異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ

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第1章<鋼の体>編

35話「断ち切る雷刃」

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   カノト村の浜辺で水棲モンスター、シーグールと戦っていた俺達。
   そんな俺達の前に、シーグールの親玉、マザーシーグールが現れた。
    これに挑むのは特級冒険者セリエ・ミカヅキ。
    彼女1人で強敵マザーシーグールに勝てるのだろうか。  

「ギャギャギャギャ!」

    マザーシーグールは雄叫びを上げながらセリエに向かっていき、右手を振り下ろして彼女を攻撃しようとする。

「……!」

    それを後ろに飛び退いて回避するセリエ。
    さらに回避するのと同時に彼女は魔術で敵に攻撃を仕掛ける。
  
「ウインドバレット!」

    セリエの杖の先から放たれた風の弾丸、ウインドバレットはマザーシーグールの左脚に直撃、敵はバランスを崩した。
    その隙にセリエは再び魔術を発動する。

「フレイムブレス!」

    セリエはフレイムブレスと唱え、杖の先から吹き出す火炎放射によって敵にダメージを与えた。

「ギャアァァァァァ!」

    フレイムブレスを受けて叫び声をあげるマザーシーグール。
    しかし敵も負けじと、先程俺に撃ってきた強酸を口から飛ばしそれによってセリエを攻撃しようとした。

「メタルシールド!」

    それに対して魔術、メタルシールドで対応するセリエ。
    彼女の目の前に鋼の盾が現れ、それによってセリエは強酸から身を守った。

「スゥゥゥゥ……」

    だが、敵も息を思いっきり吸って力を溜め、その直後に強酸をレーザービームのように放った。
    それをメタルシールドで受け止めるセリエだが、このままあの攻撃を受け続けたら……!

「セリエ……!」

    俺は思わずそう呟いた。その時……セリエは盾で身を守りつつ、右手に持った杖を天に掲げた。
    そして魔術の名を叫ぶ。

「サンダークライシス!」

    彼女がそう叫ぶと、マザーシーグールの上から無数の雷が落ちてきて、敵はその雷を身体中に浴びた。

「ギャァァァァ!」

    無数の落雷の威力に耐えられず、攻撃を中止して苦痛の叫び声をあげるマザーシーグール。
    だが落雷は止まず、セリエはサンダークライシスによってマザーシーグールを確実に倒しにかかった。

「いけ……!」

    俺の隣で、拳を握りしめそう呟くマリーネ。
    セリエは攻撃の手を緩めず落雷は絶え間なく敵を襲い続けた。

「……ギャ……!」

    そしてついにマザーシーグールは断末魔のような呻き声をあげて力尽き、砂浜に倒れた。

「やったわね、セリエ!」

    マリーネは嬉しそうにセリエに近づく。     
    俺もセリエの元に歩み寄ろうとしたその時……!

「ギ……ギャ……!」

    瀕死のマザーシーグールが立ち上がり目の前に現れたマリーネに攻撃を仕掛けようとしてきたのだ。
    右手を振り上げマリーネを攻撃しようとするシーグール。
    俺はそこに全速力で駆けつけ、腕の刃で敵の喉元を切り裂く……そうすれば倒せるはず!

「はぁっ!」

    俺は右腕の刃をマザーシーグールの喉元に押し当て、そのまま腕を左上方向に突き上げた。
    喉を切り裂いたことで太い血管から大量の血が吹き出し、俺はそれを全身でシャワーのように浴びてしまう。
    それがマズかった……。

「……!体が溶ける……!」

    なんとマザーシーグールは血液にも物を溶かす物質が流れており、その返り血を浴びた俺の体はジワジワと腐食されていく……マズイ……!

「プリフィケーション!」

    それをセリエが止めてくれたのだった。    
    彼女は浄化魔術プリフィケーションを使い、俺の身体にこびり付いたマザーシーグールの血液を浄化し、俺の身体の腐食は止まった。

「メタルヒール。」

    セリエは続けて魔術、メタルヒールを発動。
    1部が腐食された俺の身体は彼女の魔術によって元通りに復元された。
    メタルヒールはどうやら鉄や金属を修復する為の魔術らしい。

「ありがとう、セリエ!」

「どういたしまして……。」

「マザーシーグールと、この無数のシーグールの死体を保存できる場所はカノト村にあるの?」

「ええ……大きな倉庫があるから……そこで……保管しておきましょう……。」

    これで俺達とシーグールとの戦いはお終いだ。カノト村の脅威はもう無くなったはず……だよね?
    俺とマリーネ、そしてセリエはすぐに村長さんの所にこの事を報告しに行く事を決めた。

「ほう、シーグールを15匹以上討伐した上に、マザーシーグールまで討伐してくれたのか。それはありがたいな。君たちに感謝しよう。」

「それほどでもありませんよ。」

    俺達に感謝すると言う村長に、謙遜するマリーネ。
    人に感謝されると心が気持ちいいな、と俺は感じた。

「今夜はキミ達冒険者の勝利を祝して、宴を開こう!」

    村長さんは顔に笑顔を浮かべ、村で宴を催す事を宣言した。
    その日の夜、カノト村では大規模な宴が開かれた。
    俺はゴーレムなので食事はできなかったが、マリーネとセリエが食べてる豪華な食事は俺も食べてみたいなぁ……と率直に
思った。

    そんな俺は村の子供達の遊び相手をする事になって……

「ゴーレムさん!ゴーラマンごっこやろうよ!」

「ゴーラ……マン?なにそれ?」

    子供は俺と一緒に「ゴーラマンごっこ」なるものをやろうと言ってきた。ゴーラマンとは、この王国ミズノエの特級冒険者、マリオネ・トツカが従える巨大ゴーレムの事だと子供達は言っていた。  

「いけーゴーラマン!モンスターをやっつけろ!」

「ウイーン!ゴゴガゴゴ!ドカーン!」

    子供達に言われるがまま、俺は巨大ゴーレム、ゴーラマンを演じた。
    こんな風に子供達に囲まれる事なんて事初めてだし、かなり疲れるな……。

「リョータロー君!帰るわよ!」

    その後、食事を終えたマリーネに連れられ俺は宿に帰った。
    この日は朝も夜も大変だったなぁ。
    ゴーレムは肉体的疲労は感じないけど精神はかなり疲れたので、明日1日ぐらいはゆっくり休みたいものだ。
    俺はそう思いながら、マリーネに核を取られ眠りについた。



「マリーネ、おは……」

「リョータロー君、早く来て!」

    次の日、目が覚めて早々にマリーネに連れられ宿の外に出た俺は、マリーネは一体何を焦ってるんだ……と思いながら辺りを見渡す。

「リョータロー君、あれを見て!」

    俺はマリーネにそう言われ、彼女の指さす方に目をやった。
    マリーネが指さした空の彼方には、空を飛ぶ大きな影があり……寝ぼけてた俺でもそれが目に飛び込んできた事で意識が覚醒した。
    あれは……大きな黒いモンスター?それに周りには空を飛ぶゴーレムのようなものが……5体?あれがこの村に迫っているのか……!?



「あれがカノト村……そこに鬼島良太郎はいるのですね?」

    空飛ぶモンスターの上からカノト村を見つめる女性、リュウカは、隣にいる少女にそう聞き少女は嬉しそうに頷く。

「そうよ!待っててね……お兄ちゃん!」

    リュウカと共にモンスターに乗る少女、シャナは目を輝かせ、カノト村を見つめる。
    カノト村に再び脅威が迫る……!




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