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一章 テイマーになりました
七話
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「テイマーになりました」
いつも通りの部室。開口一番に俺はそう告げた。
皆は既に作業をしながら雑談に興じていたが、俺の言葉が想定外だったのかぽかんとした顔をしている。
「なぁ、小幡。テイマーって何?」
同じ一年生の吉根が尋ねてくる。まぁ、テイマーなんてジョブ、知らなくてもしょうがないな。なにせ俺も知らなかったんだし。
「テイマーはエネミーを仲間にして従えるジョブだよ」
俺は一枚のプリントをヒラヒラさせて見せる。去り際に白沢先生がテイマーの概要をプリントに出力してくれたんだ。
「へぇ、そんなのあるんだな」
プリントを渡すと吉根はそれに目を落とす。頻りに「ふーん」とか「へー」とか言ってるけど、そんなに気になる事でも書いてあるんだろうか?
俺もチラッと見ただけだから、後で寮に帰ったらしっかり見ておこうかな。
「それにしても、テイマーになったって事は宝箱に入っていたのはスキル珠じゃなくて転職の宝珠だったって事かな?」
「そうなんですよ」
川上先輩は相変わらず察しが良いな。その手元を見てみると、バイクのプラモデルを作っていた。確かヤマサキのシノビって言ってたな。
俺も自分のロッカーに荷物を入れ、代わりに作りかけのプラモデルを取り出して机に座る。俺が作ってるのはロボットアニメのキットで、ジグムっていう味方の量産機だ。
量産機って堪らない魅力があるよね。ね!
「ラッキーだったじゃない」
「そうでもないですよ。本当はスカウトとかの斥候に向いたジョブが良かったです。それがランダムでテイマーが選択されてしまったんですよ」
「贅沢言うなよ。こんな初っぱなからジョブが付くなんて羨ましい」
金屋先輩も会話に参加してきた。なんか寿司のプラモデルなんてよく分からない物を作ってる金屋先輩は、ちょっと変わり者だ。
今は本物の赤身の色を作りたいって調色をしては試し塗りを繰り返している。
「そう言えば金屋先輩って」
「あぁ、転職の宝珠がドロップしないから、先週わざわざ買ったよ。盾士のジョブを。20万円もしたよ」
「なんで盾士なんですか?先輩たしか両手剣使ってましたよね?」
系統が違うジョブを選んだ事を不思議に思って聞いてみたら、金屋先輩は言葉に詰まった。
「サトルはさ。本当な戦士か剣士が良かったんだよ」
川上先輩が言葉に詰まった金屋先輩の代わりに続ける。ちなみにサトルは金屋先輩の下の名前だ。
「でもね、前衛職の在庫がそれしかなかったんだって」
「あぁ、戦士も剣士も人気ですもんね」
「そうなんだよ。なかなか売りに出ないんだよ」
黄昏た雰囲気を出しながら、金屋先輩はマグロのパーツに色を塗っていく。妙にリアルな彩色が何故か物悲しさを醸し出している。
それにしても寿司が食べたくなるキットだ。
「良いなぁ。オレもジョブ欲しいなぁ」
プリントを読み終わった吉根が言い放つ。
不貞腐れたように口を尖らせているが、ヤスリ掛けしている手はしっかり動かしている。作っているキットはダンジョン自衛隊の10式魔道甲冑だ。このキットはヒケなんかが多く、表面処理をちゃんとするしないで出来映えに差が出るんだ。
「川上先輩は錬金術士だったっスよね」
「ああ。去年の夏休みに宝珠を入手したんだ。狙っていたからラッキーだったよ」
「へぇ、運が良いっスね。羨ましいっスよ」
「そうなんだよ。マサシは昔から運が良いんだよ。俺とは大違いだ」
「アハハハ」
川上先輩と金屋先輩は幼馴染みで、昔から仲が良いらしい。たまに二人でダンジョンに潜ってるって言ってた。
その後も手は止めず、取り留めのない話をするのだった。
いつも通りの部室。開口一番に俺はそう告げた。
皆は既に作業をしながら雑談に興じていたが、俺の言葉が想定外だったのかぽかんとした顔をしている。
「なぁ、小幡。テイマーって何?」
同じ一年生の吉根が尋ねてくる。まぁ、テイマーなんてジョブ、知らなくてもしょうがないな。なにせ俺も知らなかったんだし。
「テイマーはエネミーを仲間にして従えるジョブだよ」
俺は一枚のプリントをヒラヒラさせて見せる。去り際に白沢先生がテイマーの概要をプリントに出力してくれたんだ。
「へぇ、そんなのあるんだな」
プリントを渡すと吉根はそれに目を落とす。頻りに「ふーん」とか「へー」とか言ってるけど、そんなに気になる事でも書いてあるんだろうか?
俺もチラッと見ただけだから、後で寮に帰ったらしっかり見ておこうかな。
「それにしても、テイマーになったって事は宝箱に入っていたのはスキル珠じゃなくて転職の宝珠だったって事かな?」
「そうなんですよ」
川上先輩は相変わらず察しが良いな。その手元を見てみると、バイクのプラモデルを作っていた。確かヤマサキのシノビって言ってたな。
俺も自分のロッカーに荷物を入れ、代わりに作りかけのプラモデルを取り出して机に座る。俺が作ってるのはロボットアニメのキットで、ジグムっていう味方の量産機だ。
量産機って堪らない魅力があるよね。ね!
「ラッキーだったじゃない」
「そうでもないですよ。本当はスカウトとかの斥候に向いたジョブが良かったです。それがランダムでテイマーが選択されてしまったんですよ」
「贅沢言うなよ。こんな初っぱなからジョブが付くなんて羨ましい」
金屋先輩も会話に参加してきた。なんか寿司のプラモデルなんてよく分からない物を作ってる金屋先輩は、ちょっと変わり者だ。
今は本物の赤身の色を作りたいって調色をしては試し塗りを繰り返している。
「そう言えば金屋先輩って」
「あぁ、転職の宝珠がドロップしないから、先週わざわざ買ったよ。盾士のジョブを。20万円もしたよ」
「なんで盾士なんですか?先輩たしか両手剣使ってましたよね?」
系統が違うジョブを選んだ事を不思議に思って聞いてみたら、金屋先輩は言葉に詰まった。
「サトルはさ。本当な戦士か剣士が良かったんだよ」
川上先輩が言葉に詰まった金屋先輩の代わりに続ける。ちなみにサトルは金屋先輩の下の名前だ。
「でもね、前衛職の在庫がそれしかなかったんだって」
「あぁ、戦士も剣士も人気ですもんね」
「そうなんだよ。なかなか売りに出ないんだよ」
黄昏た雰囲気を出しながら、金屋先輩はマグロのパーツに色を塗っていく。妙にリアルな彩色が何故か物悲しさを醸し出している。
それにしても寿司が食べたくなるキットだ。
「良いなぁ。オレもジョブ欲しいなぁ」
プリントを読み終わった吉根が言い放つ。
不貞腐れたように口を尖らせているが、ヤスリ掛けしている手はしっかり動かしている。作っているキットはダンジョン自衛隊の10式魔道甲冑だ。このキットはヒケなんかが多く、表面処理をちゃんとするしないで出来映えに差が出るんだ。
「川上先輩は錬金術士だったっスよね」
「ああ。去年の夏休みに宝珠を入手したんだ。狙っていたからラッキーだったよ」
「へぇ、運が良いっスね。羨ましいっスよ」
「そうなんだよ。マサシは昔から運が良いんだよ。俺とは大違いだ」
「アハハハ」
川上先輩と金屋先輩は幼馴染みで、昔から仲が良いらしい。たまに二人でダンジョンに潜ってるって言ってた。
その後も手は止めず、取り留めのない話をするのだった。
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