異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

120話「最終決戦、開幕」

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「マリーネさん、ちょっと良いですか?」

「え……?」

    俺とマリーネが家に帰ってきた時、仁美さんがマリーネを呼び止め、「話がある」と言って家の外に出ていった。

「リョータロー君、お願いだけど夕ご飯の準備をしててくれないかしら。」

「うん。任せて。」

「ありがとうね。」

    マリーネは俺にそう告げると仁美さんと共に家の外に出ていった。
    それから日が暮れ、夕ご飯を食べた後部屋でゆっくりしていると、そこに寝巻き姿のマリーネがやってきた。

「リョータロー君、ちょっといいかしら?」

「え、な……何?」

    俺はちょっと気恥ずかしくてマリーネから顔を逸らす。

「私、ずっとリョータロー君に聞きたい事があったんだけど、いい?」

「な、何?」

「リョータロー君はさ、なんで私達の世界の為に戦ってくれたの?」

    マリーネはまず俺にその質問をしてきた。
     俺は一瞬その質問に対してどう答えればいいのか困惑してしまう。

「それは……。」

「見ず知らずの私達の為に、なんであんなにも必死に戦う事ができたの?」

    そう問いかけるマリーネに対して俺はなんとか答えを取り繕おうとする。

「自分の正義のため、かな……でも……俺、この世界に来る前に子供を助けたんだよ。トラック……何百キロもある鉄の塊が子供にぶつかりそうになって……俺は子供の身代わりになって大怪我を負った。その時俺、自分でもビックリするぐらい……まるでそうして当たり前みたいに躊躇いなく身体が動いていた。俺、おかしいのかな……。」

「……リョータロー君にとって、人を助けるのはそういう事なの……?」

「多分俺、何も考えてないんだと思う。自分の正義っていうのを思考じゃなく神経で行っているというか……。」

    そうだ。
    俺は昔からヒーローが大好きだった。
    だから、自分の意思とは関係なく、「こんな時ヒーローならどうするか」って考えて行動をする人間になってしまったんだ。

「……お師匠様が私を育ててくれてた時、こう言ってたの。「考える事は人が生きている証で、考える事を止めるのは死ぬのと同じ」って。だから私は自分自身の心に基づいて……憧れのお師匠様と同じ冒険者をやって人の役に立ちたいと思った。」

「マリーネは立派だね。俺には何も無い。俺が持っているのは「正義」っていう器だけなんだ……その中には何も無い……」

「リンゴちゃんにカズマくんにカナちゃん。リョータロー君がティアマトの元から帰ってきた時に話してくれた貴方の友達、よね?」

「……」

「空っぽの器なんかじゃないわよ。ちゃんと中にあるじゃない……大事なものが。その大切なものに誇れる自分である為にリョータローは動いたんでしょ?」

    俺はマリーネの言葉でようやく大切な事に気付かされた。
    俺は空っぽなんかじゃない……そうだ、それに気づかせてくれる為の人達なら既に俺の近くにいたんだって……。

「うん……そうだね。」

「それともう1つ……私達、出会ってすぐに影の一味との戦いに手一杯で忙しかったけど……リョータロー君には、この世界の色々な姿を見せてあげたかったな……。」

「この世界の……?」

「リョータロー君が見たのはほんの1部だけよ!世界はまだまだ広いんだから!」

    マリーネは両手をばっと広げて声高らかにそう謳う。
    
「……うん、一緒に見ようね。この世界の知らないものを全部……。」

「うん!だからリョータロー君!……っ……お願い……もっと……ずっと……一緒にいてよ……私達と……!」

    突然マリーネは涙を流しながら俺にそううったえてくる。
    ど、どうしたんだろう、一体……。

「マ、マリーネ!?」

「ヒトミさんから聞いたの……私はリョータロー君が……元いた世界で死んじゃって……この世界に転生したって……でも違う!リョータロー君はその世界で生きてるんでしょ!?意識を失っているだけなんでしょ!?もしも今リョータロー君が眠りについて、それっきり……リョータロー君の意識が向こうの世界に戻っちゃったら……キョーシローが言ってた「リョータロー君は元の世界に帰れるだろう」って、そういう事なのかなって……!」

「マリーネ……!」

    仁美さんがそんな事をマリーネに……それと狂死郎の言葉を気にして……そういう事だったのか……。

「……言っただろ……この世界はマリーネ達が生きている素晴らしい世界だって……俺にとってこの世界はかけがえのないものになったんだよ……!」

「でも、リョータロー君には帰りを待っている人がいるんでしょ……?私にそれを止める権利は__」

    俺はボロボロと涙を流しながら悲しい事を言おうとするマリーネが、もうこれ以上見てられなくて、咄嗟に身体が動き、マリーネの身体を抱きしめていた。

「……やめて……リンゴちゃんの事好きなんでしょ……?リョータロー君を浮気者にしたくない……!」

「泣いてるマリーネを放っておける訳……無いだろ……!」

「リョータロー君……ごめん……ありがとう……!」

「それはこっちの台詞だよ。鬼人族の末裔である俺の事をそんなに思ってくれて……ありがとう……。」

    俺とマリーネは互いに感謝の言葉を言い合い、その日はマリーネと一緒に夜を明かした。
    これが最後の夜になるかもしれなかったから……。



    翌朝、俺が目を覚ました時には既にマリーネは先に起きていて、皆と合流する場所である王都レガーに向かう準備をしていた。

「おはよう、マリーネ。」

「おはよう、リョータロー君。」

    マリーネと挨拶を交わした後、俺も朝ごはんを食べて支度を済ませ、2人で王都レガーへと向かった。
    
「リョータロー君……私達の未来は2つよ。またこの家に2人で帰ってくるか、リョータロー君は元いた世界に帰ってリンゴちゃんと再会する。」

「うん……俺とマリーネ、2人が帰るべき場所に帰るんだ。負ける訳がない。」

「絶対に勝ちましょうね!」

「うん!」

    俺とマリーネは王都への道中で指切りをして誓いを立て、覚悟を決めて王都の門をくぐった。

「お待たせしました!」

「これで皆揃ったか。」

    俺達が来た頃には皆既に集合していた。
    仁美さんはこの街を防衛する為に冒険者達の指揮を取るらしく、この場にはいない。

    俺達がその場に到着したのを確認したイブさんは、その場にいる俺、マリーネ、リコ、ガオレオ、タウラス、ベル、ドラコ、ソレイユさん、セリエ、計9人の冒険者と俺に檄を飛ばす。

「これが影の一味との最後の戦いになるだろう。過酷な戦いになるはずだ……最悪誰かが死ぬかもしれない。それでも私はお前達の可能性を信じている。だから……絶対に誰も死ぬな。皆で生きて帰るんだ。」

    イブさんの激励を聞いた皆は、緊張した赴き……とは違い、でもおちゃらけているとも言えない、いつもと変わらない態度で自分の意思を表す。

「当然だ。俺はこんな所で死ぬ訳にはいかねぇよ。町中の可愛い女の子をナンパしまく……」

「あ?」

「いやいや!ベルとドラコがしっかり成長するまで見守ってやらなくちゃいけねぇからな!ははは!」

「これからとんでもねぇ戦いが始まるってのに、アニキは相変わらずだな~。」

     タウラスら3人組も相変わらずで、

「この戦いで得られる報酬金はいくらになるかしら~。両親に親孝行して~、あとトーゴのお墓をもっと立派な物に作り替えて~、私頑張るわ~。」

「俺は孤児院に寄付してやらねぇとな!クローザさんにちっとは恩返ししてやらねぇと!」

    リコとガオレオは戦いの後何をするかを計画立ててやる気を高めようとし、

「私は父のような立派な冒険者にならなくてはならないんだ。こんな所では死ねない。」

「私もよ……冒険者の使命を……成す為に……。」

    ソレイユさんとセリエは新しい武器を握りしめて意志を固め、

「私は……私の街を……そして、この世界を守りたいです!」

「俺も!」 

    マリーネと俺は戦いへの覚悟を決めた。
    例え影の一味がどんなに恐ろしくても……皆となら負ける気がしないんだ!

「よし……良太郎、第一撃は作戦通りお前に任せる。ルスタ村の捕虜の方は問題ない。遠慮なくやれ。」

「はい!血起……超変動!」

「ワープゲート。」

    これより、影の一味との最後の戦いが始まる……。

    
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