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第67話 目的

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「ずばり言うと、俺たちが向かっているのは王宮、女王様のところだね」
「女王様のところ!?」
 みんなは驚いている中、トイは説明する。
「わざわざ、先代の校長先生と現校長先生が示し合わせて俺たち連れていきたい場所なんて、限られてる。しかも、行って損はないところとなると、厄介なモンスターを倒させるとか、そういう仕事じみたことじゃない。となると、考えられるのは女王様との謁見ぐらいなんだよね」
「なんで女王様との謁見が考えられるの?」
 ショウが聞いた。
「俺たちは特殊魔道士で、学校を卒業したら国のために働くことになる。名誉っちゃ名誉だけど、特殊魔道士の素質が見つかるなり学校に強制入学させられて、国のために働け、とただ言われても面白くないやつがいてもおかしくない。だから、女王様が直々に、『この国をお願いね』ぐらいの言葉をかける機会ぐらいは作るはずだよ。問題はその機会だけど、学校に入学したばかりだと、特殊魔道士の自覚が薄くてまだ早い。そして卒業前に女王様に引き合わせるには特殊魔道士は強すぎて危険だ。特にうちの学年はね……。弱すぎず強すぎずの時期を選ぶはず。だから中だるみ期の今、志気向上も兼ねて、謁見の機会を持ってきた、と見た」
「女王様の謁見のために、なぜわざわざダンジョンを抜けなきゃいけないんだ?」
 ポールトーマスが聞いた。
「単純に俺らの修行をかねて、というかダンジョンを無事抜けた際のご褒美、なのかと思ってたけど違うね。うちのクラスの女子の能力を調査が目的だ。なんで女子なのかというと、うちの女王様は数年以内に退位が決まっている。つまり新女王様の誕生が近い。今、国は新女王様の護衛職にふさわしい女子の優れた魔道士を探しているのさ。特殊魔道士はその最たる候補のはず。その先代の校長はスケベじじいと見せかけてそうじゃねえ。スケベじじいだったらカランドが男とわかった時にもっとがっかりしてるね」
「ふーむ、せっかくサプライズにしようかとダンジョンにしたのに、早々に見破られてしもうたわい」
 先代の校長先生が言うと、だから校長先生、ヒントあげすぎなんですってと現校長先生が言った。
「ほほ、ちょっと甘く見とったわい。たしかにこのダンジョンの出口は王宮じゃ。ただ抜けるには少々複雑な作りにしとるぞ。まだまだかかるぞ」
「よし、女王様が待ってらっしゃるなら行くしかないな。出発しよう」
 ポールトーマスを先頭に皆歩き出した。
 なるほど、僕はこの先に王宮があるなんて思いもしなかった。ただ、「うちの学年の特殊魔道士が卒業前に女王様に謁見するのは危険」の理由は、僕であることはわかった。トイがあの話をしたとき、トイと校長先生と先代の校長先生は僕を見ていたから。

 目的地がわからない旅は果てしなく長く感じるが、目的地がわかると気分はだいぶ楽になる。ワープマンとリャが細かいルートを潰してくれているおかけで着実に王宮に近づいていた。
「しかし、今日はだいぶ歩いてるな。少し仮眠しようか」
 ポールトーマスが言った。ポールトーマスよ横を歩いているネルがだいぶ眠そうにしている。地下を歩いているのでわかりづらいがもう夜なのだろう。
「あっちの道の向こうに宿があったぞ」
 細かい曲がり道を調査したあと合流したワープマンの言葉に、皆ついていけなかった。
「へ!? 宿屋!?」
「こっちだ」
 ワープマンに案内されると、本当に宿屋の看板があった。
「なんでこんなところに宿屋……?」
 さすがのトイも意味不明らしく首を傾げる。
「ここの上の建物にも宿屋の看板あったじゃろう?」
「だからなんでこんなダンジョンの奥に宿屋……?」
 謎だらけだがとりあえず宿屋に入った。皆疲れていたからだ。
「いらっしゃいませ」
 青色の肌をした男の人が僕たちを出迎えた。
「すいません。驚かれたでしょう。私は「通訳魔道士」のヤクと申します。皆さんと同じ特殊魔道士ですが人間と人型モンスターのハーフです。だからこの見た目でして。お部屋にご案内しますね」
 男子と女子は別々にそれぞれ部屋をあてがわれ、一泊することになった。宿泊代はいらないようだ。泊まる部屋は、とても綺麗な部屋だった。王宮を書いた大きな絵が飾ってあった。
「今日はここでみんなで寝るのかあ。枕投げでもする?好きな女子について語る?」
「トイは好きな女子っているの?」  
 僕が聞くと、
「へ!? いやいや冗談だし! 寝るぞ!」 
 ごまかされて寝てしまった。皆も疲れていたのかあっさり寝てしまった。

 僕は寝る前に宿を出た。宿の周辺にいたモンスターを殺してまわった。
「やはり、即死魔道士というのは毎日何かしら殺して回らんと気がすまんか?」  
 僕がビクッとして後ろを振り向くと、先代の校長先生がいた。
「い、いえ、今日ほとんど魔法使ってないし、寝る前に魔力使わないともったいないと思ってしまって、他のみんなは魔法たくさん使ってレベル上がっているだろうし」
「……今はレベル上げという名目があるからそれでいいがの。レベル100になっても何かを殺すのが止められんのが『即死魔道士』じゃ。少なくともわしが今まで見た『即死魔道士』は全員そうじゃった。君は今まで見た『即死魔道士』の中で一番穏やかな雰囲気をしとるが、上手いこと内面を隠しとるようにしか見えんがの」
「え……」
「まあ、レベル100になって殺しがやめられなかったらこのダンジョンで暮らせばよいよ。ここは、地上で暮らすのが向いていない特殊魔道士の住処じゃから」
 そう言って先代の校長先生は、宿に戻っていった。

 
 




 
  
 
 




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