召喚勇者は怪人でした

丸八

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二章

37話

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「馬車三台をバリケードみたいにして、それを覆うように結界が張られているのか」

 迫り来るゴブリンを倒しながら、俺は馬車の方を見る。2台は同じ意匠の装飾が施された物で、もう一台は小さめの幌馬車だ。馬車の陰には武装した5人の男女がいた。おそらく護衛の冒険者だろう。

 馬車を牽引する馬はいない。馬車自体が自走できる魔道具じゃなければ、もうゴブリン達に食われたのかもしれないな。

 ざっと状況を確認している間に、一部のゴブリンがこちらに向かってきた。

「ウオットト」

 ゴブリンの後方から火の玉が飛んできた。《火弾》の魔法だろう。

 見ればボロ布を纏い、木の杖をこっちに向けたゴブリンが数匹いた。

「魔法を使うか。厄介だな」

 俺は魔法を使うゴブリンから狙う事にした。

 魔力弾を放つと、木の板を盾にしたゴブリンが射線に飛び出した。

「ギャグッ!」

 見事に魔力弾を防いだかに見えたけど、ゴーレム相手に鍛えた魔力弾を薄い板では止められず、多少威力は殺がれたものの、盾をぶち抜いてゴブリンに当たる。

 護衛役が倒れた事で慌てたのか、ゴブリンが放とうとしていた魔法が霧散した。

「お、ラッキーだね」

 再び放った魔力弾はゴブリンの薄い胸板を貫く。魔石が壊れたようでゴブリンの身体が崩れさっていった。

 剣や石槍を持ったゴブリンに囲まれないように立ち回りながら、魔法や弓で遠距離攻撃を仕掛けてくるゴブリンを優先的に倒していく。

「いやいや、なんとも数が多いね」

 15匹位は倒したが、まだゴブリンの数が減っていかない。

 襲われてる馬車の方に集っているゴブリンも当然そのままの数だ。

 いや、むしろ増えているな。

「そろそろ他に誰か来ないかな」

 なんと言ってもここは領都に繋がる街道だ。昼飯時だから人通りが少ないのも分かるけど、もうちょっと誰か通っても良いだろう。

 馬車の人達もそれを見込んで立て籠ってるだろうに。

「グギィッ!!」

 少し思案していると、ゴブリンが一匹掴み掛かってきた。

 その右手を掴んで、肘を極めたまま大きく円を描く。そのまま集団へと投げ飛ばす。

 ゴブリン達はお互いぶつかって、もつれるように倒れた。

「さて、そろそろ白兵戦のお時間かな」

 俺は腰から短剣を抜き払った。
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