上 下
8 / 13

勇気

しおりを挟む

私がマンドラゴラ達と新しい二人の仲間と共に山道を登って行くと、背中を丸めて震えている黒ライオンが道を塞いでいるのが見えました。

「ライオンさん、道を通して下さい。先へ進みたいのです。」

私は、ライオンなのにちっとも怖そうでないこの黒ライオンに近づいて声をかけました。

「ヒィーッ!だっ誰だ!おっ俺に何をする気なんだ!」

黒ライオンは大きい体を小刻みに震わせながら、私達を警戒していました。

あら、可愛い。大きな黒猫みたい。

「私はカテリーナと申します。私共は、傷ついた者を探して救う旅をしているのです。どうか道をあけて下さい。先へ進みたいのです。」

私がそう言うと、黒ライオンは目を丸くして驚きました。ですが途端に怖い顔をして語り始めました。

「お前達!この先を行くというのか、何と愚かな‥‥。 この先には悪い魔女がいるんだぞ! 

俺は見たんだ。悪い魔女がやってきて、この山を登り、中腹にある大木の洞穴に入っていくのをずっと見てたんだ。

あの魔女は‥‥とにかく悪い魔女で、俺はあの魔女に‥‥うっうっ。」

黒ライオンは、とうとう泣き出してしまいました。

「ライオンさん、僕はとある国で宰相を務めておりましたかかしです。あなたは、悪い魔女がこの島にやってきた事に対して怯えているのですね。ところで、どうして道の真ん中で丸くなって震えているのですか?」

かかしさんが優しく語りかけると、黒ライオンは静かに話し始めました。

「‥‥聞いてくれるか。俺はとある国の王子だった。だが、悪い魔女に魔法をかけられてライオンにされたんだ。

ライオンになってからは、サーカス団に売られて毎日朝起きてから寝るまで一日中芸を覚えさせられた。そのうち俺が人間に歯向かわない事が分かると、人間達は芸を覚えない俺に対し鞭を打ち始めた。一日中芸を練習して鞭打たれる毎日に、俺は疲れてしまった。そして、隙を見てサーカス団を抜け出して崖の上から身を投げたんだ。

気がつくとこの島にたどり着いていた。この島は平和で悪い魔女も人間もいなくて、とても心穏やかな毎日を送っていたんだ。

なのに、悪い魔女がこの島へ入ってきた。姿かたちは変わっていたが、俺には魔女の呪いの魔法がかかっているから、あの女が悪い魔女だと分かるんだ。悪い魔女は、きっとこの島を乗っとる。そして、この世界全体を混乱や恐怖で満たすだろう。

俺はこの島やこの島に住む皆んなを守りたいのに、悪い魔女が怖くて立ち向かう事が出来ないんだ。悪い魔女をやっつけたくて、魔女の住む洞穴に向かおうとしたんだけど、結局出来なかった。俺に勇気があれば‥‥。俺が弱虫でなければ‥‥。うっうっ。」

黒ライオンは話すだけ話すとまた泣き始めてしまいました。

「あの、私はとある国で騎士をしておりましたブリキの木こりです。良ければ私共と悪い魔女に立ち向かいませんか?あなた一人で立ち向かおうとするから怖いのです。私達全員で立ち向かえば、きっと悪い魔女にも勝てると思いますよ。」

えっ、ブリキの木こりさんは悪い魔女と闘おうと言うのです。勿論私も悪い魔女が、この島を乗っとり、この世界を混乱や恐怖で満たすのは阻止したいです。

ですが、まだ聖女の修行も終えていません。私は戦力になれるのでしょうか。ああ、でも考えてる時間はなさそうです。この島に悪い魔女はすでに上陸しています。

キュキュキュキュ

「マンドラゴラ達‥‥そうね、分かった。私達には悪い魔女に立ち向かう以外に選択肢はないわね。ヨシ!覚悟を決めたわ。皆んなで悪い魔女に立ち向かいましょう!」


私が覚悟を決めてそう言うと、黒ライオンさんは、泣くのをやめて立ちあがりました。

「皆さんありがとうございます。皆さんと一緒なら俺も闘える気がします。俺のことは、ライオンとお呼び下さい。宜しくお願いします。」

ライオンさんが覚悟を決めてそう言うと、マンドラゴラ達が手を繋いで輪を作り始めました。自然と私やかかしさん、ブリキの木こりさん、ライオンさんも手を繋いで輪に加わります。全員でひとつの輪になった時、輪の中に光の柱が立ちあがりました。

キュキュキュ!

「この光の柱の中へ皆んなで入れば、魔女の住む洞穴へ行けるのね。」

キュキュキュ、キュー!

「さぁ、行きましょう!悪い魔女のもとへ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 セントフェアファクス皇国徒士家、レイ家の長女ラナはどうしても持参金を用意できなかった。だから幼馴染のニコラに自分から婚約破棄を申し出た。しかし自分はともかく妹たちは幸せにしたたい。だから得意の槍術を生かして冒険者として生きていく決断をした。

笑わない(らしい)黒の皇子の結婚~元聖女の皇子の強すぎる執着を元黒竜の訳あり令嬢は前向きに検討することにしました~

HarukaR
ファンタジー
訳あり令嬢のシャルは、笑わないと評される皇国第二皇子にいきなり求婚され、完璧すぎる皇子の自分に向けられる想いに当惑する。実は二人は、伝説の勇者一行の『銀の聖女』とその『守護竜』の転生した姿だったのだ。徐々に明らかになる『伝説』の不都合な真実。そして、皇子をしつこく付け狙う暗殺者の影。はたして、二人は無事に結婚できるのか?今生の二人に幸せな未来は訪れるのか?一生懸命なのにどこかずれてる二人のラブ&バトルストーリーが始まる。

ループ22回目の侯爵令嬢は、猫以外どうでもいい ~猫ちゃんをモフっていたら敵国の王太子が求婚してきました~

湊祥@書籍13冊発売中
ファンタジー
スクーカム「べ、別に猫がかわいいだなんて思ってないんだからな?」 ソマリ「は、はあ……?」 侯爵令嬢ソマリ・シャルトリューは、十五歳で無実の罪を理由に婚約破棄され修道院送りとなり、二十歳で隣国との戦に巻き込まれて命を落とす……という人生を、すでに21回も繰り返していた。 繰り返される人生の中、ソマリはそれまで一度も見たことが無かった猫と出会う。 猫は悪魔の使いとされ、ソマリの暮らす貴族街には侵入を許していなかったためだ。 ソマリ「これが猫……! な、なんて神がかり的なかわいさなのっ。かわいが過ぎて辛い……! 本気を出した神が作りし最高傑作に違いないわ!」 と、ソマリは猫のかわいさに心酔し、「どうせ毎回五年で死ぬんだし、もう猫ちゃんとのんびり過ごせればそれでいいや」と考えるようになる。 しかし二十二回目の人生ではなんと、ソマリの死因である戦を仕掛けた、隣国サイベリアン王国の王太子スクーカム・サイベリアンが突然求婚してきて!? そのスクーカム、「流麗の鉄仮面」というふたつ名を持ち、常に冷静沈着なはずなのになぜか猫を見せると挙動不審になる。 スクーカム「くっ……。そのふわふわの毛、甘い鳴き声、つぶらな瞳……なんという精神攻撃だ……!」 ソマリ「あの、息苦しそうですけど大丈夫ですか?」 ――よくわからないけれど結婚とか別にしなくて大丈夫です! 私は猫ちゃんをかわいがれれば他のことはどうでもいいんですからっ。 猫モフモフラブストーリー、開幕!

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

婚約破棄は結構ですけど

久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」 私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。 「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」 あーそうですね。 私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。 本当は、お父様のように商売がしたいのです。 ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。 王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。 そんなお金、無いはずなのに。  

処理中です...