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四章 二体目ですよ

五十五話

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「じゃじゃん。オレのニューソード!」
「もう分かったから。そんなにはしゃがなくて良いから」


 新しい剣を手に入れてニッコニコの吉根。何回も鞘から抜いて悦に入っている。

 剣は大蛇剣で買取り価格は五万円。これといった特殊効果は無いようだ。

 ここはダンジョンの二階層の前の小部屋だ。今日は二階層を探索してみようという話しになっている。


「これ、本当にオレが使って良いんだな?」
「市場君はうちのダメージディーラーだからね。強化してもらわないと逆に困るよ。それにお金ももうもらっちゃったしね」


 角大蛇の宝箱から出てきた水晶珠は、【電撃】のスキル珠だった。

 これは攻撃に雷属性の追加ダメージが付くみたいだ。たまに麻痺も与えるらしいから、随分と優秀なスキルだ。


「リク、どう?」


 スキル珠を使い、確かめるように戦斧を振る市場君に泉ヶ丘さんが声をかける。


「ん~、よく分からないな。ちょっと試し斬りがしたい」
「試し斬りっスか?オレもしたいっス」


 本格的に使う前に、使用感を試したいらしい。


「どうする?一階層の入り口まで戻る?」
「今さらあの辺りのエネミー斬っても一撃だからなぁ」
「じゃあ、イグアーノやるっスか?」
「そうだな」
「山道は、イヤ」
「そ、そうだな」


 どこで試し斬りをするかで意見が別れる。多分、少し戻ってイグアーノが一番良いんだろうけど、それは泉ヶ丘さんが強硬に拒否。

 実際、終盤の山道は本当にしんどいからね。

 十分くらい話し合った結果、このまま進むことになった。


「じゃ、ここから俺が先頭に行くね」
「了解っス」
「頼んだ」


 二階層は一階層と違い、高さと幅が3mの通路が続く迷路になっている。所々に罠も設置されているらしいから、斥候である俺が先頭を歩く。

 後は吉根と天子田さん、市場君と泉ヶ丘さんの順で二列縦隊で進む。


「ここのもう一本先を右に曲がったところにエネミーの気配がするけど、どうする?」
「行こう」


 いくつか四つ角が連なっている通路を真っ直ぐ歩いてきたが、やっとエネミーの気配を捉える事が出来た。

 すぐに曲がればエネミーを回避する事も出来るから、どうするか聞いたら前衛二人はやる気満々だった。


「じゃあ、ここでちょっと待ってて」
「了解っス」


 四人を置いて、偵察に走る。エネミーの目の前で罠にかかるわけにもいかないから、入念にチェックしながら進む。

 問題の曲がり角までくると、そっとエネミーの気配がする方を覗く。

 3mくらい離れた場所に、イグアーノがいた。ちょうど二体いたので、吉根と市場君が一体ずつ戦えるな。


「イグアーノ二体いた」


 戻って報告すると、前衛二人は嬉しそうに走っていく。

 俺も警戒を続けながら残りの二人と一緒に後を追う。


「【鋭斬】っス!」


 一足早くエネミーの元にたどり着いた吉根が、サイドに回りながらスキルを放つ。イグアーノの首はあっさり切り離されて、宙を飛んだ。


「うおぉっ!【電撃】!」


 市場君は正面から戦斧を振り下ろす。当たった瞬間、バチンと音がしたのが追加ダメージってやつなのだろう。こちらも一撃で魔石に変わった。

 エネミーの駆除を終えた二人が戻ってくる。


「これ良いっスね。随分と切れ味が良いっス」
「オレの方は今のところちょっと微妙だな。MPが【強撃】より食うけど、威力はそこまで変わらん気がする。熟練度が上がれば変わるかもしれんがな」


 【電撃】の追加ダメージは強めの静電気程度らしい。市場君の言う通り、今のままの威力だと微妙な感じだね。


「これでだいたいの所は掴めたし、今日はこの辺りを回ってみるっス」
「了解」
「おう」
「ん」
「はい」


 試し斬りが終わった俺達は、入り口を中心に二階層を巡り始めるのだった。
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