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第101話 恋人

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 僕の気持ちを聞かされたリリイは、大きな目を見開いて驚いている。リリイが言葉を紡ぎ出すまで、ほんの数秒だったのだが、恐ろしく長く感じた。
「ほんとに……? 私、いつも迷惑かけてばかりなのに」 
「迷惑なんかじゃないよ」
「キルルが私に親切なのは、『蘇生魔法』が必要になる立場だからじゃなくて?」
「違うよ。僕がそうしたかったからだよ。リリイのことが好きだから……」
「そう……キルルがそう思ってくれていたなんて、とても、嬉しい」
 
「私もキルルのこと好きよ」

 そう言ったリリイの頬は少し紅く染まっていた。
「ほんとに!? じゃ、じゃあ、恋人になってくれる?」
「ええ」
 なにこれ!?夢じゃないよね!?リリイが僕の彼女になった!嬉しい嬉しすぎる!こんなに嬉しいのは適正検査で即死魔法の素質を見つけてもらった時以来だ。いつも殺意で溢れかえる僕の胸の中が、このときだけは温かく包まれていくのを感じる。
「えええとじゃあよろしく!」
 あまりに嬉しくて言葉がおかしくなってしまったが、リリイは笑って受け入れていた。

 二年生になってからのリリイは、僕がいつもテスト前に勉強を見ていただけあって、去年ほど成績は悪くなかった。これから補講期に入るが、リリイは数学の補習が多少受けるだけで済みそうだ。僕は、例によって補講期はやることがなかった。なので、リリイの数学の補習が終わればだいぶ時間がある。今度こそ、今度こそはどこかに遊びに行きたい。

 僕はその日の夜眠れなかった。「私もキルルのこと好きよ」というリリイの言葉を何度も思い出してしまう。あの言葉を言ってくれたときの、朗らかなリリイの表情が頭から離れない。
 今まで、こんな形の幸せを感じたことなんてなかった。過去にいじめられていたから、僕は好意を向けられなれてなくて、嬉しくも戸惑ってしまう。
 今になって、僕が如何に殺伐とした感情を連れて生きていたかを痛感した。今僕を取り囲んでいる剥製達がそれを物語っている。おそらく僕の心は異常だったのだ。そして、リリイとの恋に繋がる時だけ僕は人間らしかったのだろう。周りのみんなが僕がリリイを好きなことに気づいていたのはこれが理由だろう。
 リリイのことを想っている時は、僕はたしかに「殺し」を忘れている。リリイを好きという気持ちと殺意は同居できないようだ。
 リリイがずっと側にいてくれたら、僕は殺人鬼にならなくて済むのかな。

 だけど、即死魔法を手放すのは、やっぱり嫌だな。僕はリリイも好きだけど、即死魔法も好きだ。
 


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