31 / 39
二章
30話
しおりを挟む
「ゴブリンの魔石とは珍しいですね」
「え?ゴブリンって珍しいんですか?」
精算していると、マリーさんがゴブリンの魔石を見て少し驚いた顔をした。
「あ、いえいえ。ユースケさんは何時もゴーレムダンジョンの魔物ばかりだったので………」
「あぁ、そういう。それなら珍しく森にゴブリンがいたんですよ」
「あのダンジョンに抜ける道の辺りですか?」
「そうです、そうです。蜘蛛がいなくなってから魔物なんて見掛けなかったんですけどね」
アルケニーの影響で、弱い魔物しかいなかったあの辺りの森は、ぽっかりと空白地帯になっていたようだ。
「今日の分が8万2千ゼニダになります。それから、先のアルケニー討伐の裏付けがとれたので、報酬5百万ゼニダをお支払いしますね。またカードで良いですか?」
あ、アルケニー討伐の報酬の事すっかり忘れてた。素材の売却費用は払い込まれていたから、すっかり貰っていたと勘違いしてたよ。
「あ、今日の分だけ現金でお願いします」
「かしこまりました。では、こちらお確かめください」
大銀貨8枚と銀貨2枚がカウンターに置かれた。ざっと確認してから、空っぽだった財布に入れる。
「それで、ですね」
「はい」
マリーさんが1枚の紙を取り出した。
「先程、ユースケさんが仰ってたゴブリンの件なのですが」
「はいはい」
「今回の調査でコロニーを作っていた事が判明しました」
マリーさんが出したのはクエストの依頼表だ。
「アルケニーから住み処を追われた幾つかのグループが合流して、一大コロニーを築いたようです」
「大所帯のゴブリンか………臭そうだな」
さっき仕留めたゴブリンも、解体してたらちょっと臭ったからなぁ。それが大勢いたらと思うと身震いする。
「えぇ、報告書にも異臭が凄かったとありますね」
「やっぱり」
「で、ですね」
話が逸れていくのを察したのか、マリーさんが軌道を修正しようとする。
「そのコロニー殲滅にユースケさんにも加わっていただけないかという打診なんですが」
そういうマリーさんの顔はどことなく申し訳なさそうにしている。
「あー、分かっているとは思いますが、明日から十日ほどリコラの護衛依頼が入っているんですよ」
「はい、存じております」
「ここに書いてあるクエストの期日は明後日ですよね」
俺は依頼書を指差す。
「はい」
「確か例え緊急クエストだとしても、事前に受けたクエスト優先でしたよね」
「その通りです」
「受けれると思いますか?」
「いえ」
多分、人が集まらないんだろう事は分かっている。
ゴブリンは大した素材も取れないし、ランクが低いから依頼料も低い。
かといって危険度は群が大きくなるとかなり高くなるようだ。
まぁ、マリーさんには同情するけど、今回は先約を優先させてもらおう。
「マリーさんには良くしてもらってるので、受けたい気持ちはあるんですが、今回は先約優先させてもらいます」
「かしこまりました。ご無理言って申し訳ありませんでした」
「いえいえ、こちらこそご期待に添えず申し訳ないです」
俺は頭を下げると、受付から離れるのだった。
「え?ゴブリンって珍しいんですか?」
精算していると、マリーさんがゴブリンの魔石を見て少し驚いた顔をした。
「あ、いえいえ。ユースケさんは何時もゴーレムダンジョンの魔物ばかりだったので………」
「あぁ、そういう。それなら珍しく森にゴブリンがいたんですよ」
「あのダンジョンに抜ける道の辺りですか?」
「そうです、そうです。蜘蛛がいなくなってから魔物なんて見掛けなかったんですけどね」
アルケニーの影響で、弱い魔物しかいなかったあの辺りの森は、ぽっかりと空白地帯になっていたようだ。
「今日の分が8万2千ゼニダになります。それから、先のアルケニー討伐の裏付けがとれたので、報酬5百万ゼニダをお支払いしますね。またカードで良いですか?」
あ、アルケニー討伐の報酬の事すっかり忘れてた。素材の売却費用は払い込まれていたから、すっかり貰っていたと勘違いしてたよ。
「あ、今日の分だけ現金でお願いします」
「かしこまりました。では、こちらお確かめください」
大銀貨8枚と銀貨2枚がカウンターに置かれた。ざっと確認してから、空っぽだった財布に入れる。
「それで、ですね」
「はい」
マリーさんが1枚の紙を取り出した。
「先程、ユースケさんが仰ってたゴブリンの件なのですが」
「はいはい」
「今回の調査でコロニーを作っていた事が判明しました」
マリーさんが出したのはクエストの依頼表だ。
「アルケニーから住み処を追われた幾つかのグループが合流して、一大コロニーを築いたようです」
「大所帯のゴブリンか………臭そうだな」
さっき仕留めたゴブリンも、解体してたらちょっと臭ったからなぁ。それが大勢いたらと思うと身震いする。
「えぇ、報告書にも異臭が凄かったとありますね」
「やっぱり」
「で、ですね」
話が逸れていくのを察したのか、マリーさんが軌道を修正しようとする。
「そのコロニー殲滅にユースケさんにも加わっていただけないかという打診なんですが」
そういうマリーさんの顔はどことなく申し訳なさそうにしている。
「あー、分かっているとは思いますが、明日から十日ほどリコラの護衛依頼が入っているんですよ」
「はい、存じております」
「ここに書いてあるクエストの期日は明後日ですよね」
俺は依頼書を指差す。
「はい」
「確か例え緊急クエストだとしても、事前に受けたクエスト優先でしたよね」
「その通りです」
「受けれると思いますか?」
「いえ」
多分、人が集まらないんだろう事は分かっている。
ゴブリンは大した素材も取れないし、ランクが低いから依頼料も低い。
かといって危険度は群が大きくなるとかなり高くなるようだ。
まぁ、マリーさんには同情するけど、今回は先約を優先させてもらおう。
「マリーさんには良くしてもらってるので、受けたい気持ちはあるんですが、今回は先約優先させてもらいます」
「かしこまりました。ご無理言って申し訳ありませんでした」
「いえいえ、こちらこそご期待に添えず申し訳ないです」
俺は頭を下げると、受付から離れるのだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる