上 下
5 / 91
一章 テイマーになりました

五話

しおりを挟む
 スキル珠じゃない。

 その言葉に驚き、ショックを受ける俺に、白沢先生は先ほどの紙を見せる。


「ほら、これはスキル珠じゃなくて転職の宝珠だ」


 指差された所を見たら、確かに転職の宝珠と書いてある。説明欄には使用するとランダムでジョブを得る事が出来ると書いてある。

 価格は5万円。なかなかの金額だ。

 ジョブって言うのは、ある系統のスキル取得を補助するものだと考えられている。例えば剣士だと剣術だったり、筋力強化なんかのスキルが取得しやすくなるんだ。

 それから、対応するステータスも伸びるんだ。剣士なら筋力が、魔法使いなら魔力が伸びる。

 だから、スキル珠よりもこの転職の宝珠の方が価値が高い。思わぬ幸運だね。


「これは何のジョブなのかは分からないって事ですよね?」
「あぁ、ランダムだ。もし何のジョブか分かっていたら、価格は倍になっていたかもな」
「倍、ですか」


 ちょっと残念な気持ちになる。

 でもまぁ、どうせ使うなら価格なんてどうでも良いしね。


「で、どうする?」
「あ、じゃあ使います」
「そうか、ならちょっと待ってくれ」


 白沢先生はそう言うと大きい方の箱を開ける。中には転職の宝珠よりも大きな水晶玉が入っていた。それを台座ごと取り出して、机の上に置く。

 そして、またもや何処からともなくタブレットを取り出すと、水晶玉の台座に接続する。


「悪いが何のジョブになったか記録させてもらう。これも決まりだから悪く思わないでくれ」
「あ、いえ。全然大丈夫です」


 冒険者は国にしっかり管理されている。異能とも言える能力を持っているんだから仕方ない。

 まぁ、それも地上に出れば弱体化しちゃうんだけどね。ダンジョンの中ではドラゴンさえ倒す高レベルな冒険者も、地上ではせいぜいオリンピックで優勝するのが精一杯だ。

 それでも脅威は脅威だ。高レベル冒険者に限られるが、能力を封印するアイテムを付けられ、何処に行くのも報告がいるらしい。

 窮屈な事だ。


「じゃあ、取り敢えず使ってみてくれ。使い方は分かるか?」
「はい。手に持って使うって念じれば良いんですよね?」
「そうだ」


 俺は転職の宝珠を手に取ると、使うと念じた。

 一瞬、転職の宝珠は光り輝くと、空気に溶けるように消えた。


「成功したのかな?」


 身体には何の異変も無い。

 身体の奥から燃え滾る何かが湧き出すって事もない。なんだか拍子抜けだ。


「特に何って事もないだろ?」
「はい、そうですね」
「ふふふ。そんなもんさ。さ、何のジョブを得たのか調べるからこの鑑定宝珠に手を置いてくれ」
「はい」


 鑑定宝珠はステータスを観る為のアイテムだ。俺も【危険察知】が発言した時に役所で使った事がある。

 ちなみにテストの時に腕に付けていた奴はこの鑑定宝珠の機能を限定した量産品だ。お値段はそれでもそこそこするけど、冒険者には無くてはならないアイテムだ。

 鑑定宝珠に手を置くと、一瞬なにかを抜き取られた感覚に襲われる。

 その後、水晶玉の中に文字らしき物が浮かび上がる。


「よし、もういいぞ」
「はい」


 鑑定宝珠から手を外す。

 タブレットを見た白沢先生は少し驚いた顔をしている。


「何のジョブでした?」
「ん?まぁ、直接見てみなさい」


 白沢先生は俺にタブレットの画面を向ける。そこには次のように書いてあった。


レベル:2

ジョブ:初級テイマー

スキル:危険察知、テイム(0/1)

HP :20
MP::10
筋力:1
魔力:2
体力:1
器用:1
敏捷:1
幸運:1

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...