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第1部 入校編
第1部11話 約束
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第1部11話 約束
「お前ら、何いい気になってやがるんだ?」
レッドはソフィの重力強化によってその場から動けないでいたが、自力でその効果範囲から抜け出した。
「ところであの狼男は一体何者なのかしら?」
「異能犯罪者で脱獄犯のレッドって男だ」
「それはまた随分な大物を相手にしていたのね」
「おい女、お前は殺しがいがありそうな能力してるじゃねぇか。こいつらを食った後のデザートにしてやるよ」
「ごめんなさい、私は獣の言葉を存じていないの……」
この言葉を聞いてレッドの目つきが変わった。
「オレは生意気な女が嫌いなんだ。てめぇら、仲良く殺してやらぁ!!」
ソフィに勢いよく向かっていくレッドの間に入りソフィに指示を飛ばす。
「ソフィこいつは俺がしばらく抑える! その間に2階の夏鈴を頼んでもいいか?」
「分かったわ!」
幸近はレッドの腕を弾き、技を繰り出す。
「山形流剣術 一の太刀『一閃』!」
幸近は唯との日々の剣術修行により、この技を習得していた。レッドの脇に攻撃が当たり、少し苦しがったがすぐにまた襲いくる。
「藤堂一刀流 居合 『虎風』」
交差した2人はその後、両者ともに膝をついた。レッドは口から血を吐き、幸近は左腕に切り傷を負った。
「俺の居合の間に攻撃を当てられたのは初めてだ……」
「その技は初見じゃねぇからな……。てめぇの母親のその技にオレは敗れたんだ」
「じゃあもう一度、母さんの代わりに俺がお前を刑務所に送ってやるよ」
「やってみろ……小僧」
「山形流剣術――」
幸近が剣技を繰り出す前に、レッドが距離を詰めて渾身の一撃を放つ。
「狼拳っ!!」
巨大な……そして強靭な上半身のバネを最大限に利用した強烈な拳が直撃し、幸近は倉庫の横幅いっぱいまで吹き飛ばされ壁に激突する。
「がはっあ……」
その衝撃で辺り一面に砂塵が舞った。
「この技を正面から受けて立った奴はいねぇ。さぁ女ぁ次はお前だ、降りてこい」
「まだ、終わってないみたいだけど?」
「なにぃ?」
レッドが振り返ると幸近は立ち上がっていた。
「藤堂くん、夏鈴ちゃんは無事よ! ここから援護するからもう遠慮せずにやりなさい」
「しつこい奴だ、さっさとくたばりやがれぇ!」
「重力強化!」
幸近の元へ向かうレッドの動きはソフィの能力により止まった。
「ぐわっ……く、さっきより重い……」
「今最大出力で動きを止めているわ!」
「サンキュー、ソフィ……」
「おいおっさん、居合っていうのは心の武術なんだ。その想いと心を落ち着かせる時間が長ければ長い程、力を増す」
レッドの前でゆっくりと構える幸近。
「くそっ、くそっ! うごけんっ……」
「藤堂一刀流 居合 『雲龍』!」
藤堂一刀流の居合には2種類の型があり、虎風は抜刀の後、横に振る剣。そして雲龍は抜刀の後、縦に振る剣である。
ソフィの重力強化が作用しているこの瞬間に、心を落ち着かせる時間を充分にとった幸近の雲龍は、レッドの頭上に重く、さらに重く打ちつけられた。
「ぐはぁっ……」
レッドは倒れ気を失うも、その後も重力強化によって地面へとめり込まされていた。
「おいソフィ、こいつもう気を失ってるぞ」
「分かっているわよ」
「わざとかよ……お前ちょっとは敵にも情け……」
先ほどまでのダメージがたたり、その場に倒れ込む幸近。
「藤堂君っ!!」
目が覚めると、そこは病院だった。
「藤堂くんっ!」
「お兄ちゃん!!」
「待ってて! すぐお医者さん呼んでくるから」
そう言ってソフィは病室を出ていった。
俺は元気そうな妹の姿に安堵する。
「夏鈴、無事で良かった……」
夏鈴は泣いていた。
「お兄ちゃん……よかった生きてて……。ホントに心配したんだから……ホントにホントに心配……したんだから……」
「ごめんな夏鈴。大丈夫……兄ちゃん体だけは丈夫なんだよ」
「もう無茶しないで……絶対にお母さんみたいに居なくならないで……」
「俺は夏鈴をおいていかない……あの時、そう約束したろ?」
「うん……。助けてくれてありがとう……」
「可愛い妹を助けるのなんて、兄にとってはご褒美みたいなもんなんだよ」
「お兄ちゃんのバカ……」
その後、病室にはクリスタ、山形、サーシャ、キリアも見舞いに来てくれた。俺は1週間ほど入院だそうだ。
同級生が帰っていくとレナード警部が事情聴取にやってきてレッドをはじめ、カタストロフの残党も1人を除いて逮捕した事を教えてくれた。
「藤堂君、まだ学生の君にあんな大物を捕らえられてしまっては、本当に私たちの面目は潰れっぱなしだよ」
「アイツは昔、俺の母が捕まえたって聞きました……。以前俺が言った同じ土俵で会いたい人がいるってのは、あれは母の事なんです」
「そうだったのか……」
「俺は小さい頃……母と同じ異能警察官になって、同じ制服を着て一緒に写真を撮ると約束したんです。だから俺はどんな事があろうと、必ずその制服を着てみせます」
「君のような勇敢な同僚と共に働ける日を楽しみに待っているよ。でもしばらくは、ゆっくり静養してくれ」
――薄暗い路地裏。
「まさかレッドを倒すだなんて、やるじゃないか藤堂君」
不気味に笑うスーツの男はそう言って闇に紛れた。
第1部11話 約束 完
名前:レナード・ローレン
髪型:青髪ベリーショート
瞳の色:黒
身長:182cm
体重:80kg
誕生日:7月5日
年齢:27歳
血液型:AB型
好きな食べ物:カレー
嫌いな食べ物:ピーマン
ラグラス:嘘発見器
対象の嘘を見抜くことができる
「お前ら、何いい気になってやがるんだ?」
レッドはソフィの重力強化によってその場から動けないでいたが、自力でその効果範囲から抜け出した。
「ところであの狼男は一体何者なのかしら?」
「異能犯罪者で脱獄犯のレッドって男だ」
「それはまた随分な大物を相手にしていたのね」
「おい女、お前は殺しがいがありそうな能力してるじゃねぇか。こいつらを食った後のデザートにしてやるよ」
「ごめんなさい、私は獣の言葉を存じていないの……」
この言葉を聞いてレッドの目つきが変わった。
「オレは生意気な女が嫌いなんだ。てめぇら、仲良く殺してやらぁ!!」
ソフィに勢いよく向かっていくレッドの間に入りソフィに指示を飛ばす。
「ソフィこいつは俺がしばらく抑える! その間に2階の夏鈴を頼んでもいいか?」
「分かったわ!」
幸近はレッドの腕を弾き、技を繰り出す。
「山形流剣術 一の太刀『一閃』!」
幸近は唯との日々の剣術修行により、この技を習得していた。レッドの脇に攻撃が当たり、少し苦しがったがすぐにまた襲いくる。
「藤堂一刀流 居合 『虎風』」
交差した2人はその後、両者ともに膝をついた。レッドは口から血を吐き、幸近は左腕に切り傷を負った。
「俺の居合の間に攻撃を当てられたのは初めてだ……」
「その技は初見じゃねぇからな……。てめぇの母親のその技にオレは敗れたんだ」
「じゃあもう一度、母さんの代わりに俺がお前を刑務所に送ってやるよ」
「やってみろ……小僧」
「山形流剣術――」
幸近が剣技を繰り出す前に、レッドが距離を詰めて渾身の一撃を放つ。
「狼拳っ!!」
巨大な……そして強靭な上半身のバネを最大限に利用した強烈な拳が直撃し、幸近は倉庫の横幅いっぱいまで吹き飛ばされ壁に激突する。
「がはっあ……」
その衝撃で辺り一面に砂塵が舞った。
「この技を正面から受けて立った奴はいねぇ。さぁ女ぁ次はお前だ、降りてこい」
「まだ、終わってないみたいだけど?」
「なにぃ?」
レッドが振り返ると幸近は立ち上がっていた。
「藤堂くん、夏鈴ちゃんは無事よ! ここから援護するからもう遠慮せずにやりなさい」
「しつこい奴だ、さっさとくたばりやがれぇ!」
「重力強化!」
幸近の元へ向かうレッドの動きはソフィの能力により止まった。
「ぐわっ……く、さっきより重い……」
「今最大出力で動きを止めているわ!」
「サンキュー、ソフィ……」
「おいおっさん、居合っていうのは心の武術なんだ。その想いと心を落ち着かせる時間が長ければ長い程、力を増す」
レッドの前でゆっくりと構える幸近。
「くそっ、くそっ! うごけんっ……」
「藤堂一刀流 居合 『雲龍』!」
藤堂一刀流の居合には2種類の型があり、虎風は抜刀の後、横に振る剣。そして雲龍は抜刀の後、縦に振る剣である。
ソフィの重力強化が作用しているこの瞬間に、心を落ち着かせる時間を充分にとった幸近の雲龍は、レッドの頭上に重く、さらに重く打ちつけられた。
「ぐはぁっ……」
レッドは倒れ気を失うも、その後も重力強化によって地面へとめり込まされていた。
「おいソフィ、こいつもう気を失ってるぞ」
「分かっているわよ」
「わざとかよ……お前ちょっとは敵にも情け……」
先ほどまでのダメージがたたり、その場に倒れ込む幸近。
「藤堂君っ!!」
目が覚めると、そこは病院だった。
「藤堂くんっ!」
「お兄ちゃん!!」
「待ってて! すぐお医者さん呼んでくるから」
そう言ってソフィは病室を出ていった。
俺は元気そうな妹の姿に安堵する。
「夏鈴、無事で良かった……」
夏鈴は泣いていた。
「お兄ちゃん……よかった生きてて……。ホントに心配したんだから……ホントにホントに心配……したんだから……」
「ごめんな夏鈴。大丈夫……兄ちゃん体だけは丈夫なんだよ」
「もう無茶しないで……絶対にお母さんみたいに居なくならないで……」
「俺は夏鈴をおいていかない……あの時、そう約束したろ?」
「うん……。助けてくれてありがとう……」
「可愛い妹を助けるのなんて、兄にとってはご褒美みたいなもんなんだよ」
「お兄ちゃんのバカ……」
その後、病室にはクリスタ、山形、サーシャ、キリアも見舞いに来てくれた。俺は1週間ほど入院だそうだ。
同級生が帰っていくとレナード警部が事情聴取にやってきてレッドをはじめ、カタストロフの残党も1人を除いて逮捕した事を教えてくれた。
「藤堂君、まだ学生の君にあんな大物を捕らえられてしまっては、本当に私たちの面目は潰れっぱなしだよ」
「アイツは昔、俺の母が捕まえたって聞きました……。以前俺が言った同じ土俵で会いたい人がいるってのは、あれは母の事なんです」
「そうだったのか……」
「俺は小さい頃……母と同じ異能警察官になって、同じ制服を着て一緒に写真を撮ると約束したんです。だから俺はどんな事があろうと、必ずその制服を着てみせます」
「君のような勇敢な同僚と共に働ける日を楽しみに待っているよ。でもしばらくは、ゆっくり静養してくれ」
――薄暗い路地裏。
「まさかレッドを倒すだなんて、やるじゃないか藤堂君」
不気味に笑うスーツの男はそう言って闇に紛れた。
第1部11話 約束 完
名前:レナード・ローレン
髪型:青髪ベリーショート
瞳の色:黒
身長:182cm
体重:80kg
誕生日:7月5日
年齢:27歳
血液型:AB型
好きな食べ物:カレー
嫌いな食べ物:ピーマン
ラグラス:嘘発見器
対象の嘘を見抜くことができる
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