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四章 二体目ですよ

七十七話

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「二体目ですよ」


 俺はペンダントを持ち上げて、川上先輩達に言った。

 今日は文化祭に展示するジオラマのベースを作る為、みんな制服を脱いでシャツだけで作業することになっていた。

 その時に、魔力が強いペンダントに川上先輩が興味を持ったんだ。


「二体目って従魔の?」
「そうです。その依代になってるんです。ほら、リューガ、出ておいで」


 呼び掛けると、ペンダントトップが淡く光り、竜牙童子が姿を現した。

 竜牙童子はリューガと名付けた。そのまんまだけど、この世界には同種のエネミーは発見されていないので、間違えることはないかと思ったんだ。

 名前考えるの難しい。


「お呼びですか、ご主人様」


 ペコリと頭を下げるリューガ。

 そして、どよめくギャラリー。

 なかなか人の言葉をしゃべるエネミーはいないから、驚くのも無理はないよね。


「部活の先輩達に紹介しようと思ってね。ほら、挨拶して」


 リューガは皆の方を向いて、ペコリと頭を下げる。


「はじめまして、リューガと申します。以後、お見知りおきください」


 リューガは割りと古風な言い回しをするけど、なんとなく舌足らずなので可愛いが勝ってしまうな。

 親戚の子供みたいな感覚だ。


「はじめまして、川上です。よろしくね」
「金屋だ。よろしく」
「吉根っス。オレは小幡とパーティー組んでるから、一緒にダンジョン探索する事もあるかもしれないっスね」


 それぞれ名乗り、握手していく。みんな顔がにこやかだし、ちゃんと受け入れられてるようで良かった。

 ツクモと違ってリューガは俺以外にも友好的だから、すぐにみんなと馴染めそうだな。


「でもよ、こんなにちっこくてダンジョン探索の役には立つのか?」


 金屋先輩はリューガを侮るというよりも、心配するように聞いてきた。

 まあ、リューガのステータスを知らなければ心配にもなるだろう。なにせ幼稚園児くらいの大きさしかないからね。

 それに、基本的に従魔になるエネミーは、テイマーよりも弱いから余計にそう思うんだろう。


「大丈夫ですよ。そんなに無理しないですし。それに、合同での実習には出さないつもりですからね」
「そうなのか?」
「ええ、リューガまで一緒だと、メンバー多すぎてボス部屋に入れなくなっちゃいますからね」
「それもそうか。6人までしか入れないんだったな」


 依代の中にいれば、人数としてカウントされないのは確認済みだ。

 その辺は自身もテイムスキルを持っている大屋敷先生が詳しいから、療養中にちゃんと聞いておいたんだ。

 ちなみに大屋敷先生も数体の従魔を従えている。その従魔達は先生が空間魔法で創った亜空間に控えているらしい。

 今度、俺もその魔法を教えてもらう事になっているんだ。


「え、リューガ君は一緒に探索しないっスか?」
「そうだよ。基本的に実習の時はツクモと一緒だ」
「ちぅ」


 当たり前だろと冷めた目で見るツクモ。本当に俺以外には塩対応だな。そこがまた可愛いんだけどね。


「まぁ、機会があればリューガも出すから、そうがっかりしなくても良いよ」
「その時はよろしくお願いいたします」
「こちらこそっス」


 その機会は前衛が一人抜けた時になるんだろうけどね。
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