上 下
13 / 138

第13話 レベル2への道

しおりを挟む
 翌日には、僕の体調は回復していた。ホームルームは全員出席していて、校長先生はとても喜んでいた。
「キルルさん、昨日はどこで魔法を使ったのですか?」
 ホームルームの後、校長先生に聞かれたので、答えると、
「ということは、草を枯らしたいけど特に手入れしたい花壇もないから、適当に校庭に行った感じですか?」
「そうです」
「でしたら、せっかくなので、校長先生がお願いしたい場所の除草作業してもらえませんか?」
「はい」
「ありがとうございます。キルルさんが個人的に手入れしたい花壇ができたりしたら、そっちを優先してくれて構いませんからね。先生のお願いは、即死魔法を使いたいけどふさわしい対象がないときに活用してくれればいいです」
「はい」
 僕は、昨日あっさり魔法を使えるようになったため、魔法の発動の訓練をする「魔法基礎」の授業はパスした。なので今日は特に受ける授業もなく暇だったので、早速校長先生の依頼を受けることにした。

 連れてこられたのは、学校の玄関の横にある花壇だった。色とりどりの花が植えてある。
「この花壇に生えている雑草の除草をお願いしたいのですが、いいですか?」
「はい」
「雑草だけですよ。大事なお花は枯らさないように気をつけてくださいね」
「はい」
「ありがとうございます。ではお願いします。といっても、今日も少しの量の草を枯らしたところで魔力が切れて疲れると思うので、今日一気に除草しなくていいですからね。魔力を使い切ったら休んでくださいね」
「わかりました」
 校長先生が姿を消すと、早速僕は除草に取り掛かった。雑草の部分に足を置き、昨日と同じように草木を枯らす即死魔法の呪文を唱える。
 昨日と同じように雑草が茶色くなり枯れてゆく。枯れるのは僕の足の周り数センチだから、花には影響なかった。
 昨日と同じで二回魔法を唱えるだけで疲れが襲ってきた。昨日よりは少しましだったが、それでももうこれ以上なにもできる状態じゃなかったので寮に戻ることにした。
 僕が除草した範囲を見ると、一つの花の周りの雑草がわずかになくなっただけで、除草を頼まれた花壇の十分の一の範囲だった。
 はっきり言って、即死魔法を使わず、自分の手で引いた方がたくさんの雑草を除去できただろう。
 しかもその後は寮で休むしかなく、ほぼ一日無為に過ごしてしまった。
「くそ、これなら他にいろいろやってから除草作業をすればよかった……」
 昨日も今日も、半日寝たきりとは。即死魔法もなかなか大変だ。 
 ちなみに僕はまだレベル1だ。レベルを測ってくれる魔法陣がロビーにあるのだが、さっき自室に帰る前に測ってみた。「レベル1。レベル2まではまだまだ」と表示された。

 レベル100は、だいぶ先のようだ。三年かけてレベル100を目指すのだから当然だが、現状のなんと地味なことか。

 自室のベットに横になり、天井を見つめながら、僕は自分の非力さを心の中で嘆いていた。


 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

処理中です...