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二章 相棒です

十話

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「残念だったなぁ」


 ブッシュスネークは有望株だっただけに、テイムが失敗したのは残念だ。

 あれからも、何匹かブッシュスネークとビッグホッパーが現れたけど、全部魔石と経験値に変わってしまった。

 どうやら草むらにはこの二種類のエネミーが棲息しているらしいから、後でまた探してみようかな。


「おーい、小幡ぁ!」


 草むらを抜けて、赤茶けた場所まで出たとき、横からクラスメイトが走ってきた。

 確か名前は青葉大介だったな。うん、ちゃんと覚えてるぞ。


「青葉か。どうだ?スタンプ集めは順調か?」
「あぁ。もう2つ目もゲットしたぜ。小幡は?」
「俺はまだ一つだもうちょい行った所に二つ目があるはずだ」
「そうか。頑張れな!」
「青葉もな」


 たわいもない挨拶をして別れたが、それからもちょこちょことクラスメイトに遭遇した。

 いくら広いとはいえ、20人のクラスメイトが散らばればそういう事もあるよね。

 その間にLのスタンプも手に入れ、最後の場所に向かう。


「おっと、あれは………」


 少し走り、地面が赤茶から黒くなってきた頃、一匹のエネミーが現れた。

 濃い灰色をしたネズミのエネミーだ。ネズミの割には大きく、よく見ると額に瘤のような角が生えている。


「ホーンラットか!」


 つぶらな瞳が可愛い。と言えなくもないが、なんとも憎悪のこもった表情で威嚇してくるホーンラット。

 かなりの素早さでこちらに走ってくる。

 そして、1mほど手前でジャンプすると突っ込んできた。あの角が当たると、突き刺さりはしないものの随分と痛そうだ。


「よっと」


 なんとか避ける。

 ブッシュスネークといい、この階層のエネミーは頭から突っ込んでくるのが好きらしいな。

 速さは凄いけど、動きが直接的だからパターンが分かれば対処できるな。

 何度か突進を躱しながらタイミングを計る。


「ここっ!」


 鳩尾辺りに跳んで来たのを、身体を開きながら棒で撃墜する。

 完全には捉えきれなかったけど、ホーンラットは地面に落ちて動かなくなった。


「よし、テイムだ」


 魔力光が宿った右手を近付けるけど、またもや失敗に終わった。

 ホーンラットは消え去り、後には毛皮で出来た帽子と魔石が落ちていた。帽子の額部分にはホーンラットの角が付いている。


「お、アイテムがドロップした。ラッキー」


 呪われてると嫌なので、もちろん被ったりはしない。二つに折ってウエストポーチのベルトに挟み込む。

 頭の装備は持ってなかったから、鑑定結果次第では次から被って実習を受けよう。


「それにしても、全然テイムが成功しないな。俺って才能無いのかな」


 これだけ失敗続きだと、正直へこむ。だけど、不本意ながらもせっかくテイマーになったんだから、一度はテイムを成功させたい。

 失敗成功に関わらず、テイムには一回でMPを1使う。時間経過である程度回復するものの、試す回数は限度があるんだ。


「ちょっと今回は無理かもな」


 足取りも重く、次のチェックポイントに向かう。

 まだ時間に余裕があるとはいえ、ぐずぐずはしていられない。

 まあ、最初はチェックポイントを全部回ってからテイムしようと思ってたんだから、ある意味計画通りではあるんだ。

 気を取り直して行こう。
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