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四章 二体目ですよ

四十四話

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「そう言えば、戦闘科の6人が入院だって?」


 放課後、部室で雑談している時に、ふと今朝の話題を思い出して、吉根に聞いてみた。


「そうそう。八剣達っスね。オレらと別れた後、ブラックハウンドに噛みつかれて引きずり回されたやしいっスよ」
「うわぁ」


 川上先輩が惨状を聞いて顔をしかめる。俺もひょっとしたら自分たちも同じ目にあったかもしれないと、背筋がゾワッとした。


「そうか、やっぱりあの後にやられたんだ」
「あいつらバカなんスよ。斥候も荷物係も無駄だって言ってたっスからね。警戒もせずにどんどん進んでカブリって感じっス」

 あの犬の集団は気配消すの上手かったからな。後ろから襲われたら一溜りもないな。


「あ~、毎年いるわそういうヤツ。去年もいたな、合同実習の時にマサシに絡んでたヤツ」
「いたねぇ」


 川上先輩が遠い目をしてる。何があったんだ?気になったのは吉根も同じだったみたいだ。


「何があったんス?」
「いや、マサシは昔からモテるんだけどな」
「そんな事はないよ」


 否定してはいるけど、確かに川上先輩は成績も良いし、性格も穏やかで落ち着いた雰囲気だ。おまけに顔も整っているのでモテるのは分かる。

 浮いた話は聞いた事ないけどね。

 だけど、それがなんの関係があるんだろ?


「それがさ、戦闘科でちょっとイキってたヤツがいたんだわ。そいつには好きな女子がいたんだけどよ」
「ほうほう」
「ある日そいつがその女子に告ったんだよ」


 川上先輩が「もういいだろ」って言うのを手で制して、金屋先輩は楽しそうに話を続ける。


「そしたらよ。その女子が『アタシは川上君が好きだからごめんなさい』って言ってフッたんだ」
「先輩モテモテじゃないっスか!?」
「そうなんだよ。そしたらよ、そのイキったヤツが事あるごとにマサシに突っかかるようになったんだよ。完全な八つ当たりだな」


 うわぁ、めんどくさいヤツだ。


「そりゃあ、そんな性格ならフラれても仕方ないっスね」
「だろ?だけどよ、それだけで済んだら良かったんだけどよ。何て言うのか坊主憎けりゃなんとやらって具合で、支援科や全然関係無い斥候科の事までグチグチ悪く言いだしたんだよ」
「そんなヤツいるんですね」
「いたんだよ」
「それでどうなったんっスか?」
「どうにもなってないさ。今も戦闘科三人だけで実習に出てる」
「えっ!?三人だけっスか!?」
「あぁ、三人だけだ」


 完全に斥候と支援抜きなんだ。行けるもんなんだな。


「そいつら割と良いジョブだから、学年末までに第一ダンジョンもちゃんとクリアしたみたいだぜ。苦労はしてるみたいだけどな」


 なんでも荷物係がいないから、持っていく荷物は最低限で、エネミーを倒した後にドロップアイテムを拾うのも、魔石の他は最低限にしているそうだ。

 鞄なんかは戦闘中は下ろすから、下手したらその度に荷物がエネミーに踏み荒らされてぐちゃぐちゃになるそうだ。

 ただ、流石に警戒する事は覚えたらしく、奇襲を受けることは減ったらしい。

 それから、宝箱に関しては罠を発動させることを織り込んで開けるらしい。まあ、第一ダンジョンはそこまで凶悪な罠は仕掛けられていないから、それもアリなんだろうな。

 HPを全損させると保健室に転移させられるんだけど、彼らはそこの常連なんだとか。


「逆に面白そうっスね」
「やってみたくはないけどね」
「まったくだ」


 ダンジョン探索は安全第一だな。俺も下手な意地を張るのは止めておこう。


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