明日は晴れますか

春紗

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第二話 薬屋の店主

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第二話

『準備中』

チリン…チリン…

「こんにちは」
ニッコリ
「…いらっしゃいませ」
「表の看板開店になっていませんでしたよ」
「今は準備中ですから」
店員は変わってないがこの表情。どうやら、硬貨はちゃんと主へと届いたようだ。
店内は昨日と変わっておらず、汚い。この様子では品物も変わってなさそうだ。品を確認し、掃除をするのは店員の役目のはずだ。なぜ、この者は掃除をしないのだろう。このままでは壁や床が腐り店が壊れてしまう。
(その前に客が来なくなる)
「今日は、店主にお会いできますか」
「私が店主だと言っているのですが」
「そうですか」
「営業妨害なら帰ってください」
「私は店主に会いにきだけです」
これは、試している。
近くから魔導具の使用している魔力気配がある。これは遠距離からでも状況を伝える魔導具だ。この状況を見ている。私の目的を安全なところから知るために…
「はぁ…なぜ、私が店主ではないと思いますか。あなたが昨日買った回復薬も私が作ったのですが」
「そうですね。理由はいくつかありますが決定付けた主な理由は薬草の間違いからです。昨日私が回復薬とニリンソウを頼みましたよね」
「はい」
「回復薬は合っていますが薬草を間違いています。」
「…間違いですか」
「一つは、薬屋なのに薬草を渡しましたね。薬屋は本来、買い取りは行いますが普通、薬草そのままを渡すことはありません。この行為は『私には調合できません』と意味しています。薬屋としてこの行為はプライドにかけてありえないことです」
「この店のやり方だとしたら…」
「それなら仕方がありませんね。できないということで…」
「………」
「次に二つ目は、薬草自体間違えています。ニリンソウと頼んだはずなのにトリカブトを渡しました」
「…!それはありえない。ニリンソウはギザギザ模様で葉は緑色で特徴的な葉に白い点模様があり間違えるはずがありません」
「これは一般的な間違いですね。確かに葉の部分は似ています。ですが、ニリンソウは根から葉柄が一本立ちします。それに比べトリカブトは葉柄は茎および根元から枝分かれして伸長します。…昨日の薬草はこれです」
私は、鞄から昨日買った薬草を見せた。
「どうですか。私が言った通り根元が違いますよね 」
「…確かにそうですね」
「薬屋を営む上でこの間違いは致命傷です。間違えれば信頼を失います。なので、知っていなければならないことを知らない貴方は店主ではないと断言できます。まぁ店員である者も知らないといけませんが」
「………」
「会わせてもらえませんか…本当の店主に」
「くっ…」
彼は見破られたことに悔しがっていた。
ガチャ…

カウンターの奥の扉が開いた。
(やっと出てきましたか)
その人は、顔は黒い仮面によって隠れていて黒い髪だ。身長は高い25~30代の男性だ。
「お初お目にかかります。店主…いえ魔法使い様」
「…お前は何者だ」
「旅のものです」
「何しに来た」
「貴方様にお願いがあります」
「…言ってみろ」
「この地で働かせてください」
「……働きたくば勝手にするがよい」
「貴方様はこの領地を治める大公爵様ですので許可を貰いたく」
ニッコリ
そう、あの2つの噂はこの一人の人物の事を言っている。
「…なぜそう思う」
「それは、この地で偉大な魔法使い様は大公爵様ただお一人です。私が先ほど魔法使い様とおっしゃた際に否定されなかったのが決定的ですね」
「ただの魔法使いかもしれんぞ」
「それはありえません。この店にある薬一つ一つには魔力が込められています。この魔力、技術や薬の性能はただの魔法使いが早々にできる芸当ではありません」
「…貴様は何をしたい」
「私はこの地でやりたいことがあります」
「…なんだ」
「私はこの地を快適で素晴らしい場所へと領地開拓をしていきたいのです」
「…なんだと。革命でもするのか」
「いえ、荒れ果てたこの地を変えていくのです。その為にも私を雇って欲しいのです」
「戯言を…」
「この地は荒れ果てております。住人も規定条件に満たしておらず首都は荒れ果てこの状態ではこの地は国に返還することになります」
「別に返還されてよい」
「…それは本心ではないでしょう」
「…帰れ」
「ここを守らせてください」
「…帰れ」
「それはできません」
「命令だ。帰れ…」
「では、こうしましょう。2週間以内に広場から北にある地区。住宅街を元の清潔で美しい場所へと戻しましょう。もし、できなければ罰として殺してください」
この人から威圧を感じる。そこまでしても帰ってほしいのだろう。でも私は、何があってもこの場を退く気はない。
「…いいだろう。できなければ二度とここへは来るな。すぐさま帰れ」
「はい。言質取りましたからね」
馬鹿にされたのに殺さないとはやはり優しい人だ。
「では、本日から清掃を始めさせていただきます」
ガチャ…

「……………」
『諦めろ』それだけを言い残し戻っていった。
すると、店員が腕を組みため息をつきながら
「貴方…馬鹿ですか」
「なぜですか」
「どう考えても不利でしょう。この広場の北の方はここよりも建物が崩れやすくカビや草に侵食されている。それに、この地がどんな姿をしていたのかは貴方は知らないはずです」
「ご心配無用です。私はここを素晴らしい場所へとするために来ました。…約束は必ず果たすそれが私のモットーです」
ニッコリ
必ず、この地を蘇らせる。そして、貴方様の想いも必ず…
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