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勇気
しおりを挟む私がマンドラゴラ達と新しい二人の仲間と共に山道を登って行くと、背中を丸めて震えている黒ライオンが道を塞いでいるのが見えました。
「ライオンさん、道を通して下さい。先へ進みたいのです。」
私は、ライオンなのにちっとも怖そうでないこの黒ライオンに近づいて声をかけました。
「ヒィーッ!だっ誰だ!おっ俺に何をする気なんだ!」
黒ライオンは大きい体を小刻みに震わせながら、私達を警戒していました。
あら、可愛い。大きな黒猫みたい。
「私はカテリーナと申します。私共は、傷ついた者を探して救う旅をしているのです。どうか道をあけて下さい。先へ進みたいのです。」
私がそう言うと、黒ライオンは目を丸くして驚きました。ですが途端に怖い顔をして語り始めました。
「お前達!この先を行くというのか、何と愚かな‥‥。 この先には悪い魔女がいるんだぞ!
俺は見たんだ。悪い魔女がやってきて、この山を登り、中腹にある大木の洞穴に入っていくのをずっと見てたんだ。
あの魔女は‥‥とにかく悪い魔女で、俺はあの魔女に‥‥うっうっ。」
黒ライオンは、とうとう泣き出してしまいました。
「ライオンさん、僕はとある国で宰相を務めておりましたかかしです。あなたは、悪い魔女がこの島にやってきた事に対して怯えているのですね。ところで、どうして道の真ん中で丸くなって震えているのですか?」
かかしさんが優しく語りかけると、黒ライオンは静かに話し始めました。
「‥‥聞いてくれるか。俺はとある国の王子だった。だが、悪い魔女に魔法をかけられてライオンにされたんだ。
ライオンになってからは、サーカス団に売られて毎日朝起きてから寝るまで一日中芸を覚えさせられた。そのうち俺が人間に歯向かわない事が分かると、人間達は芸を覚えない俺に対し鞭を打ち始めた。一日中芸を練習して鞭打たれる毎日に、俺は疲れてしまった。そして、隙を見てサーカス団を抜け出して崖の上から身を投げたんだ。
気がつくとこの島にたどり着いていた。この島は平和で悪い魔女も人間もいなくて、とても心穏やかな毎日を送っていたんだ。
なのに、悪い魔女がこの島へ入ってきた。姿かたちは変わっていたが、俺には魔女の呪いの魔法がかかっているから、あの女が悪い魔女だと分かるんだ。悪い魔女は、きっとこの島を乗っとる。そして、この世界全体を混乱や恐怖で満たすだろう。
俺はこの島やこの島に住む皆んなを守りたいのに、悪い魔女が怖くて立ち向かう事が出来ないんだ。悪い魔女をやっつけたくて、魔女の住む洞穴に向かおうとしたんだけど、結局出来なかった。俺に勇気があれば‥‥。俺が弱虫でなければ‥‥。うっうっ。」
黒ライオンは話すだけ話すとまた泣き始めてしまいました。
「あの、私はとある国で騎士をしておりましたブリキの木こりです。良ければ私共と悪い魔女に立ち向かいませんか?あなた一人で立ち向かおうとするから怖いのです。私達全員で立ち向かえば、きっと悪い魔女にも勝てると思いますよ。」
えっ、ブリキの木こりさんは悪い魔女と闘おうと言うのです。勿論私も悪い魔女が、この島を乗っとり、この世界を混乱や恐怖で満たすのは阻止したいです。
ですが、まだ聖女の修行も終えていません。私は戦力になれるのでしょうか。ああ、でも考えてる時間はなさそうです。この島に悪い魔女はすでに上陸しています。
キュキュキュキュ
「マンドラゴラ達‥‥そうね、分かった。私達には悪い魔女に立ち向かう以外に選択肢はないわね。ヨシ!覚悟を決めたわ。皆んなで悪い魔女に立ち向かいましょう!」
私が覚悟を決めてそう言うと、黒ライオンさんは、泣くのをやめて立ちあがりました。
「皆さんありがとうございます。皆さんと一緒なら俺も闘える気がします。俺のことは、ライオンとお呼び下さい。宜しくお願いします。」
ライオンさんが覚悟を決めてそう言うと、マンドラゴラ達が手を繋いで輪を作り始めました。自然と私やかかしさん、ブリキの木こりさん、ライオンさんも手を繋いで輪に加わります。全員でひとつの輪になった時、輪の中に光の柱が立ちあがりました。
キュキュキュ!
「この光の柱の中へ皆んなで入れば、魔女の住む洞穴へ行けるのね。」
キュキュキュ、キュー!
「さぁ、行きましょう!悪い魔女のもとへ。」
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