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「過去の試合の怨恨」
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「過去の試合の怨恨」
チャックの店に戻り、3人で奥の席を貸し切ってもらい、これまでの話の経緯を改めて、セシルがチャックに説明した。チャックが過去の記憶を掘り起こしながらゆっくりと思い出したことを述べていった。
「あぁ、思い出したぜ。LAのチャイナタウンで世界最強をほざいてた、中国人の拳法家とそういえば・・・30年ほど前に異種格闘技戦やったなぁ。
その時のテレビ屋がジョージ・ウエルチか。そんな名前だったかな?めちゃめちゃ白人至上主義の偏ったやつだったかなぁ。それっきりだったんで俺の記憶はねえが、当時の俺のタッグの相棒がプエルトリコ系だったんだが、テレビ屋のこと、えらく毛嫌いしてた記憶があるなぁ。
対戦相手の拳法家のことは全然覚えてねぇ。60分枠取ってたのに、最初の5分くらいだったかなぁ、おれのジャンピングニーパットか軽いドロップキックで伸びちまって、残り時間困っちまった記憶がかすかにあるくらいだな・・・。あつ、その時のセコンドに、目つきの悪い、東洋武術の道着を着た3人の小僧がいたかな・・・。
だめだ、よく思い出せないわ・・・。いずれにしたって、そいつも俺とそう年は変わらんだろうから、もう80前後のじじいだぜ。そんなやつに、こんな派手な殺人事件ができるか?」
セシルがメモを読み返しながら、一つの事に気が付いた。
「ちょっと、チャックさん、その時のセコンドに子供が3人いたんですね?」
「さっきも言ったけど記憶は曖昧だぜ。たぶん・・・。あくまでたぶんだ!俺のファイトの中では、本当にその試合は印象が薄いんだわ。」
プルルルル。セシルのスマホが鳴った。発信元はデイリーLAのデスクの携帯からだった。
「はいもしもし、何かわかりましたか?」
「おう、30年前にチャックとやった中国人拳法家は、LAの旧チャイナタウンで拳法道場やってたチャン・リーってやつだったんだが、異種格闘技戦の後、廃業して自殺してしまってるなぁ。30年前にもう死んじまってるぜ。」
デスクは分かったことだけを手短にセシルに伝えた。
「デスク!チャン・リーに子供はいましたか?男の子で3人!」
「そこまでは、わかんねぇ。ただ、4人の共通点ははっきりとした。残された4枚の絵の話も、うちのチャイナ系詳しい奴に聞いたら、お前の友達のユジンさんと同じ解釈だった。犯人はその息子かまではわからんが、中国人拳法家が絡んでることは、間違いなさそうだな。今日は帰ってこなくていいから、チャックさんについて特ダネ掴んで来い!じゃあな。」
とデスクはセシルとの会話を打ち切り、電話を切った。
セシルは電話をポケットにしまうとチャックとデビッド、ユジンの3人に向かって言った。
「周りで、聞こえていたと思いますが、チャン・リーっていうチャックさんが倒した拳法家は自殺しています。子供の存在ははっきりしていませんが、チャックさんのかすかな記憶とデビッドからの情報とユジンの判断からすると、チャン・リーの息子3人が係わってきている可能性があります。
念のため、今日一日は、チャックさんには迷惑でしょうけど、私とユジンがボディーガード代わりについていていいですね。なんといっても、相手は、動けない被害者を水に沈め、バーナーで焼き、何やらの器具で無残に引き裂き、鋭利な刃物で首を落とすような奴ですから・・・。」
「おいおい、あんまり脅すなよ。今晩はお前らと一緒にホテルにでも泊まろう。男3人って侘しいがな・・・、近所のホテルでいいな。」
「はい、念のため!お願いします。」
デビッドは署に戻り、セシル、ユジンとチャックは近くの安ホテルに移動した。
ホテルでチャックから、30年前の異種格闘技戦の経緯や、当時のLAの中華街の状況を聞いた。
LAでは古くからの「チャイナタウン」と旧街の東に新しくできた「華人区」に別れ、旧街は高齢者とベトナム、カンボジアからの移民が中心となり廃れていき、若い人は新街に移り住むようになったとの事だった。
「1970年代から80年代にかけてブルース・リーやジャッキー・チェンといったような、カンフー映画がアメリカでも人気が出て、東洋武術が一時期取り上げられることがあった。
旧街の中に、いくつかの武術道場があったような気がする。しかし、東洋武術、それも中国拳法となると、無敵なのは映画の中だけで、格闘技としてはどうかな?って俺たちレスラーは思ってたなぁ。ロスの街自体が再開発でどんどん新しくなっていく中、チャイナタウンの旧街が廃れていき、そこに住んでた人たちは、大変な思いもしていたんだと思う。」
とチャックは遠い目をしてゆっくりと語った。
「メジャー団体に移ってから全国巡業で全国のチャイナタウンを見てきたが、LAのチャイナタウンはサンフランシスコやニューヨークと比べると相当「廃れていること」を知ったんだ。」とも話していた。
80年代後半から、総合格闘技ブームが世界的に広まり、「本当の世界最強の格闘技はなんだ?」との話題で、スポーツチャンネルでの格闘技番組が乱立する中、旧来武術である「拳法」の立ち位置は相対的に低下していったという。その中でプロレスは一定の人気を保っていた。
「当時のLAのケーブルテレビでも格闘技系のスポーツチャンネルがあって、チャイナタウンにあった拳法道場の師範であったチャン・リーって言ったっけ?そいつをテレビ局とプロモーターがあおって、異種格闘技戦の出場へ繋がったって事だったのかなあ?」
とチャックはセシルとユジンに説明した。セシルとユジンは、黙ってチャックの話を聞くだけだった。
チャックの店に戻り、3人で奥の席を貸し切ってもらい、これまでの話の経緯を改めて、セシルがチャックに説明した。チャックが過去の記憶を掘り起こしながらゆっくりと思い出したことを述べていった。
「あぁ、思い出したぜ。LAのチャイナタウンで世界最強をほざいてた、中国人の拳法家とそういえば・・・30年ほど前に異種格闘技戦やったなぁ。
その時のテレビ屋がジョージ・ウエルチか。そんな名前だったかな?めちゃめちゃ白人至上主義の偏ったやつだったかなぁ。それっきりだったんで俺の記憶はねえが、当時の俺のタッグの相棒がプエルトリコ系だったんだが、テレビ屋のこと、えらく毛嫌いしてた記憶があるなぁ。
対戦相手の拳法家のことは全然覚えてねぇ。60分枠取ってたのに、最初の5分くらいだったかなぁ、おれのジャンピングニーパットか軽いドロップキックで伸びちまって、残り時間困っちまった記憶がかすかにあるくらいだな・・・。あつ、その時のセコンドに、目つきの悪い、東洋武術の道着を着た3人の小僧がいたかな・・・。
だめだ、よく思い出せないわ・・・。いずれにしたって、そいつも俺とそう年は変わらんだろうから、もう80前後のじじいだぜ。そんなやつに、こんな派手な殺人事件ができるか?」
セシルがメモを読み返しながら、一つの事に気が付いた。
「ちょっと、チャックさん、その時のセコンドに子供が3人いたんですね?」
「さっきも言ったけど記憶は曖昧だぜ。たぶん・・・。あくまでたぶんだ!俺のファイトの中では、本当にその試合は印象が薄いんだわ。」
プルルルル。セシルのスマホが鳴った。発信元はデイリーLAのデスクの携帯からだった。
「はいもしもし、何かわかりましたか?」
「おう、30年前にチャックとやった中国人拳法家は、LAの旧チャイナタウンで拳法道場やってたチャン・リーってやつだったんだが、異種格闘技戦の後、廃業して自殺してしまってるなぁ。30年前にもう死んじまってるぜ。」
デスクは分かったことだけを手短にセシルに伝えた。
「デスク!チャン・リーに子供はいましたか?男の子で3人!」
「そこまでは、わかんねぇ。ただ、4人の共通点ははっきりとした。残された4枚の絵の話も、うちのチャイナ系詳しい奴に聞いたら、お前の友達のユジンさんと同じ解釈だった。犯人はその息子かまではわからんが、中国人拳法家が絡んでることは、間違いなさそうだな。今日は帰ってこなくていいから、チャックさんについて特ダネ掴んで来い!じゃあな。」
とデスクはセシルとの会話を打ち切り、電話を切った。
セシルは電話をポケットにしまうとチャックとデビッド、ユジンの3人に向かって言った。
「周りで、聞こえていたと思いますが、チャン・リーっていうチャックさんが倒した拳法家は自殺しています。子供の存在ははっきりしていませんが、チャックさんのかすかな記憶とデビッドからの情報とユジンの判断からすると、チャン・リーの息子3人が係わってきている可能性があります。
念のため、今日一日は、チャックさんには迷惑でしょうけど、私とユジンがボディーガード代わりについていていいですね。なんといっても、相手は、動けない被害者を水に沈め、バーナーで焼き、何やらの器具で無残に引き裂き、鋭利な刃物で首を落とすような奴ですから・・・。」
「おいおい、あんまり脅すなよ。今晩はお前らと一緒にホテルにでも泊まろう。男3人って侘しいがな・・・、近所のホテルでいいな。」
「はい、念のため!お願いします。」
デビッドは署に戻り、セシル、ユジンとチャックは近くの安ホテルに移動した。
ホテルでチャックから、30年前の異種格闘技戦の経緯や、当時のLAの中華街の状況を聞いた。
LAでは古くからの「チャイナタウン」と旧街の東に新しくできた「華人区」に別れ、旧街は高齢者とベトナム、カンボジアからの移民が中心となり廃れていき、若い人は新街に移り住むようになったとの事だった。
「1970年代から80年代にかけてブルース・リーやジャッキー・チェンといったような、カンフー映画がアメリカでも人気が出て、東洋武術が一時期取り上げられることがあった。
旧街の中に、いくつかの武術道場があったような気がする。しかし、東洋武術、それも中国拳法となると、無敵なのは映画の中だけで、格闘技としてはどうかな?って俺たちレスラーは思ってたなぁ。ロスの街自体が再開発でどんどん新しくなっていく中、チャイナタウンの旧街が廃れていき、そこに住んでた人たちは、大変な思いもしていたんだと思う。」
とチャックは遠い目をしてゆっくりと語った。
「メジャー団体に移ってから全国巡業で全国のチャイナタウンを見てきたが、LAのチャイナタウンはサンフランシスコやニューヨークと比べると相当「廃れていること」を知ったんだ。」とも話していた。
80年代後半から、総合格闘技ブームが世界的に広まり、「本当の世界最強の格闘技はなんだ?」との話題で、スポーツチャンネルでの格闘技番組が乱立する中、旧来武術である「拳法」の立ち位置は相対的に低下していったという。その中でプロレスは一定の人気を保っていた。
「当時のLAのケーブルテレビでも格闘技系のスポーツチャンネルがあって、チャイナタウンにあった拳法道場の師範であったチャン・リーって言ったっけ?そいつをテレビ局とプロモーターがあおって、異種格闘技戦の出場へ繋がったって事だったのかなあ?」
とチャックはセシルとユジンに説明した。セシルとユジンは、黙ってチャックの話を聞くだけだった。
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