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第108話 人型モンスター
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僕が即死魔法を唱えると、黒毛の牛は大きな音を立てて地面に転がった。
「いやあ、今日も助かったよ。『即死魔法』というのは便利だね」
牛舎の主人は僕に礼を言った。最近の僕は、ガントさんと大型モンスターを退治しにいく他に、食用の牛や馬を殺したり、人に危害を加えた大型の動物を殺処分したりもしていた。とにかく最近は、大型の動物やモンスターを殺さないとレベルが上がらないからだ。
レベルが上がるにつれて、大きな生き物が殺せるようになっていく。僕は、即死魔法の強力さを徐々に実感するようになっていた。
「最近、王都内で出没しているモンスターがいるのですが、防御力が高いと言いますか、なんの魔法を当ててもあまりダメージを受けないようです。なので、キルルくん」
「は、はい!」
ホームルームでいきなり名指しされて、僕は慌てて返事した。
「こんな時こそ君の出番です。皆さん、そのモンスターが出たらキルルくんに仕留めてもらいましょう。モンスターの特徴は……」
校長先生がモンスターについて説明を始める。そのモンスターは人型モンスターらしく、人に危害を加えるその瞬間まで、完璧に人間になりすましているらしい。
「そういえば、人型モンスターと、人間ってどう違うんだろう?」
ホームルームが終わったあと、僕はつぶやいた。人型モンスターと人間の違いは、なんとなくしか把握していなかったのだ。ちょうど横にいたリリイが教えてくれた。
「人型モンスターは、人間の姿に化けられるモンスターよ。完璧に人間に化けられるモンスターは珍しいわ。だいたい肌の色やパーツはモンスターの名残が残るものよ」
リリイは、モンスターの血が入っているだけあって詳しい。
「じゃあ、人型モンスターは、人型の姿は化けた姿で、本当の姿があるわけだ?」
「そうね」
リリイって、人型モンスターのことどう思ってるんだろう。一応人型モンスターの血が入っているなら仲間意識ないのだろうか。だけど、以前人型モンスターが現れたとき、容赦なく攻撃していたから、僕たちとそんなに認識変わらないんだろうか。僕は、この疑問をそれとなくリリイに尋ねた。
「仲間意識どころか、一番憎いモンスターだわ。人を攻撃する人型モンスターがいるから、お父様も私もいろいろ言われてしまうもの」
普段は穏やかな顔で話すリリイだが、この話をするときの顔は険しかった。
「なるほど。リリイはさ、モンスターの血が4分の1だから、ほとんど人間だけど、お父さんは半分モンスターだから大変そうだね。……それこそ、人型モンスターと人間のハーフって、どうなるの? モンスター扱いなの? 人間扱いなの?」
「ハーフの場合は、育ての親が人間で、中学校まで卒業すれば人間扱いになり適正検査を受けられるそうよ。その条件を満たしていないとモンスター扱いになるわ。お父様は、人間に育てられたから、中身は完全に人間なの。だけど、見た目は人間らしくない部分があるから苦労なさったみたい」
「……リリイは? リリイも大変だったんじゃないの?」
「そうね。肌の色についてはいろいろ言われたわ。『モンスター』だの『死神』だの……」
「『死神』って……」
どこの子供も、人と違う者には残酷である。リリイは蘇生魔道士だというのに、子供時代は死神呼ばわりなんて皮肉だ。
「リリイも大変だね……もしかして、最初リリイがこの学校嫌がってたのもそのせい?」
「それもあるわ。何より、都会が苦手っていうのが大きいけど」
学校の外に出ると、その人型モンスターの影響なのか、警備担当の戦士や魔法使いが街中をいつもより多く見回りに出ていて、物々しい雰囲気をしていた。
しばらくすると、ワープマンが僕のところに現れた。
「朝先生が言ってた人型モンスター見つけたぞ」
僕はワープマンに引き連れられ、そのモンスターのところへ向かう。
ワープマンの瞬間移動魔法で、やってきたのは民家の屋根だった。いきなり高い所に来て、驚いて落ちそうになったところをワープマンに支えられる。
「大丈夫か」
「うん」
屋根から見下ろしたところで、人型モンスターが暴れていた。すでに暴れているので、完璧に人に化ける状態ではなく、赤い肌をしている。
「倒すのはあれだね?」
「ああ、ここから届くか?」
返事の代わりに即死魔法を唱えた。今のレベルなら余裕の距離だ。瞬く間に人型モンスターは絶命した。
「おお、キルル、すごい!」
ワープマンと共に地上に降りる。人型モンスターは目を飛び出して絶命していた。
今回倒したモンスターは、今まで倒した中で、一番人間に近い。人を殺す時もこんな感じだろうか、と想像した。想像したところで特に何も変わらないけど。
「いやあ、今日も助かったよ。『即死魔法』というのは便利だね」
牛舎の主人は僕に礼を言った。最近の僕は、ガントさんと大型モンスターを退治しにいく他に、食用の牛や馬を殺したり、人に危害を加えた大型の動物を殺処分したりもしていた。とにかく最近は、大型の動物やモンスターを殺さないとレベルが上がらないからだ。
レベルが上がるにつれて、大きな生き物が殺せるようになっていく。僕は、即死魔法の強力さを徐々に実感するようになっていた。
「最近、王都内で出没しているモンスターがいるのですが、防御力が高いと言いますか、なんの魔法を当ててもあまりダメージを受けないようです。なので、キルルくん」
「は、はい!」
ホームルームでいきなり名指しされて、僕は慌てて返事した。
「こんな時こそ君の出番です。皆さん、そのモンスターが出たらキルルくんに仕留めてもらいましょう。モンスターの特徴は……」
校長先生がモンスターについて説明を始める。そのモンスターは人型モンスターらしく、人に危害を加えるその瞬間まで、完璧に人間になりすましているらしい。
「そういえば、人型モンスターと、人間ってどう違うんだろう?」
ホームルームが終わったあと、僕はつぶやいた。人型モンスターと人間の違いは、なんとなくしか把握していなかったのだ。ちょうど横にいたリリイが教えてくれた。
「人型モンスターは、人間の姿に化けられるモンスターよ。完璧に人間に化けられるモンスターは珍しいわ。だいたい肌の色やパーツはモンスターの名残が残るものよ」
リリイは、モンスターの血が入っているだけあって詳しい。
「じゃあ、人型モンスターは、人型の姿は化けた姿で、本当の姿があるわけだ?」
「そうね」
リリイって、人型モンスターのことどう思ってるんだろう。一応人型モンスターの血が入っているなら仲間意識ないのだろうか。だけど、以前人型モンスターが現れたとき、容赦なく攻撃していたから、僕たちとそんなに認識変わらないんだろうか。僕は、この疑問をそれとなくリリイに尋ねた。
「仲間意識どころか、一番憎いモンスターだわ。人を攻撃する人型モンスターがいるから、お父様も私もいろいろ言われてしまうもの」
普段は穏やかな顔で話すリリイだが、この話をするときの顔は険しかった。
「なるほど。リリイはさ、モンスターの血が4分の1だから、ほとんど人間だけど、お父さんは半分モンスターだから大変そうだね。……それこそ、人型モンスターと人間のハーフって、どうなるの? モンスター扱いなの? 人間扱いなの?」
「ハーフの場合は、育ての親が人間で、中学校まで卒業すれば人間扱いになり適正検査を受けられるそうよ。その条件を満たしていないとモンスター扱いになるわ。お父様は、人間に育てられたから、中身は完全に人間なの。だけど、見た目は人間らしくない部分があるから苦労なさったみたい」
「……リリイは? リリイも大変だったんじゃないの?」
「そうね。肌の色についてはいろいろ言われたわ。『モンスター』だの『死神』だの……」
「『死神』って……」
どこの子供も、人と違う者には残酷である。リリイは蘇生魔道士だというのに、子供時代は死神呼ばわりなんて皮肉だ。
「リリイも大変だね……もしかして、最初リリイがこの学校嫌がってたのもそのせい?」
「それもあるわ。何より、都会が苦手っていうのが大きいけど」
学校の外に出ると、その人型モンスターの影響なのか、警備担当の戦士や魔法使いが街中をいつもより多く見回りに出ていて、物々しい雰囲気をしていた。
しばらくすると、ワープマンが僕のところに現れた。
「朝先生が言ってた人型モンスター見つけたぞ」
僕はワープマンに引き連れられ、そのモンスターのところへ向かう。
ワープマンの瞬間移動魔法で、やってきたのは民家の屋根だった。いきなり高い所に来て、驚いて落ちそうになったところをワープマンに支えられる。
「大丈夫か」
「うん」
屋根から見下ろしたところで、人型モンスターが暴れていた。すでに暴れているので、完璧に人に化ける状態ではなく、赤い肌をしている。
「倒すのはあれだね?」
「ああ、ここから届くか?」
返事の代わりに即死魔法を唱えた。今のレベルなら余裕の距離だ。瞬く間に人型モンスターは絶命した。
「おお、キルル、すごい!」
ワープマンと共に地上に降りる。人型モンスターは目を飛び出して絶命していた。
今回倒したモンスターは、今まで倒した中で、一番人間に近い。人を殺す時もこんな感じだろうか、と想像した。想像したところで特に何も変わらないけど。
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