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「C-MARTと謎のファイル」
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「C-MARTと謎のファイル」
バタバタとケネス警部に呼び出された夜から一夜開け、久しぶりのLALWAの興行に参加する日が来た。今日は、LALWEも共催の為、アグネスとマチルダ達、女子プロレスのメンバーも来ている。デビッドは、第2試合のシングルマッチに出場した。
何となく、気合が乗りきらずに、年下の新人レスラーにあっさりと不意を突かれ、固め技で負けてしまった。ひとり、シャワーを浴び、リングコスチュームからジャージに着替え、控室に戻ると誰もいない。壁に貼られたタイムスケジュール表を見ると、第4試合で、アグネスとマチルダのタッグマッチ。第5試合でセシルといつも一緒の仲間のユジン・バレンシアのタッグマッチが予定されている。
着替えたコスチュームを袋に入れて、ボストンバックに詰め込もうとしたとき、不意に昨日の明け方に受け取った黒いポーチが目に入った。遺失物として、明日、署に出勤した際に届けようと思い、開けもせずそのままにしていた。ふとバーの若い男の顔が浮かんだ。(「はいよ。昨晩の忘れ物だよ!あんまり飲みすぎんじゃねえぞ!」って何の疑いもなく、俺に渡したよなぁ・・・。)デビッドは無意識にポーチのファスナーを開けた。
中身は携帯電話、デビッドも数年前まで使っていた覚えのある古いモデルのアイフォーンだった。そして、64GBのUSBメモリーが1本。そして、1枚の4つ折りになった紙ナプキンと安物のボールペン。
アイフォーンの電源ボタン軽くを押すと、今朝から2件の着信有りとのメッセージが表示されている。再度、ホームボタンを押すと4桁の暗証番号認証の画面が現れた。ポーチの中に入っていたメモを見ると、英数字混載の8桁のパスワードらしきものがボールペンで書きなぐってある。(暗証番号じゃねえな・・・。変に触るとロック掛かるし、こりゃ、ここまでだな。)
続いて、深く考えずに、自分のノートパソコンを取り出し、電源を入れた。(これは何か出るかな・・・?)とUSBメモリーを差し込んだ。外部メモリーのアイコンをクリックし、USBメモリのファイルを開くと、「C-MART」というフォルダが一つだけ入っていた。フォルダを開くと、「C-MART」名のファイルが一つだけある。更に、ファイル名をクリックすると、「C-MART」とタイトルが中央に入った画面が現れ、パスワード入力のボックスが開く。USBメモリーにはパスワードらしきものは何にもなかったので、4つ折りの紙ナプキンを開き、そこに書かれていた8つの英数字を入力した。
表紙画面
から次の画面にとんだ。「一覧表示」、「項目別検索」とあり、項目には
NOW、「SALE」OR「SOLD OUT」、
SEX「MALE」OR「FEMALE」、
RACE「WHITE」、「BRACK」、「YELLOW」、
AGEの横には「2」から始まるツリーボックス、
BLOODTYPE「A」、「B」、「O」、「AB」、
HEALTH「FINE」、「NOT」
とある。
とりあえず、「一覧表示」を選択すると、リストがずらっと表示された。エントリー数214と表示されている。リストをスクロールさせると、「A」から始まり「Z」まで214人の名前が順に並んでいるようだ。
リストの最上段には、「NOW」、「SEX」、「RACE」、「AGE」、「BLOODTYPE」、「HEALTH」とあり、絞り込み検索ができるようだ。
試しに1番上段のリストをクリックしてみた。
「FILE NO,1」、「Abbie Martiness」、「SALE」、「FEMALE」、「5」、「TYPE A」、「FINE」との表示と、顔、全身像の正面と横向きのもの、着衣姿、裸の姿の画像と「拡大表示」のボタンと画像の下段に「MOVIE」のボタンが現れた。
「MOVIE」のボタンを押すと、表情のない顔つきで子供が
「アビー・マルチネス、アメリカ人の5歳の女の子です。血液型はA型です。健康です。自転車が好きです。」
と真っ白な背景の前で固定カメラに向かい淡々と話す、約20秒の動画が流れた。
(なんだ、これ・・・。)デビッドは固まった。
ガチャッ!とノックもなくドアが開き、デビッドは慌てて振り返った。
「なんだ、おめぇ、今日のファイトは?しょっぱい試合しやがって!」
とリングコスチューム姿のセシルとユジンが入ってきた。
「こんにちわー!」
「お久しぶりでーす!」
とジャージ姿のアグネスとマチルダも付いてきていた。
あわててノートパソコンを閉じるデビッド。それを見逃さなかったアグネスが、さっと部屋に入り、
「何か可愛らしい女の子映ってたんだけど、何見てたんですか?まさか、へんなサイト見てたんじゃないでしょうね~、デビッドさん!」
とノートパソコンを開いた。
「!!!」さっきまで見ていたアビー・マルチネスのデータが開く。幼児の裸の写真に気づき
「デビッドさんの変態!」
と顔を赤らめ、アグネスはデビッドに平手打ちをかました。
「なんだ、なんだ?」
と寄ってくる、セシルとユジンとマチルダ。
「いやっ!デビッドさんのエッチ!」
とマチルダが差し入れに持ってきたペットボトルでデビッドの頭をたたいた。アグネスはデビッドに背を向け、そっぽを向いて口をとんがらがせている。繰り返される動画が流れる中、セシルが前に割って入り、画面に見入った。
「セシルさんまで、やめてよ~。」
とマチルダがノートパソコンを閉じようとするが、セシルがガシッと画面を押さえつけ、閉じさせない。
「ちょっと待て、これ・・・・そんなんじゃねぇ・・・。」
セシルはバックボタンをクリックし、リスト欄に戻った。上から下までスクロールし、再び最上段へ。続いて、2番目のリストをクリックする。
今度は、男の子のページが表示された。3番目も男の子、4番目は女の子だった。セシルはデビッドの胸ぐらをつかみ
「おめぇ、何やってんだよ!」
と怒鳴りつける。間に入って、必死にユジンが止めた。
「落ち着け、セシル!まずは落ち着いて聞いてくれ!」
とデビッドが、セシルの両手首をぐっと握った。
「・・・・という訳なんだ。俺にも何のことだかわかんねぇんだよ。」
と事の経緯をデビッドが4人に説明した。セシルはアグネスに控室のロックを中から掛けるように指示し、両腕を組み考え込んだ。
「C-MART・・・聞いた事がある・・・。通称「チャイルドマーケット」・・・。闇社会での小児売買の闇サイトだ。「性的錯倒者の愛贋物扱いの小児」対象としての人身売買であったり、「チャイルドポルノ」や酷いものになると「セックス・サディスト物」で子供たちを傷つける動画や、考えたくもないが「スナッフフィルム」っていう「快楽殺人動画」であったり「猟奇殺人物」・・・アメリカの連続殺人犯デット・バンディが愛好者であったことが有名だな。最近では「ウクライナ21」っていう殺人ビデオがネット上で公開されたり、一部の殺人物マニアの変態どもに人気があり、その対象として子供たちが扱われることもあると聞いた事がある。そして最近では「移植用臓器のパーツ取り」まで・・・。」
マチルダが突然、青い顔をして部屋の隅に走り、ごみ箱を抱え嘔吐した。アグネスが背中をやさしくさすってやる。
「酷い、酷すぎますよ。何でこんな小さな子たちが・・・・。」
アグネスが小さな声でつぶやく。
「可哀そう・・・・。」
マチルダは、しくしくと泣き出した。
「あくまで噂だが、小児を買う変態や、マニアは昔からいるが、重い病気を抱えた子供を持つ親が、やむにやまれず・・・・。闇組織から、難病を抱えた子を持つ親に悪魔のささやきっていうのか・・・、臓器提供を持ち掛ける奴らがいるって話だ。このロスでも2,3年前から耳にしたことがある。」
とセシルが話す。
「で、このポーチだが、デビッドが飲み屋で「忘れ物」って渡されたんだろ?でも、デビッドのものじゃないとしたら、どういうことだ?」
とユジンが続いた。
「!!」デビッドが立ち上がった。
「昨日、俺とそっくりな奴が、そのバーの近くのシティホテルで強盗に遭って、意識不明なんだ。そいつからは、大量のアルコール反応が出てたって、セシル警部が言ってた・・・。」
「それだ!このポーチの持ち主が、そのバーでしこたま飲んで、ホテルの部屋で襲われた。そいつが酔っ払ってバーに忘れていったポーチを店員が勘違いして、持ち主にそっくりなデビッドに渡したってことだな。デビッド、セシル!」
とユジンが叫んだ。ノートパソコンを操作しながら、リストをスクロールさせる。
「それにしても、214人ってたまらんなぁ・・・。」
「ユジンさん!ちょっと待って!」
とアグネスが、ユジンの後ろに回り込み画面をのぞき込む。
「ユジンさん、ちょっとリスト戻して!」
リスト画面を逆スクロールさせるユジン。
「ストップ!」
アグネスの顔が見る見るうちに青くなっていった。
「マチルダ・・・、これって・・・。」
アグネスが、リストの「N」の行の一番上のリストを指さした。マチルダがフラフラとパソコンの前に来て、画面を確認する。
「ナ、ナンシー・ルース・・・あの・・・・。」
ナンシー・ルースの名前とファイルナンバー前のチェックボックスにマークが入っている。マチルダが、ユジンに震える声で伝えた。
「ユジンさん、このナンシー・ルースのページ開いて!」
ユジンがリストをクリックし、ファイルが開く。「ナンシー・ルース」、「SALE*」、「FEMALE」、「WHITE」、「AGE 5」、「BLOODTYPE A」、「FINE」、「RESERVE*」の項目と写真、動画ページになる。
「動画開いて!」
とアグネス。ナンシー・ルースの動画が流れ出す。だまって1回目を見て、2回目が流れ出したときマチルダとアグネスは画面に向けた目を閉じ下を向いた。
「おい、どうしたんだ?」
とセシルが2人に尋ねた。
「この子、マリブプレスクールの子で、3日前から、行方不明になってて・・・」
とマチルダ。アグネスが、はたと画面の一部に注目した。画面を指さし叫んだ!
「ここよく見てよ!備考欄!「RESERBVE* 〇月×日」ってなに?明日じゃない!」
「こりゃやばいヤマかもな・・・。」
デビッドがつぶやく。
「ちょっと代わってくれ・・・。」
とユジンと席を交代した。ナンシーのファイルの「詳細表示」のボタンをクリックすると、ナンシー・ルース本人および親の個人情報から健康診断の結果までが表示された。
「情報掲載日時が3日前。アグネスとマチルダの話と一致するこの親の情報と住所からして、マリブプレスクールの園児で間違い無いだろう・・・。あとはどうコンタクト先を見つけるかだ・・・。」
と再びパソコンを操作しだした。
一時間ほど、作業を続けるが手掛かりは見つからなかった。
「そろそろ、今日の試合もおしまいだ。この控室も出なきゃいけない。続きはデイリーLAの会議室に移動だ。」
とセシルが声をかけ、全員が頷いた。
アグネスとマチルダはLALWEの更衣室に向かった。
「ラマダになんて言おう?片付けやらずに帰るって言ったら怒られるよね・・・。」
「でも、仕方ないわ。今日は、セシルさんたちがご飯食べに連れて行ってくれるってことにしようよ。」
セミファイナルを終えて、ラマダとアレサが更衣室に帰ってきた。2人とも汗だらだらだ。
「お疲れ様でした。」
と2人にタオルを渡し、
「・・・ところで、今日は先に上がらせてもらってよろしいでしょうか・・・。」
とマチルダが尋ねた。
「何だよ、みんなでJohnny Rebs行こうと思ってたのによぉ。」
とアレサが絡む。
「すいません・・・。セ、セシルさんたちに誘われちゃって・・・。」
とアグネス。目が泳いでそわそわしている。ラマダは2人をじっと見つめ、
「・・・・・。いいよ。・・・また、あなた達、変なことに絡んでんじゃないでしょうねぇ?あの3人組は疫病神だから気をつけなさいよ。くれぐれも危ない事だけはするんじゃないよ!」
とウインクした。
「ラマダの勘ってすごいから、バレちゃったのかと思ったわ?」
「いや、きっと何かあるって、わかっているわよ。」
アグネスとマチルダはジャージに着替えて待ち合わせの駐車場へ急いだ。
アグネスとマチルダが地下駐車場に降りると、セシルとユジンが待っていた。
「あれ、デビッドさんは?」
「あいつは、署に寄ってから来るってさ。一応警察官だからな。ケネス警部に何か話してくるんだろう。ポーチは俺が預かっているから大丈夫だ。俺のボスに会議室は開けてもらっているから、戻って分析を始めよう。」
「はい。(ナンシーちゃん、待っててね。必ず、助けに行くからね)」
アグネスとマチルダは拳を「ギュッ」と握り締めた。
バタバタとケネス警部に呼び出された夜から一夜開け、久しぶりのLALWAの興行に参加する日が来た。今日は、LALWEも共催の為、アグネスとマチルダ達、女子プロレスのメンバーも来ている。デビッドは、第2試合のシングルマッチに出場した。
何となく、気合が乗りきらずに、年下の新人レスラーにあっさりと不意を突かれ、固め技で負けてしまった。ひとり、シャワーを浴び、リングコスチュームからジャージに着替え、控室に戻ると誰もいない。壁に貼られたタイムスケジュール表を見ると、第4試合で、アグネスとマチルダのタッグマッチ。第5試合でセシルといつも一緒の仲間のユジン・バレンシアのタッグマッチが予定されている。
着替えたコスチュームを袋に入れて、ボストンバックに詰め込もうとしたとき、不意に昨日の明け方に受け取った黒いポーチが目に入った。遺失物として、明日、署に出勤した際に届けようと思い、開けもせずそのままにしていた。ふとバーの若い男の顔が浮かんだ。(「はいよ。昨晩の忘れ物だよ!あんまり飲みすぎんじゃねえぞ!」って何の疑いもなく、俺に渡したよなぁ・・・。)デビッドは無意識にポーチのファスナーを開けた。
中身は携帯電話、デビッドも数年前まで使っていた覚えのある古いモデルのアイフォーンだった。そして、64GBのUSBメモリーが1本。そして、1枚の4つ折りになった紙ナプキンと安物のボールペン。
アイフォーンの電源ボタン軽くを押すと、今朝から2件の着信有りとのメッセージが表示されている。再度、ホームボタンを押すと4桁の暗証番号認証の画面が現れた。ポーチの中に入っていたメモを見ると、英数字混載の8桁のパスワードらしきものがボールペンで書きなぐってある。(暗証番号じゃねえな・・・。変に触るとロック掛かるし、こりゃ、ここまでだな。)
続いて、深く考えずに、自分のノートパソコンを取り出し、電源を入れた。(これは何か出るかな・・・?)とUSBメモリーを差し込んだ。外部メモリーのアイコンをクリックし、USBメモリのファイルを開くと、「C-MART」というフォルダが一つだけ入っていた。フォルダを開くと、「C-MART」名のファイルが一つだけある。更に、ファイル名をクリックすると、「C-MART」とタイトルが中央に入った画面が現れ、パスワード入力のボックスが開く。USBメモリーにはパスワードらしきものは何にもなかったので、4つ折りの紙ナプキンを開き、そこに書かれていた8つの英数字を入力した。
表紙画面
から次の画面にとんだ。「一覧表示」、「項目別検索」とあり、項目には
NOW、「SALE」OR「SOLD OUT」、
SEX「MALE」OR「FEMALE」、
RACE「WHITE」、「BRACK」、「YELLOW」、
AGEの横には「2」から始まるツリーボックス、
BLOODTYPE「A」、「B」、「O」、「AB」、
HEALTH「FINE」、「NOT」
とある。
とりあえず、「一覧表示」を選択すると、リストがずらっと表示された。エントリー数214と表示されている。リストをスクロールさせると、「A」から始まり「Z」まで214人の名前が順に並んでいるようだ。
リストの最上段には、「NOW」、「SEX」、「RACE」、「AGE」、「BLOODTYPE」、「HEALTH」とあり、絞り込み検索ができるようだ。
試しに1番上段のリストをクリックしてみた。
「FILE NO,1」、「Abbie Martiness」、「SALE」、「FEMALE」、「5」、「TYPE A」、「FINE」との表示と、顔、全身像の正面と横向きのもの、着衣姿、裸の姿の画像と「拡大表示」のボタンと画像の下段に「MOVIE」のボタンが現れた。
「MOVIE」のボタンを押すと、表情のない顔つきで子供が
「アビー・マルチネス、アメリカ人の5歳の女の子です。血液型はA型です。健康です。自転車が好きです。」
と真っ白な背景の前で固定カメラに向かい淡々と話す、約20秒の動画が流れた。
(なんだ、これ・・・。)デビッドは固まった。
ガチャッ!とノックもなくドアが開き、デビッドは慌てて振り返った。
「なんだ、おめぇ、今日のファイトは?しょっぱい試合しやがって!」
とリングコスチューム姿のセシルとユジンが入ってきた。
「こんにちわー!」
「お久しぶりでーす!」
とジャージ姿のアグネスとマチルダも付いてきていた。
あわててノートパソコンを閉じるデビッド。それを見逃さなかったアグネスが、さっと部屋に入り、
「何か可愛らしい女の子映ってたんだけど、何見てたんですか?まさか、へんなサイト見てたんじゃないでしょうね~、デビッドさん!」
とノートパソコンを開いた。
「!!!」さっきまで見ていたアビー・マルチネスのデータが開く。幼児の裸の写真に気づき
「デビッドさんの変態!」
と顔を赤らめ、アグネスはデビッドに平手打ちをかました。
「なんだ、なんだ?」
と寄ってくる、セシルとユジンとマチルダ。
「いやっ!デビッドさんのエッチ!」
とマチルダが差し入れに持ってきたペットボトルでデビッドの頭をたたいた。アグネスはデビッドに背を向け、そっぽを向いて口をとんがらがせている。繰り返される動画が流れる中、セシルが前に割って入り、画面に見入った。
「セシルさんまで、やめてよ~。」
とマチルダがノートパソコンを閉じようとするが、セシルがガシッと画面を押さえつけ、閉じさせない。
「ちょっと待て、これ・・・・そんなんじゃねぇ・・・。」
セシルはバックボタンをクリックし、リスト欄に戻った。上から下までスクロールし、再び最上段へ。続いて、2番目のリストをクリックする。
今度は、男の子のページが表示された。3番目も男の子、4番目は女の子だった。セシルはデビッドの胸ぐらをつかみ
「おめぇ、何やってんだよ!」
と怒鳴りつける。間に入って、必死にユジンが止めた。
「落ち着け、セシル!まずは落ち着いて聞いてくれ!」
とデビッドが、セシルの両手首をぐっと握った。
「・・・・という訳なんだ。俺にも何のことだかわかんねぇんだよ。」
と事の経緯をデビッドが4人に説明した。セシルはアグネスに控室のロックを中から掛けるように指示し、両腕を組み考え込んだ。
「C-MART・・・聞いた事がある・・・。通称「チャイルドマーケット」・・・。闇社会での小児売買の闇サイトだ。「性的錯倒者の愛贋物扱いの小児」対象としての人身売買であったり、「チャイルドポルノ」や酷いものになると「セックス・サディスト物」で子供たちを傷つける動画や、考えたくもないが「スナッフフィルム」っていう「快楽殺人動画」であったり「猟奇殺人物」・・・アメリカの連続殺人犯デット・バンディが愛好者であったことが有名だな。最近では「ウクライナ21」っていう殺人ビデオがネット上で公開されたり、一部の殺人物マニアの変態どもに人気があり、その対象として子供たちが扱われることもあると聞いた事がある。そして最近では「移植用臓器のパーツ取り」まで・・・。」
マチルダが突然、青い顔をして部屋の隅に走り、ごみ箱を抱え嘔吐した。アグネスが背中をやさしくさすってやる。
「酷い、酷すぎますよ。何でこんな小さな子たちが・・・・。」
アグネスが小さな声でつぶやく。
「可哀そう・・・・。」
マチルダは、しくしくと泣き出した。
「あくまで噂だが、小児を買う変態や、マニアは昔からいるが、重い病気を抱えた子供を持つ親が、やむにやまれず・・・・。闇組織から、難病を抱えた子を持つ親に悪魔のささやきっていうのか・・・、臓器提供を持ち掛ける奴らがいるって話だ。このロスでも2,3年前から耳にしたことがある。」
とセシルが話す。
「で、このポーチだが、デビッドが飲み屋で「忘れ物」って渡されたんだろ?でも、デビッドのものじゃないとしたら、どういうことだ?」
とユジンが続いた。
「!!」デビッドが立ち上がった。
「昨日、俺とそっくりな奴が、そのバーの近くのシティホテルで強盗に遭って、意識不明なんだ。そいつからは、大量のアルコール反応が出てたって、セシル警部が言ってた・・・。」
「それだ!このポーチの持ち主が、そのバーでしこたま飲んで、ホテルの部屋で襲われた。そいつが酔っ払ってバーに忘れていったポーチを店員が勘違いして、持ち主にそっくりなデビッドに渡したってことだな。デビッド、セシル!」
とユジンが叫んだ。ノートパソコンを操作しながら、リストをスクロールさせる。
「それにしても、214人ってたまらんなぁ・・・。」
「ユジンさん!ちょっと待って!」
とアグネスが、ユジンの後ろに回り込み画面をのぞき込む。
「ユジンさん、ちょっとリスト戻して!」
リスト画面を逆スクロールさせるユジン。
「ストップ!」
アグネスの顔が見る見るうちに青くなっていった。
「マチルダ・・・、これって・・・。」
アグネスが、リストの「N」の行の一番上のリストを指さした。マチルダがフラフラとパソコンの前に来て、画面を確認する。
「ナ、ナンシー・ルース・・・あの・・・・。」
ナンシー・ルースの名前とファイルナンバー前のチェックボックスにマークが入っている。マチルダが、ユジンに震える声で伝えた。
「ユジンさん、このナンシー・ルースのページ開いて!」
ユジンがリストをクリックし、ファイルが開く。「ナンシー・ルース」、「SALE*」、「FEMALE」、「WHITE」、「AGE 5」、「BLOODTYPE A」、「FINE」、「RESERVE*」の項目と写真、動画ページになる。
「動画開いて!」
とアグネス。ナンシー・ルースの動画が流れ出す。だまって1回目を見て、2回目が流れ出したときマチルダとアグネスは画面に向けた目を閉じ下を向いた。
「おい、どうしたんだ?」
とセシルが2人に尋ねた。
「この子、マリブプレスクールの子で、3日前から、行方不明になってて・・・」
とマチルダ。アグネスが、はたと画面の一部に注目した。画面を指さし叫んだ!
「ここよく見てよ!備考欄!「RESERBVE* 〇月×日」ってなに?明日じゃない!」
「こりゃやばいヤマかもな・・・。」
デビッドがつぶやく。
「ちょっと代わってくれ・・・。」
とユジンと席を交代した。ナンシーのファイルの「詳細表示」のボタンをクリックすると、ナンシー・ルース本人および親の個人情報から健康診断の結果までが表示された。
「情報掲載日時が3日前。アグネスとマチルダの話と一致するこの親の情報と住所からして、マリブプレスクールの園児で間違い無いだろう・・・。あとはどうコンタクト先を見つけるかだ・・・。」
と再びパソコンを操作しだした。
一時間ほど、作業を続けるが手掛かりは見つからなかった。
「そろそろ、今日の試合もおしまいだ。この控室も出なきゃいけない。続きはデイリーLAの会議室に移動だ。」
とセシルが声をかけ、全員が頷いた。
アグネスとマチルダはLALWEの更衣室に向かった。
「ラマダになんて言おう?片付けやらずに帰るって言ったら怒られるよね・・・。」
「でも、仕方ないわ。今日は、セシルさんたちがご飯食べに連れて行ってくれるってことにしようよ。」
セミファイナルを終えて、ラマダとアレサが更衣室に帰ってきた。2人とも汗だらだらだ。
「お疲れ様でした。」
と2人にタオルを渡し、
「・・・ところで、今日は先に上がらせてもらってよろしいでしょうか・・・。」
とマチルダが尋ねた。
「何だよ、みんなでJohnny Rebs行こうと思ってたのによぉ。」
とアレサが絡む。
「すいません・・・。セ、セシルさんたちに誘われちゃって・・・。」
とアグネス。目が泳いでそわそわしている。ラマダは2人をじっと見つめ、
「・・・・・。いいよ。・・・また、あなた達、変なことに絡んでんじゃないでしょうねぇ?あの3人組は疫病神だから気をつけなさいよ。くれぐれも危ない事だけはするんじゃないよ!」
とウインクした。
「ラマダの勘ってすごいから、バレちゃったのかと思ったわ?」
「いや、きっと何かあるって、わかっているわよ。」
アグネスとマチルダはジャージに着替えて待ち合わせの駐車場へ急いだ。
アグネスとマチルダが地下駐車場に降りると、セシルとユジンが待っていた。
「あれ、デビッドさんは?」
「あいつは、署に寄ってから来るってさ。一応警察官だからな。ケネス警部に何か話してくるんだろう。ポーチは俺が預かっているから大丈夫だ。俺のボスに会議室は開けてもらっているから、戻って分析を始めよう。」
「はい。(ナンシーちゃん、待っててね。必ず、助けに行くからね)」
アグネスとマチルダは拳を「ギュッ」と握り締めた。
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