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第28話 故郷へ
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ノースリタシティで合同帰省の旅はお開きになった。ここからは各自自分の故郷に帰ることになる。
「じゃあ、キルル、カランド、気をつけてな」
ポールトーマスは、ノースリタシティ出身なので、ここで旅は終わりだ。カランドも、僕とは故郷の方向が少し違うためここでお別れになった。一般魔法クラスの生徒ともここで解散した。
僕は故郷までは馬車で二日かかる。ノースリタシティの戦士が運転する馬車で行くことにした。馬車で行く道中で現れたモンスターは、僕が即死魔法で倒した。
そして、無事故郷に帰って来た。僕の故郷は、ノースケイトリバーという、川沿いの静かな町だ。夏でも、王都より涼しい。
僕は、家族以外に会いたい人はいないので、真っ直ぐ実家に向かった。
「おや、キルル、おかえりなさい!」
母さんはなにか料理している最中だったが、玄関先の僕の姿を見るなり料理を放り出して駆け寄ってきた。父さんはまだ仕事に出ているようだ。
「元気そうでよかったわ」
母さんは、僕にいろいろ聞いてきた。定期的に手紙は書いていたが、それでは足りなかったのだろう。母さんとしては、僕の魔法のレベルが上がることより、学校生活が上手くいっている方が嬉しそうだった。実際、中学までと比べれば、かなり楽しい学校生活ではある。皆、仲良しというより、個人主義なのだと思う。各々特殊魔法のレベルを上げるため普段からバラバラに活動しているので、そうならざるを得ないのだ。だけどその方が僕も居心地が良かった。リリイとはもう少し仲良くなりたいけれど。
「キルル、誕生日まではうちにいなさいね。お祝いしなくちゃ」
そうだ、僕は、もうすぐ誕生日で、16歳になる。
父さんも仕事から帰ってきて、久々に家族で夕食を食べた。
夕食後、僕は自分の部屋に入った。この部屋に入るのも久しぶりだ。僕の部屋の本棚には昔読んだ魔導書や魔法小説が並んでいた。中身を見てみると、一般魔法の初歩の呪文が書いてある。結局僕はこの辺の魔法とは無縁だったけど、魔法学校には入れた。想像とは違ったけれど夢が叶っているのだ。旅の途中でも魔法を使ったから多少はレベルも上がっているはず。家も悪くなかったが僕は早くも学校に戻りたくなっていた。母さんに言われた通り誕生日まではいるけど。
今ごろ、僕をいじめていたやつらはどうしているだろう。近くの戦士学校か魔法学校にいるだろうか。僕に特殊魔道士の素質が見つかり、国立魔道士養成学校に通っていることは、周りに言わないように母さんと父さんに言ってある。僕にこの力があることはいじめっ子には知られたくない。向こうに命を狙っていることを気づかれたら困るのだ。
学校から着てきた服は、母さんに洗濯されてしまったので、昔持っていた服に着替えた。昔の服を着ると、田舎者のいじめられっ子に逆戻りしたようで少し辛くなったが仕方ない。
外を歩いても、昔のクラスメイトに会うかもと思うと憂鬱だったので、部屋で王都から持ってきた本を読んだり、母さんを手伝ったりと、家の中で大人しく過ごした。
数日後誕生日を迎え、僕は16歳になった。
家の中でひっそり祝ってもらった。料理は母さんが張り切って僕の好物ばかり作った。
「キルル、おめでとう」
「ありがとう」
「18歳までは家にいてくれるものと思っていたけど、寮に入ってしまったからね。誕生日ぐらいはちゃんとお祝いしたかったのよ」
母さんは、内心は僕が家を出てしまったのがとても寂しいのだろう。
「母さん、父さん、僕が大人になったら王都に引っ越さない?」
「え?」
「僕は、学校を出たあとは王都所属の即死魔道士になるから、もうここで暮らすことはないよ。だから、母さんも父さんも王都に来たらどうかなって」
「そうねえ……だけど、今更街中で暮らせるかしら。母さんも父さんも、この町から出たことがないもの」
「そっか……いや、提案しただけで、母さんと父さんがここにいたいならそれでいいんだ」
僕はこれ以上この話はしなかった。
「キルル、もう王都に帰るの?もう少しいてもいいのに」
「うん、また冬にも帰ってくるから」
僕は、翌日には町を出た。来たときと同じように戦士が操縦する馬車に乗った。僕は一度だけ振り返って故郷の町を眺めた。いじめられたことなどがあり、この町があまり好きじゃない。だけど、家族との思い出もある。だから嫌いにもなれなかった。
「じゃあ、キルル、カランド、気をつけてな」
ポールトーマスは、ノースリタシティ出身なので、ここで旅は終わりだ。カランドも、僕とは故郷の方向が少し違うためここでお別れになった。一般魔法クラスの生徒ともここで解散した。
僕は故郷までは馬車で二日かかる。ノースリタシティの戦士が運転する馬車で行くことにした。馬車で行く道中で現れたモンスターは、僕が即死魔法で倒した。
そして、無事故郷に帰って来た。僕の故郷は、ノースケイトリバーという、川沿いの静かな町だ。夏でも、王都より涼しい。
僕は、家族以外に会いたい人はいないので、真っ直ぐ実家に向かった。
「おや、キルル、おかえりなさい!」
母さんはなにか料理している最中だったが、玄関先の僕の姿を見るなり料理を放り出して駆け寄ってきた。父さんはまだ仕事に出ているようだ。
「元気そうでよかったわ」
母さんは、僕にいろいろ聞いてきた。定期的に手紙は書いていたが、それでは足りなかったのだろう。母さんとしては、僕の魔法のレベルが上がることより、学校生活が上手くいっている方が嬉しそうだった。実際、中学までと比べれば、かなり楽しい学校生活ではある。皆、仲良しというより、個人主義なのだと思う。各々特殊魔法のレベルを上げるため普段からバラバラに活動しているので、そうならざるを得ないのだ。だけどその方が僕も居心地が良かった。リリイとはもう少し仲良くなりたいけれど。
「キルル、誕生日まではうちにいなさいね。お祝いしなくちゃ」
そうだ、僕は、もうすぐ誕生日で、16歳になる。
父さんも仕事から帰ってきて、久々に家族で夕食を食べた。
夕食後、僕は自分の部屋に入った。この部屋に入るのも久しぶりだ。僕の部屋の本棚には昔読んだ魔導書や魔法小説が並んでいた。中身を見てみると、一般魔法の初歩の呪文が書いてある。結局僕はこの辺の魔法とは無縁だったけど、魔法学校には入れた。想像とは違ったけれど夢が叶っているのだ。旅の途中でも魔法を使ったから多少はレベルも上がっているはず。家も悪くなかったが僕は早くも学校に戻りたくなっていた。母さんに言われた通り誕生日まではいるけど。
今ごろ、僕をいじめていたやつらはどうしているだろう。近くの戦士学校か魔法学校にいるだろうか。僕に特殊魔道士の素質が見つかり、国立魔道士養成学校に通っていることは、周りに言わないように母さんと父さんに言ってある。僕にこの力があることはいじめっ子には知られたくない。向こうに命を狙っていることを気づかれたら困るのだ。
学校から着てきた服は、母さんに洗濯されてしまったので、昔持っていた服に着替えた。昔の服を着ると、田舎者のいじめられっ子に逆戻りしたようで少し辛くなったが仕方ない。
外を歩いても、昔のクラスメイトに会うかもと思うと憂鬱だったので、部屋で王都から持ってきた本を読んだり、母さんを手伝ったりと、家の中で大人しく過ごした。
数日後誕生日を迎え、僕は16歳になった。
家の中でひっそり祝ってもらった。料理は母さんが張り切って僕の好物ばかり作った。
「キルル、おめでとう」
「ありがとう」
「18歳までは家にいてくれるものと思っていたけど、寮に入ってしまったからね。誕生日ぐらいはちゃんとお祝いしたかったのよ」
母さんは、内心は僕が家を出てしまったのがとても寂しいのだろう。
「母さん、父さん、僕が大人になったら王都に引っ越さない?」
「え?」
「僕は、学校を出たあとは王都所属の即死魔道士になるから、もうここで暮らすことはないよ。だから、母さんも父さんも王都に来たらどうかなって」
「そうねえ……だけど、今更街中で暮らせるかしら。母さんも父さんも、この町から出たことがないもの」
「そっか……いや、提案しただけで、母さんと父さんがここにいたいならそれでいいんだ」
僕はこれ以上この話はしなかった。
「キルル、もう王都に帰るの?もう少しいてもいいのに」
「うん、また冬にも帰ってくるから」
僕は、翌日には町を出た。来たときと同じように戦士が操縦する馬車に乗った。僕は一度だけ振り返って故郷の町を眺めた。いじめられたことなどがあり、この町があまり好きじゃない。だけど、家族との思い出もある。だから嫌いにもなれなかった。
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