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1章 平民の意地
第11話
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~決闘前日~
とりあえず今日まで魔力操作と物を直に触ってイメージする力を上げる練習しかしてないけどいいのかな?
「いいのよ別に。詠唱なんて必要ないでしょ?」
「必要ないのはヘイヤルさんだけじゃないんですか」
「誰でも出来るようになるってば」
理論は教わったけど、それが実現出来るかどうかは別問題。
あ、なんだか明日の決闘すごい不安になってきた。
「じゃあ験しにやってみましょうか」
確かにぶっつけ本番よりもマシだ。
うん。やってみるかな。
まずは普通に詠唱ありでの魔法を使うかな。
ここが書店であることを考慮すると使える魔法は限られる。
「【闇の精霊に我が意を伝える。周囲に闇をばら撒き視界を封じろ】」
指先からでた黒い靄がヘイヤルさんの目元に向けて蠢き名がら接近していく。
笑みを絶やさぬまま腕を一振りすると、あっという間に靄は霧散し、逆に強い光で僕の視界が真っ白になる。
眩んだ目を抑えながらうずくまる僕に、ヘイヤルさんのまだまだね~というのんきな声が耳に届く。
正直それに反応している余裕がない。
目が痛い、痛すぎる。
「目がチカチカする」
「魔法の試し撃ちで周囲に害のないものを選んだものは評価するけど、まだまだ甘いところがたくさんあるわね~。魔力効率も凄く悪いし、要練習ね」
・・・練習も何も決闘は明日なんだけど。
「はいはい、そんな不満そうな顔をしないの。次は詠唱を口にせずにやってみてはどうかしら?これが詠唱破棄のちょうどいい練習になるわ。それに、相手に詠唱を聞かれないから対策を取られにくいの」
「わかりました、やってみます」
頭の中で詠唱を・・・。
先ほどと同じ魔法の詠唱を頭の中で行うと、ごっそりと魔力が持ってかれる感覚に気分が悪くなっていく。
そうして得た成果は、指先からうっすらと黒い何かが飛び出してすぐに消え去ってしまい、膝をついて息が荒くなる。
「これ、すごい疲れます」
「あー、やっぱりこうなったのね。イメージをちゃんと出来てないから魔力を無駄に持ってかれてる上に効力が下がっているみたい」
「これも練習しだいでどうにかなりますか?」
「練習というよりイメージの問題かしら。今日はもう魔力を使う練習は控えなさい。明日に響くわ。それよりもイメージの力をつけるために色々触ってみたりしてみましょう」
ヘイヤルさんがポンッと軽く手を合わせた直後、ドサドサと武器とか防具とかその他色々な物が目の前に高く詰まれた。
「ロゴシュ君のお母さんからは外泊許可を取ってあるわ。さあ、イメージ力を強化しましょう」
このときばかりは、僕の目に映るヘイヤルさんの笑顔が悪魔の微笑みに見えた。
~決闘当日~
日の光が眩しい。
不思議なほどスッキリとした頭で昨日の惨事を思い出す。いや、思い出すまでもない、つい先ほどまでそれにつき合わされていたんだから。
完全に徹夜ですはい。
流石にまずいと思ったのか、ヘイヤルさんが体調を万全にする魔法――――後に反動で凄いことになるそうです――――をかけてもらった。
決闘の後が不安になる。
「ねえ、フラフラしてるけど大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよクロイツ様。ほら、顔色いいでしょ」
「確かに顔色はいいですわね」
学園にある訓練用の道具が置いてある場所が控室として割り当てられた。
その部屋の中には僕のほかになぜかクロイツ様がいる。
対戦相手のアベルは今頃綺麗な部屋で優雅に過ごしてるんだろうな。
あ、なんだか腹立ってきた。この腹立ちは絶対に叩き付けてやる!
「・・・て・・・・・・」
そのためには今からどんな魔法を叩き込むかを考えなければ。幸いイメージに使えそうなものがここにはあるから時間も潰せる。
「・・・て・・・の・・・すか!」
この盾と剣なんかいいんじゃないかな。両方を一度に出すことができれば戦力の幅が広がるんじゃないだろうか。
ふふふ、首を洗って待っていろ。
「いい加減に反応しなさい!」
パシーンといい音と共に頬に痛みが走り、地面に倒れこむ。
何々?何があったの?
顔を上げると若干涙目になってしまっているクロイツ様の姿が・・・やべえ、これ決闘の前に打ち首になるんじゃない?
「先ほどから!何度も!呼んでいたじゃない!」
叫ぶような声と共に何度も何度も頬を張られてしまう。
うん。確かに話を無視したのは悪いとは思ってるけど、こんなに叩かなくてもいいんじゃないかと思うんだが。
「ロゴシュ、時間だぞ・・・クロイツ様、それ以上はお止めになったほうがいいかと」
「ロゴシュ、あなたに後で話があります。たとえボロクソに負けても必ず顔を出しなさい」
そう言うと背を向けて部屋から出て行ってしまう。
・・・僕も行くかな。
「すいません。案内をお願いしてもいいですか?」
「お、おう。もう時間がないから急げ」
案内役の人間の後についていくと、一番広い訓練場にたどり着いた。
見学スペースはもうすでに埋まっており観客がたくさんいる。
少し緊張してきたなー。
まあ、なるようになるよね。
とりあえず今日まで魔力操作と物を直に触ってイメージする力を上げる練習しかしてないけどいいのかな?
「いいのよ別に。詠唱なんて必要ないでしょ?」
「必要ないのはヘイヤルさんだけじゃないんですか」
「誰でも出来るようになるってば」
理論は教わったけど、それが実現出来るかどうかは別問題。
あ、なんだか明日の決闘すごい不安になってきた。
「じゃあ験しにやってみましょうか」
確かにぶっつけ本番よりもマシだ。
うん。やってみるかな。
まずは普通に詠唱ありでの魔法を使うかな。
ここが書店であることを考慮すると使える魔法は限られる。
「【闇の精霊に我が意を伝える。周囲に闇をばら撒き視界を封じろ】」
指先からでた黒い靄がヘイヤルさんの目元に向けて蠢き名がら接近していく。
笑みを絶やさぬまま腕を一振りすると、あっという間に靄は霧散し、逆に強い光で僕の視界が真っ白になる。
眩んだ目を抑えながらうずくまる僕に、ヘイヤルさんのまだまだね~というのんきな声が耳に届く。
正直それに反応している余裕がない。
目が痛い、痛すぎる。
「目がチカチカする」
「魔法の試し撃ちで周囲に害のないものを選んだものは評価するけど、まだまだ甘いところがたくさんあるわね~。魔力効率も凄く悪いし、要練習ね」
・・・練習も何も決闘は明日なんだけど。
「はいはい、そんな不満そうな顔をしないの。次は詠唱を口にせずにやってみてはどうかしら?これが詠唱破棄のちょうどいい練習になるわ。それに、相手に詠唱を聞かれないから対策を取られにくいの」
「わかりました、やってみます」
頭の中で詠唱を・・・。
先ほどと同じ魔法の詠唱を頭の中で行うと、ごっそりと魔力が持ってかれる感覚に気分が悪くなっていく。
そうして得た成果は、指先からうっすらと黒い何かが飛び出してすぐに消え去ってしまい、膝をついて息が荒くなる。
「これ、すごい疲れます」
「あー、やっぱりこうなったのね。イメージをちゃんと出来てないから魔力を無駄に持ってかれてる上に効力が下がっているみたい」
「これも練習しだいでどうにかなりますか?」
「練習というよりイメージの問題かしら。今日はもう魔力を使う練習は控えなさい。明日に響くわ。それよりもイメージの力をつけるために色々触ってみたりしてみましょう」
ヘイヤルさんがポンッと軽く手を合わせた直後、ドサドサと武器とか防具とかその他色々な物が目の前に高く詰まれた。
「ロゴシュ君のお母さんからは外泊許可を取ってあるわ。さあ、イメージ力を強化しましょう」
このときばかりは、僕の目に映るヘイヤルさんの笑顔が悪魔の微笑みに見えた。
~決闘当日~
日の光が眩しい。
不思議なほどスッキリとした頭で昨日の惨事を思い出す。いや、思い出すまでもない、つい先ほどまでそれにつき合わされていたんだから。
完全に徹夜ですはい。
流石にまずいと思ったのか、ヘイヤルさんが体調を万全にする魔法――――後に反動で凄いことになるそうです――――をかけてもらった。
決闘の後が不安になる。
「ねえ、フラフラしてるけど大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよクロイツ様。ほら、顔色いいでしょ」
「確かに顔色はいいですわね」
学園にある訓練用の道具が置いてある場所が控室として割り当てられた。
その部屋の中には僕のほかになぜかクロイツ様がいる。
対戦相手のアベルは今頃綺麗な部屋で優雅に過ごしてるんだろうな。
あ、なんだか腹立ってきた。この腹立ちは絶対に叩き付けてやる!
「・・・て・・・・・・」
そのためには今からどんな魔法を叩き込むかを考えなければ。幸いイメージに使えそうなものがここにはあるから時間も潰せる。
「・・・て・・・の・・・すか!」
この盾と剣なんかいいんじゃないかな。両方を一度に出すことができれば戦力の幅が広がるんじゃないだろうか。
ふふふ、首を洗って待っていろ。
「いい加減に反応しなさい!」
パシーンといい音と共に頬に痛みが走り、地面に倒れこむ。
何々?何があったの?
顔を上げると若干涙目になってしまっているクロイツ様の姿が・・・やべえ、これ決闘の前に打ち首になるんじゃない?
「先ほどから!何度も!呼んでいたじゃない!」
叫ぶような声と共に何度も何度も頬を張られてしまう。
うん。確かに話を無視したのは悪いとは思ってるけど、こんなに叩かなくてもいいんじゃないかと思うんだが。
「ロゴシュ、時間だぞ・・・クロイツ様、それ以上はお止めになったほうがいいかと」
「ロゴシュ、あなたに後で話があります。たとえボロクソに負けても必ず顔を出しなさい」
そう言うと背を向けて部屋から出て行ってしまう。
・・・僕も行くかな。
「すいません。案内をお願いしてもいいですか?」
「お、おう。もう時間がないから急げ」
案内役の人間の後についていくと、一番広い訓練場にたどり着いた。
見学スペースはもうすでに埋まっており観客がたくさんいる。
少し緊張してきたなー。
まあ、なるようになるよね。
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