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四章 二体目ですよ

五十六話

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「そこ、罠があるね」


 色の違う床を棒で思いっきり叩くと、床板が外れ、落とし穴が現れる。

 深さは膝くらい。落ちたところでそれほどのダメージは受けないだろうけど、戦闘中だったら話は別だね。致命的な隙になりかねない。


「気を付けてきて」
「了解っス」


 落とし穴の幅は50cmくらい。軽く跨げるくらいだ。

 運動神経に難ありの泉ヶ丘さんも含め、みんな苦もなく越える事が出来た。


「そういえば、その棒もトラップの仕掛けの一部だったんスよね」
「そうだよ。壁から凄い勢いで出てきたんだ」


 中間テストの事を思い出した。あの時は罠だらけでうんざりしたもんだ。


「やべぇな、そりゃ」
「え、大丈夫だったの?」
「大丈夫大丈夫。ちょっと解除するのが難しかったから、わざと発動させただけだから」


 天子田さんが少し心配そうな顔をするから、わざと明るく問題無いって言っておいた。

 実際、仕掛けが壁の中にあると、高レベルのスキルじゃなきゃ解除は難しいから、安全さえ確保出来るなら、作動させた方が楽だからね。

 まぁ、ガスが噴き出すような罠なら話は違ってくるけどさ。


「おっと、エネミーだ。あれは………ゴブリンだな」


 通路の奥の方に緑色の肌をしたヒト型のエネミーがいた。丸まった背中に、腰ミノだけの服装、手には棍棒を持っている。

 それが三体ほどたむろっている。その奥は行き止まりになっていて、扉が見える。


「三体っスか」
「そうだね。棍棒で武装しているみたいだ」
「ゴブリンなら楽勝だな」


 戦闘実習は人工ダンジョンで行っているらしいけど、そこでよく相手として現れるのがゴブリンらしい。


「ただ、あそこの手前に通路があるから、そこまでは慎重に行こう。下手すると挟み撃ちに遇う」
「了解っス」


 ゴブリンは眼が悪いようで、まだこっちに気付いてないようだ。音を立てないように慎重に近付いていく。

 途中の道もエネミーがいないかチェックをする。見える範囲にはいなかった。


「よし」


 俺が合図をすると、吉根達が飛び出した。そこまでいくと、流石にゴブリン達も俺達の接近に気付く。


「ギャギャッ!」
「遅いっスよ」


 喚くゴブリンを一刀のもとに斬り伏せる吉根。次いで市場君が胴を薙ぎ払いゴブリンを魔石に変える。


「このっ!」


 最後の一体が泉ヶ丘さんに向かうのを察知した市場君が即座に追い付き叩き切る。

 三体のゴブリンは瞬く間に全て魔石になってしまった。


「ふぅー。やっぱりゴブリンは数がいなけりゃ楽勝っスね」
「確かに。数がまとまるとめんどくさいけどな」
「あいつら臭いから嫌い」


 泉ヶ丘さんの言う通り、そこはかとなく臭う気がするな。

 天子田さんもこっそりハンカチで鼻を覆っている。魔石を受け取る時もなんとなく嫌そうな顔をしている。


「扉があるけどどうする?」


 ツクモに【風壁】を弱めにかけてもらって臭いを散らしながら、これからどうするか聞く。

 開けるのならまた俺の出番だ。罠と鍵のチェックをしなきゃいけない。


「見ておいた方が良いっスよね」
「そうだな。中にエネミーがいたら背後から襲われるかもしれんし」


 二人とも扉を開けるべきと主張する。泉ヶ丘さんも無言で頷いている。

 天子田さんも反対しないと言うので、俺は早速扉のチェックを行った。


「罠無し。鍵もかかってないよ。開けるね」
「了解っス」
「おう。頼んだ」


 扉を開けると、そこには何もない小部屋だった。

 宝箱があるかもとちょっと期待してたから、残念な気持ちになったな。それは皆も同じだったみたいで、微妙な顔をしていた。

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