上 下
25 / 91
三章 平和って良いですね

二十五話

しおりを挟む
「お待たせ」
「遅かったっスね」
「もうちょっとで探しに行こうかと話してたところだぞ」
「ゴメンゴメン。思ったより手間取っちゃってさ」


 合流を果たした俺は、この先の状況を説明する。


「ここから先に1㎞くらい進んだところから、木が多くなって森みたいになっていた。そこまではエネミーの種類や出現頻度は変わらない感じだったな」


 チェックポイントを回る実習でもらった地図に、手書きで現在の休憩場所とこの先の状況を書き込みながら話をする。

 森に関しては外から見た植生の変化や、入ろうとしただけで【危険察知】が反応したことなどをかいつまんで話す。


「その森ゾーンはそんなにヤバそうっスか?」
「正直、中がどうなっているのかは分からないけど、とりあえず俺は一人で入るのは避けたいな」
「全員でいけばなんとかなるかもしれないって事か?」


 市場君が少し強気な意見を言う。

 俺は少し考えて、正直に「分からない」と答える。それを聞いて、吉根は少し悩む素振りを見せたけど、すぐに意見を表明した。


「今日はまだ初日なんで安全策で行こうかと思うっス。ここらでレベル上げするっス」
「分かった。安全第一」
「そう、だな。うん、焦る必要はないな」
「はい」
「分かった。それでいこう」


 リーダーである吉根が指針を決めると、他のメンバーもそれに同意する。

 ただ、市場君はちょっと思うところがありそうだ。だけど、決定に逆らうでもなく頷いている。


「あ、天子田さん、これもお願い。これは後で買い取るから、それも悪いけど覚えておいて欲しい」
「魔石ね。分かった。分けてしまっておくね」


 休憩の後片づけをしている天子田さんに、さっきドロップした魔石を渡す。

 パーティーでドロップしたアイテムの管理は天子田さんに一任しているからだ。荷物持ちポーターの重要な役割の一つだね。

 今のところ必要無いけど、アイテムを使った援護や回復も荷物持ちが要になったりする。


「あ、そうそう。一個ブッシュスネークの魔石をツクモに上げちゃったから、それもつけておいてね」
「ツクモちゃんにあげたって?」
「あぁ、従魔は魔力の補充の為に魔石を食べるらしいんだよ。それで試しに食べさせたんだ」
「そうなんだね、ツクモちゃんって魔石食べるんだ。なんか可愛いね」


 可愛いポイントが何処にあったか分からないな。天子田さんが独特なのか、女子全体の感性なのか、人類共通で俺だけ違うのか………。

 俺だけ違ってたんなら恥ずかしいから、適当に愛想笑いして誤魔化しておいた。

 片付けを終えて出発をする。とりあえず目的地は無く、ここを起点にぐるぐると歩いてエネミーを駆除していこうという話になった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました! 1巻 2020年9月20日〜 2巻 2021年10月20日〜 3巻 2022年6月22日〜 これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます! 発売日に関しましては9月下旬頃になります。 題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。 旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~ なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。 ────────────────────────────  主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。  とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。  これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。 ※カクヨム、なろうでも投稿しています。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

異世界召喚されたのは、『元』勇者です

ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。 それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。

処理中です...