者(笑)を抱えてる「赤井翼」氏の原案をもとに加筆しました。 「病気」を取り扱っていますが、重くならないようにしています。 希と健が「B級グルメ」を楽しみながら、「病気平癒」の神様(※諸説あり)をめぐる話です。 わかりやすいように、極力写真を入れるようにしていますが、撮り忘れやピンボケでアップできないところもあるのはご愛敬としてください。 基本的には、「ハッピーエンド」なので「ゆるーく」お読みください。 全31チャプターなのでひと月くらいお付き合いいただきたいと思います。 よろしくお願いしまーす!(⋈◍>◡<◍)。✧♡

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

喫茶店オルクスには鬼が潜む

奏多
キャラ文芸
美月が通うようになった喫茶店は、本一冊読み切るまで長居しても怒られない場所。 そこに通うようになったのは、片思いの末にどうしても避けたい人がいるからで……。 そんな折、不可思議なことが起こり始めた美月は、店員の青年に助けられたことで、その秘密を知って行って……。 なろうでも連載、カクヨムでも先行連載。

処理中です...