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三章 平和って良いですね
十八話
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午後の授業は魔法概論だ。
俺自身は今のところ魔法は使えないけど、敵や味方が使うからある程度理解しておかなければいけない。
「じゃあ、前回の続きだな。ダンジョンが発見された当初、それまで俗説や迷信なんていわれていた隠秘学を再編しようという動きがあった。これを第一次隠秘学運動と言って………」
魔法概論の先生は大屋敷という女性の教師だ。
見た目は20代半ばに見えるけど、噂ではダンジョンが初めて出現した頃から冒険者として活躍していたらしい。
そうだとしたら、既に60歳は越えてるよな。下手したら70歳以上だ。
高レベルの魔力が高い冒険者は老けにくいって聞くけど、本当だとしたらスゴイな。怖いぐらいだ。
「ちぅ。ちぅ。ちぅ」
板書を写すシャーペンの動きに合わせて、ツクモが首を動かす。その可愛さに思わず気が散りそうになるけど、頑張って授業に集中する。
意外と大屋敷先生は怖いからな。
「ここでダンジョンから魔導書が見付かった。今、大多数の冒険者が使う魔法の基になったものだな」
俺の席は窓側の一番後ろだけど、ツクモの鳴き声で周りの生徒の気が散ってるのが分かる。
こっちをチラチラ見ながら悶えるのを我慢してる感じだ。
「魔導書は大きく分けて地水火風の系統に分けられると考えられていて。これは世界各地に類似する考えが広く分布していたため、すんなりと受け入れられた」
そういえば、ツクモは風魔法を持っていたよな。今度のダンジョン実習でちょっと見せてもらおう。
地上だとスキルや魔法はほとんど使い物にならないらしいからな。
ダンジョン内では魔法で辺り一面火の海にする冒険者も、地上に出ればタバコに火をつける程度の魔法にも苦労するみたいだ。
ただ、俺の【危険察知】みたいに現象に現れないスキルは、減衰が多少は緩和するようだ。【危険察知】もダンジョン内みたいに警告音こそ鳴らないけど、なんとなく危ないっていうのは分かるからな。
「………小幡君!」
「え、は、はい?」
唐突に名前を呼ばれてキョドる俺。
つられてツクモもビックリしている。
「その君の従魔、どうにかしてもらえないかしら?皆の気が散って仕方ないわ」
怒られてしまった。
午前中は多めに見てもらえたのか、何も言われなかったけど、やっぱり邪魔になるよな。
でも、どうしようか?
「ちぅ?」
ツクモも心配そうにこっちを窺う。なんとなく不安そうに見えるな。
「あ、えーと。じゃあ、机の中に入っててもらいます。ほら、ツクモ。この中に入ってて」
「ちぅ」
慌ててツクモを机の中に隠す。
机はそっと頭だけ出して「ちぅ」と一声鳴いた。どうやら居心地はそれほど悪くはないみたいだ。
「どうでしょう」
「ええ、それなら大丈夫よ。あと、出来るだけでいいから鳴き声もあまり出させないようにね」
「はい、分かりました」
怖かったぁ。
なんかやっぱり迫力が違うな。歴戦の戦士って貫禄だ。
ハプニングはあったものの、その後は何事も起こらず授業を終えて放課後を迎えるのだった。
俺自身は今のところ魔法は使えないけど、敵や味方が使うからある程度理解しておかなければいけない。
「じゃあ、前回の続きだな。ダンジョンが発見された当初、それまで俗説や迷信なんていわれていた隠秘学を再編しようという動きがあった。これを第一次隠秘学運動と言って………」
魔法概論の先生は大屋敷という女性の教師だ。
見た目は20代半ばに見えるけど、噂ではダンジョンが初めて出現した頃から冒険者として活躍していたらしい。
そうだとしたら、既に60歳は越えてるよな。下手したら70歳以上だ。
高レベルの魔力が高い冒険者は老けにくいって聞くけど、本当だとしたらスゴイな。怖いぐらいだ。
「ちぅ。ちぅ。ちぅ」
板書を写すシャーペンの動きに合わせて、ツクモが首を動かす。その可愛さに思わず気が散りそうになるけど、頑張って授業に集中する。
意外と大屋敷先生は怖いからな。
「ここでダンジョンから魔導書が見付かった。今、大多数の冒険者が使う魔法の基になったものだな」
俺の席は窓側の一番後ろだけど、ツクモの鳴き声で周りの生徒の気が散ってるのが分かる。
こっちをチラチラ見ながら悶えるのを我慢してる感じだ。
「魔導書は大きく分けて地水火風の系統に分けられると考えられていて。これは世界各地に類似する考えが広く分布していたため、すんなりと受け入れられた」
そういえば、ツクモは風魔法を持っていたよな。今度のダンジョン実習でちょっと見せてもらおう。
地上だとスキルや魔法はほとんど使い物にならないらしいからな。
ダンジョン内では魔法で辺り一面火の海にする冒険者も、地上に出ればタバコに火をつける程度の魔法にも苦労するみたいだ。
ただ、俺の【危険察知】みたいに現象に現れないスキルは、減衰が多少は緩和するようだ。【危険察知】もダンジョン内みたいに警告音こそ鳴らないけど、なんとなく危ないっていうのは分かるからな。
「………小幡君!」
「え、は、はい?」
唐突に名前を呼ばれてキョドる俺。
つられてツクモもビックリしている。
「その君の従魔、どうにかしてもらえないかしら?皆の気が散って仕方ないわ」
怒られてしまった。
午前中は多めに見てもらえたのか、何も言われなかったけど、やっぱり邪魔になるよな。
でも、どうしようか?
「ちぅ?」
ツクモも心配そうにこっちを窺う。なんとなく不安そうに見えるな。
「あ、えーと。じゃあ、机の中に入っててもらいます。ほら、ツクモ。この中に入ってて」
「ちぅ」
慌ててツクモを机の中に隠す。
机はそっと頭だけ出して「ちぅ」と一声鳴いた。どうやら居心地はそれほど悪くはないみたいだ。
「どうでしょう」
「ええ、それなら大丈夫よ。あと、出来るだけでいいから鳴き声もあまり出させないようにね」
「はい、分かりました」
怖かったぁ。
なんかやっぱり迫力が違うな。歴戦の戦士って貫禄だ。
ハプニングはあったものの、その後は何事も起こらず授業を終えて放課後を迎えるのだった。
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