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四章 二体目ですよ

五十話

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 第一層最後は山岳ゾーンだ。

 木々は少し疎らになり、所々で赤茶けた地面がむきだしになっている。

 そこをでかい蜥蜴がノッシノッシと歩いている。でかい蜥蜴はイグアーノというエネミーだ。

 スピード鈍いが、攻撃力と防御力は高い。そして、鈍いと思って油断していると、噛みつく動作だけは速くてめちゃくちゃビビらされる。

 油断してた吉根が一回足を噛みつかれてそれなりのダメージを受けていた。そのまま振り回されそうになったところを、市場君が【強撃】でカット。

 イグアーノの強力な顎から逃れた吉根がすぐさま立ち上がり、反撃を加えていく。最終的にはみんなで総攻撃をかけてようやく倒す事に成功した。

 複数が相手だったら危ないところだったな。


「びっくりしたぁ。HPの四分の一くらい一気に持ってかれたっス」
「攻撃のモーションだけあんな速いんだな」
「ツクモ、回復を」
「ちぅ」


 ツクモに【癒しのそよ風】を使ってもらって、吉根のHPを回復する。防御力がうちのパーティーで一番ある吉根がこれだけのダメージをくらうんだから、俺達はもっと注意しないとな。

 こんなのツクモが受けたら一発でHP全損しちゃうよ。


「ありがとうっス。ツクモちゃん回復魔法も使えるんスね」
「ああ、この前覚えたんだ。優秀だろ?」
「ちぅ!」
「ホント、優秀っス」


 褒められて胸を張るツクモ。相変わらず何処でこんな仕草を覚えてくるのか謎だけど、可愛いからヨシ。


「あたしも回復覚えれるよう頑張る」
「頑張れ。でも、あんまり無理しなくて良いからな」


 そして、隙あらばいちゃつきだすカップルども。ここはダンジョンですよ?


「はいはい、ここはダンジョンっスよ。イチャイチャするのは地上に出てからにするっス」
「な、イチャイチャなんてしてないだろ!?」
「反省。自重する」
「な!?み、ミキ!?」


 どうやら現状把握能力は泉ヶ丘さんの方が上みたいだな。

 おっと、天子田さんが羨ましそうに見てるな。恋愛したいお年頃か。それとも彼氏とダンジョン探索したいのかも?

 ダンジョンはデートスポットじゃありませんよ。


「さて、そろそろ進むっスよ」
「お、おう!」


 パンパンと手を叩いて先を促す吉根。ハッとした顔をして隊列に戻る市場君。

 隊列は吉根、市場君、泉ヶ丘さん、天子田さんの順番で、俺とツクモが偵察したりする遊撃って感じだ。

 この辺りは森ゾーンとは違って見通しは効くので、奇襲は受けないだろうとこの配置にした。

 不都合があれば順次変えていこうとは話し合っている。


「あ、あそこの繁みにブッシュスネークがいるな」
「了解っス」


 前方にある繁みに【魔物感知】の反応があった。目を凝らしてみるとブッシュスネークがいるのが見えた。緑色が保護色になってるから分かりづらいけど、何かがいるって分かっていれば見えるもんだな。

 盾を構えて慎重に近付く吉根。他のメンバーはすぐにバックアップに入れるように警戒している。

 ブッシュスネークは吉根の喉を狙ってジャンプしたところを盾で叩き落とされて、ロングソードで止め。

 たまにいる茶色いヤツは毒袋を落とす事もあるから、毒攻撃に気を付けなきゃいけないけどね。コイツは無毒だ。

 それでも気付かず攻撃を受けるのはまずいから、索敵だけは気を付けなきゃな。
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