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一章 テイマーになりました
四話
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「あ、小幡。後で職員室に来なさい」
テストが終わった翌週。結果が発表され、それなりの成績にホッとしていると、担任の白沢先生に呼び出された。
思い浮かぶのは提出物の返却だ。おそらく鑑定結果が出たんだろう。何のスキルか楽しみだ。
俺はウキウキしながら帰り支度をして、職員室に向かう。こんな楽しい気持ちで職員室に向かうのは最初で最後かもしれないな。
「失礼しまーす」
「おお、来たか。こっちだこっち」
職員室に入り、キョロキョロと白沢先生を探していると、奥の方から手招きされた。
そして、奥の小部屋に案内される。どうやら白沢先生の席で渡してくれる訳じゃないらしい。
それとも別件なのか?途端にちょっと不安になってきた。
「こっちだ入ってくれ」
「はい」
通されたのは飾り気の無い簡素な部屋だ。あるのは机と椅子、あとは棚だけ。そう言えば窓も無いなこの部屋。
俺は促されるまま折り畳みのパイプ「」椅子に座る。白沢先生は棚から大小二つの箱と棒を取り出し、俺の向かい側に座った。
棒は見覚えがある。ダンジョンの罠に使われていたヤツだ。なんだかんだ使い勝手が良くて持って帰ってきちゃったんだ。
「今回のテスト、お疲れ様だったな」
「はい、ありがとうございます」
ニヤリと笑う白沢先生に、俺は曖昧な顔で応える。
元々、白沢先生は斥候職の冒険者だったらしい。だからなのか分からないけど、何を考えているのか微妙に解りにくい。
今の笑顔も本当に労っているのか、それとも馬鹿にしているのか判断に困る。
「で、だ。もう察しているとは思うが、今日は取得物の鑑定が終わったから、それの返却の為に呼んだんだ」
「はい」
やっぱりそうか。いよいよ何のスキルか分かるのか。
うん、ワクワクする。
「じゃあ、先ずはこっちだな」
白沢先生は棒を机の上に置く。長さが150センチくらいあるので、端からはみ出してしまっている。
いや、そんな棒なんてどうでもいいから、早くスキル珠の方にしてくれ。
そんな俺の考えを知ってか知らずか、白沢先生は一枚の紙を何処からか取り出した。ひょっとしたら収納系のスキルを持っているのかもしれない。
「これは単なる木の棒だな。一応、杖装備みたいだ。両端を金属で補強してあるから、打撃武器としても使えるみたいだな」
「杖、なんですね」
罠から飛び出してきた物だから、装備品だとは思わなかった。
「そうだ。攻撃力5で、魔力が+1される。販売価格は七千円だな。どうする?」
要らない取得物は学校が買い取りしてくれる。販売価格は市場の適正価格と同じだ。
もし売るなら、買い取り業者を探して売るより手間が掛からないだけ楽だ。
「売らずに使ってみようと思います」
「そうか、分かった」
白沢先生は単なる木の棒とは言ったけど、魔力+1は魅力的だ。攻撃力も今持ってるナイフが10で、その半分しかないけど、少し遠い間合いから攻撃出来るのも良い。
携帯に難はありそうだけど、最悪リュックにくくりつけとけば良いだろう。
俺は斥候志望だけど、ダンジョンに入ればエネミーと戦う場面もあるだろうし、戦闘手段も考えないとな。
白沢先生から棒を受け取ると、手に持ったまま膝の上に置いた。
「じゃあ、次はこれだな」
小さい方の蓋を開けて、白沢先生は俺の前に置いた。
中にはやはりスキル珠が入っていた。
「これはスキル珠ですか?」
俺は先走って聞いてみた。確信があったからね。
先輩にも聞いたら、人工ダンジョンからもスキル珠が出ることもあるって言ってたしね。
しかし、白沢先生からの返事は俺の想像とは違うものだった。
「いいや。これはスキル珠じゃないぞ」
「え!?違うんですか?」
驚いて思わず大きな声で聞き返してしまった。
白沢先生はまたニヤリと笑って頷いた。
「あぁ、これはスキル珠じゃない」
テストが終わった翌週。結果が発表され、それなりの成績にホッとしていると、担任の白沢先生に呼び出された。
思い浮かぶのは提出物の返却だ。おそらく鑑定結果が出たんだろう。何のスキルか楽しみだ。
俺はウキウキしながら帰り支度をして、職員室に向かう。こんな楽しい気持ちで職員室に向かうのは最初で最後かもしれないな。
「失礼しまーす」
「おお、来たか。こっちだこっち」
職員室に入り、キョロキョロと白沢先生を探していると、奥の方から手招きされた。
そして、奥の小部屋に案内される。どうやら白沢先生の席で渡してくれる訳じゃないらしい。
それとも別件なのか?途端にちょっと不安になってきた。
「こっちだ入ってくれ」
「はい」
通されたのは飾り気の無い簡素な部屋だ。あるのは机と椅子、あとは棚だけ。そう言えば窓も無いなこの部屋。
俺は促されるまま折り畳みのパイプ「」椅子に座る。白沢先生は棚から大小二つの箱と棒を取り出し、俺の向かい側に座った。
棒は見覚えがある。ダンジョンの罠に使われていたヤツだ。なんだかんだ使い勝手が良くて持って帰ってきちゃったんだ。
「今回のテスト、お疲れ様だったな」
「はい、ありがとうございます」
ニヤリと笑う白沢先生に、俺は曖昧な顔で応える。
元々、白沢先生は斥候職の冒険者だったらしい。だからなのか分からないけど、何を考えているのか微妙に解りにくい。
今の笑顔も本当に労っているのか、それとも馬鹿にしているのか判断に困る。
「で、だ。もう察しているとは思うが、今日は取得物の鑑定が終わったから、それの返却の為に呼んだんだ」
「はい」
やっぱりそうか。いよいよ何のスキルか分かるのか。
うん、ワクワクする。
「じゃあ、先ずはこっちだな」
白沢先生は棒を机の上に置く。長さが150センチくらいあるので、端からはみ出してしまっている。
いや、そんな棒なんてどうでもいいから、早くスキル珠の方にしてくれ。
そんな俺の考えを知ってか知らずか、白沢先生は一枚の紙を何処からか取り出した。ひょっとしたら収納系のスキルを持っているのかもしれない。
「これは単なる木の棒だな。一応、杖装備みたいだ。両端を金属で補強してあるから、打撃武器としても使えるみたいだな」
「杖、なんですね」
罠から飛び出してきた物だから、装備品だとは思わなかった。
「そうだ。攻撃力5で、魔力が+1される。販売価格は七千円だな。どうする?」
要らない取得物は学校が買い取りしてくれる。販売価格は市場の適正価格と同じだ。
もし売るなら、買い取り業者を探して売るより手間が掛からないだけ楽だ。
「売らずに使ってみようと思います」
「そうか、分かった」
白沢先生は単なる木の棒とは言ったけど、魔力+1は魅力的だ。攻撃力も今持ってるナイフが10で、その半分しかないけど、少し遠い間合いから攻撃出来るのも良い。
携帯に難はありそうだけど、最悪リュックにくくりつけとけば良いだろう。
俺は斥候志望だけど、ダンジョンに入ればエネミーと戦う場面もあるだろうし、戦闘手段も考えないとな。
白沢先生から棒を受け取ると、手に持ったまま膝の上に置いた。
「じゃあ、次はこれだな」
小さい方の蓋を開けて、白沢先生は俺の前に置いた。
中にはやはりスキル珠が入っていた。
「これはスキル珠ですか?」
俺は先走って聞いてみた。確信があったからね。
先輩にも聞いたら、人工ダンジョンからもスキル珠が出ることもあるって言ってたしね。
しかし、白沢先生からの返事は俺の想像とは違うものだった。
「いいや。これはスキル珠じゃないぞ」
「え!?違うんですか?」
驚いて思わず大きな声で聞き返してしまった。
白沢先生はまたニヤリと笑って頷いた。
「あぁ、これはスキル珠じゃない」
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