上 下
8 / 9

「3人の襲撃」

しおりを挟む
「3人の襲撃」

 イベント当日、会場は大盛況だ。事前の調べで3人のパスポートの写真は手に入っていた。「警備員の顔に気を付けていれば、3人の接近はわかるはずだ。猟奇殺人犯をこれ以上のさばらせる訳にはいかん!ロス市警の意地を見せてやれ!」
とケネス警部が私服警官たちに檄を飛ばした。

 来賓控室でデビッドがセシルとユジンとチャックに3人の写真を渡した。
「この顔、しっかりと頭に入れてください。警部も動いてくれていますが、いかんせん、この人出です。チャックさんは俺たち3人で必ず守ります。チャックさんは午後3時のリングでの挨拶のセレモニーまで極力、この部屋から出ないようにしてください。トイレの時も俺たちの誰かが同行します。警備員は信用しないでください。
 奴らがどこで見ているかわからないので、俺たちはマスクをかぶって衣装に着替えよう。」
そそくさと着替え、マスクをかぶる3人。チャックはスーツ姿でその様子を見守っている。
 朝からイベントは順次進み、前座の試合で3人の出番も無事に終わり、チャックと3人は控室でじっと、チャックのセレモニーの時間を待っている。

 午後2時50分、コンコンコンとドアがノックされた。
「チャック・イェーガーさん、そろそろお時間ですのでお迎えに参りました。」
との声がかかった。
「はい、ちょっと待ってくださいね!」
とユジンがドアを開けようとしたところ、「バカーン!」とドアがけ破られた。吹っ飛ぶユジン。警備員のユニフォームを着た3人の男が飛び込んできた。
「父の恨みを思い知れーっ!」
と青龍刀を持った男がチャックに一直線に襲い掛かる。かろうじて、デビッドが座っていたパイプイスで青龍刀の男を殴り倒す。続いて、ヌンチャクと長棒を持った男が襲い掛かってくる。セシルと起き上がってきたユジンが挟み撃ちで男たちをなぎ倒した。

「チャックさん、とりあえず、外へ逃げましょう!セシル、ユジン行くぞ!」
とデビッドがチャックの腕を引き、倒れた男たちを踏みつけドアの外にでる。ドアの前で2人の私服警官が倒れている。どうやら、男たちにやられたようだ。出口につながる廊下の右側を見ると警備員が何人かこちらに向かって走ってきている。
(敵か味方かわからん以上、こっちはダメだ!)そう判断したデビッドはリングのある会場に続く左のルートを選んだ。デビッド、チャック、ユジン、セシルの順で左へ走った。3人の男は、各々の武器を持ち、起き上がってきた。
後ろを気にしながら、走り続けるが、レスラーを引退して15年になる75歳のチャックの息が上がり、逃げるペースが上がらない。途中、応援に駆けつけた刑事たちが男に飛びかかるが、ヌンチャクと長棒によって簡単にやられてしまった。
(こいつら、なかなか強いぞ。)セシルが廊下の非常ベルを鳴らし、携帯でケネス警部に電話をかけた。
「やつら、控室に現れました。中国武術の武器を持っています!今、リングに向かって逃げています。観客を退避させてください。」

 あっという間に、廊下を抜けて会場に入った。スポットライトがチャックとデビッドを照らし、音楽が鳴り響く。観客には事態が伝わっていないため、大きな拍手が起こった。リング上には、今日のラウンドガールを務めている、知り合いの女子プロレスラーのアグネス・リッケンバッカーとマチルダ・ルークが大きな花束を持ってチャックの登場を待っていた。やっとのことで、チャックを連れて、リングに上がるデビッド、少し遅れてユジンとセシル。
「あれー?デビッドさん、セシルさん、ユジンさん、聞いてた段取りと違いますよー?」
「三人そろってなんなんですか?チャックさん息切らせて大丈夫ですか?」
とアグネスとマチルダが花束をチャックに渡そうとすると、三人の警備員が手に武器を持ってリングに飛び込んできた

 スーツ姿のチャックに3人のマスクマン。さらに遅れて、青龍刀、ヌンチャク、長棒を持った警備員がリングに上がった。
「アグネス、マチルダ!チャックさんをリング下に退避させてくれ!」
「えっ?何なのよー」
デビッドは赤コーナーの角にチャックを押し込み、アグネスとマチルダにチャックを預け向き直った。赤コーナー前に立つ3人のマスクマン。その正面の3人の警備員は帽子と制服を脱ぎ捨てる。中には拳法道着を着こんでいた。リング上でにらみ合う6人を観客は演出と思い、立ち上がっての拍手と歓声、口笛、指笛が鳴りやまない。
 何を勘違いしたのか、リングアナウンサーが青龍刀を持った道着の男にマイクを手渡した。青龍刀を持った男が、チャックを指さしマイクを持ち叫んだ。

「この老いぼれは、インチキ試合で30年前に俺たちの親父を殺した。4000年の歴史を持つ、中国拳法を侮辱した。今日は、俺たち3人が中国拳法こそが世界最強であることを証明し、こいつらの罪を今この場で精算してやる!俺は少林拳(青龍刀を頭上に上げる)、こいつはジークンドー(右の男がヌンチャクを回す。会場が盛り上がる)、こいつは八極拳(左の男が長棒を振り回す。ふたたび大きな歓声が湧き上がる)。行くぞ!」
と叫ぶと同時に3人が襲い掛かってきた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の神様は〇〇〇〇さん~不思議な太ったおじさんと難病宣告を受けた女の子の1週間の物語~

あらお☆ひろ
現代文学
白血病の診断を受けた20歳の大学生「本田望《ほんだ・のぞみ》」と偶然出会ったちょっと変わった太ったおじさん「備里健《そなえざと・けん」》の1週間の物語です。 「劇脚本」用に大人の絵本(※「H」なものではありません)的に準備したものです。 マニアな読者(笑)を抱えてる「赤井翼」氏の原案をもとに加筆しました。 「病気」を取り扱っていますが、重くならないようにしています。 希と健が「B級グルメ」を楽しみながら、「病気平癒」の神様(※諸説あり)をめぐる話です。 わかりやすいように、極力写真を入れるようにしていますが、撮り忘れやピンボケでアップできないところもあるのはご愛敬としてください。 基本的には、「ハッピーエンド」なので「ゆるーく」お読みください。 全31チャプターなのでひと月くらいお付き合いいただきたいと思います。 よろしくお願いしまーす!(⋈◍>◡<◍)。✧♡

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【第2話完結!】『2次元の彼R《リターンズ》~天才理系女子(りけじょ)「里景如志(さとかげ・しし)のAI恋愛事情~』

あらお☆ひろ
現代文学
はじめまして。「あらお☆ひろ」です。 アルファポリスでのデビューになります。 一応、赤井翼先生の「弟子」です!公認です(笑)! 今作は赤井先生に作ってらった「プロット」と「セリフ入りチャプター」を元に執筆させてもらってます。 主人公は「グリグリメガネ」で男っ気の無い22歳の帰国子女で「コンピュータ専門学校」の「プログラミング講師」の女の子「里景如志(さとかげ・しし)」ちゃんです。 思いっきり「りけじょ」な如志ちゃんは、20歳で失恋を経験した後、「2次元」に逃げ込んだ女の子なんですが「ひょんなこと」で手に入れた「スーパーコンピュータ」との出会いで、人生が大きく変わります。 「生成AI」や「GPT」を取り上げているので「専門用語」もバシバシ出てきますが、そこは読み逃がしてもらっても大丈夫なように赤井先生がストーリーは作ってくれてます。 主人公の如志ちゃんの周りには「イケメン」くんも出てきます。 「2次元」VS「リアル」の対決もあります。 「H」なシーンは「風呂上がり」のシーンくらいです(笑)。 あと、赤井先生も良く書きますが「ラストはハッピーエンド」です! ラスト前で大変な目に遭いますが、そこはで安心して読んでくださいね! 皆さんからの「ご意見」、「ご感想」お待ちしています!(あまり厳しいことは書かないでくださいね!ガラスのメンタルなもんで(笑)。) では、「2次元の彼~」始まりまーす! (⋈◍>◡<◍)。✧♡ (追伸、前半の挿絵は赤井翼先生に作ってもらいました。そこまでAI作画の「腕」が上がりませんでした(笑)。)

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...