異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第3章<怪物と少女>編

116話「師匠と、弟子」

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「柳、死んでおくれ……皆の為に。」
    
    母親に谷底に落とされたのが、私の最初の記憶だった。
    その時の私はまだ赤ん坊で、これはそこから生まれ変わった後で私が考えた事なんだが、その時私は山の神……という名のまやかしへの生贄として殺されたんだと思う。
    何が神だ、そんなクソみたいな事の為に私を殺しやがって……そんな思いが渦巻く中で私は目が覚めた。



「穿貫戟」

「ゴギャアァァァァ!」

    私は生まれ変わってすぐに自分の力を自覚し、その力を有意義に使う為にモンスター狩りを生業とする事にした。
    各地を転々とし、様々な人間と触れ合い、いつしか私はちょっとした有名人になっていた。

「最強の冒険者イブが神獣レベルのモンスター、プラチナムヒュドラを討伐したってよ!」

「流石最強の冒険者だな。」

「アイツには敵わねぇや。」

    皆からの私への賞賛の声を聞くのは、あまり嬉しくはなかった。
    その時の私は「自分には人の為に尽くさなくてはいけない使命が付きまとっているのではないか」と考えていたからだ。
    きっと私は前世のように、また人の為にと命を燃やし尽くしてしまうんだと、なんとなくそう思っていた。

「穿貫戟」

「ホークアロー!」

「穿貫戟……!!」

    私はいつ訪れるかも分からない死の恐怖、そして自分に課せられていると思い込んでいた使命から狂ったようにモンスターを狩り続け、ついに1000年に1度この世に現れると言われている神龍レベルの半神半獣のモンスター、アテナ・マキアを、王国アダンの地で1人で討伐した。
     それ程の力を私は持ってしまったんだ。

「その女は危険だ!」

「あの神殺しの力が人に向けられたら……!」

「まさに人の姿をした化け物……!」

    結果、王国アダンのお偉方に目をつけられ、王国ミズノエに追いやられた。
    結局そこでも長居する事はできず、もしそこがダメだったら、もういっそ次は海の向こうの大陸に……という思いを胸に王国アストレアへと移り住んだ。



    そこで私は自分の命のタイムリミットを背負わされ、6人の弟子と出会う事になった。

「君がイブかい?」

「……は?」

「神龍レベルのモンスターを1人で討伐したそうだね。」

    ソイツは……狂死郎は私の顔を見るなり私を見知ったような態度で接してきた。
    当然私は訳が分からなかったが、やつはこんな事を口走った。

「ここは王国アストレアの中枢、王都レガーだ。」

「それがどうした?」

「僕の魔術1つで簡単に消す事かできる。」

「それを私に言ってどうする?」

「何、ただの挨拶だよ。ただの……ね。」

    男はほくそ笑みながらそう言うと、手のひらに黒い球を形成し、それを爆発させた。



    辺り1面、黒い炎が燃え盛っていた。
    軽く見積もっても王都の住人の8割は死んだだろう。
    狂死郎は何故か生きてて、街の様を眺めた後どこかに消え去ったが。
 
「……クソ……!」

    私の身体は自然と動いていた……生存者を探す為に。
    見つかるのは死んだ人間ばかりだが、やっと生存者を見つけた……それがマリーネだ。

    その時、そこに王国アストレアの国王、エアリーズ・アストラルが複数の兵士を連れて現れた。
    国王ってのはどこにおいてもボディガードに腕利きの魔術師を雇っているものだから、きっとそいつに助けられたんだろう。

「貴様!なぜこの状況で生きてる!」

「……別にそんな事どうだっていいでしょう。」

「怪しい……お前がこの大災害を起こしたのか!」

「……そうだとしたら?」

「ぬぅ~!貴様は即座に殺さなくてはならない!」

「お、落ち着いてください国王陛下!まだその女性が張本人だと決まった訳じゃ__」

「ではなぜさっきの爆発を生き延びている!!もしやお前……神獣殺しのイブか!?ついに神殺しの力を我々人類に……!!」

    きっと国王は混乱してたんだろう……私を犯人と決めつけ疑おうともしなかった。
    だから私は彼に少し冷静になってもらう為に国王を睨みつけ威圧し、少しでも生きながらえようとした。

「この女の子は……親を無くしたそうだ。それだけじゃない……沢山死んだ。敵はこの隙をついてさらに攻撃を仕掛けてくるかもしれない……こんな所で私が死ぬ訳にはいかないんだよ……だから……!」

「ひっ!」

「せめてこの子が18歳になるまででいい……私はこの国を守り続ける……この街を守れなかった詫びにしちゃ適当だろう……!」

「……ッ、わ、分かった……貴様はその後で処刑してやる!神殺しのバケモノが!」

    そうして私はなんとかその場は凌ぎ、マリーネの育ての親を引き受けた。
   


    私は王都レガーから少し離れた所に家を建て、そこでマリーネと生活をする事にした。
    草原のど真ん中だが、周りには雑魚モンスターしかいない上に結界魔術で家を覆い、何があっても問題ないようにして生活を始めた。

「マリーネ、魔術の訓練の時間だ。」

「はい、お師匠様!……お師匠様?」

「……なんでもない。」

    マリーネは素直な子で、私の事をお師匠様と呼び慕ってくれた……そう呼ばれるのはちょっと小っ恥ずかしかったし、今もそうなんだけどな。

「フレイムバレット!」

「アイスバレット!」

「ウインドバレット!」

「ロックランス!」

「サンダーランス!」

「アクアブレス!」

    マリーネは滅多に見る事のない全属性適正を持った逸材で、その上成長速度も早く、あっという間に全属性の基礎魔術をマスターしてみせた。

「マリーネは天才だな。」

「天才?私がですか?」

「あぁ。きっと私よりも強くなれるぞ。」

    私はたまにそう言ってマリーネの事を褒めてやったのだが、その度にマリーネは

「いえ、お師匠様の方がうんと凄いです!私がお師匠様みたいになれるには、100年ぐらいかかるかもしれません!」

    と謙遜していた。
    そんな風に普段は自己評価が低い性格だからか、たまに夜な夜なぐずって私と一緒に寝たいと言いだし、私がマリーネを抱いて眠るとマリーネは安心して眠りについた。
     ……たまに寝ションベンをして私を巻き添えにする事があったが。



    私は王都にはあまり行きたくないので、マリーネが10歳になってからは彼女に食料や生活必需品の買い出しを頼んでいたのだが、ある日買い物から帰ってきたマリーネが「客」を連れてきた。

「……は?」

「イブさん!」

「私達を……」

「鍛えてください!!」

「イブさんの弟子になりたいです!」

    マリーネと同じぐらいの子供とそれよりも年上の子供が計5人……彼らが私に弟子入りを志願してきたのだった。
    そんなこんなで私はトーゴ・ツインホーン8歳、リコ・ツインホーン10歳、ガオレオ・レクス17歳、セリエ・ミカヅキ17歳、ソレイユ・サジタリウス17歳の面倒を見る事になったのだが……


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