捨てられたお姫様

みるみる

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40、リナと両親との対面

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バンデル王子がナステカ王国のお城に泊まった翌日、お城や王都は占い師が呼び出した亡霊達で溢れかえっていて大変な騒ぎとなっていました。

それに、お城の地下牢を飛び出した蝋燭や蝙蝠達が人間を襲って被害もたくさん出ていたのです。

「‥王様、大変です。亡霊や蝋燭のお化けや人語を話す蝙蝠の被害があちこちで報告されてます。どうすれば‥。」

お城の者達が王様に指示を仰ぎました。

ですが、王様は亡霊だとかお化けだとかよく分からない事を考えるのが面倒臭い為、全てバンデル王子とナターシャ姫に任せる事にしました。

「‥全てナターシャとバンデル王子に任せてある。彼らの指示に従うように‥。」

王様はそう言って、王妃と共にゆっくりと朝食をとるのでした。

「‥‥分かりました。」

お城の者達は、王様に指示を貰えないと分かるととてもがっかりしました。

そして、仕方なくナターシャ姫のもとへ急ぎ足で向かいました。


「‥あなた、まさかこの部屋にはお化けは出ないわよね?」

「‥大丈夫だろう。この部屋の扉には護衛がいるし、我々の後ろには侍女達が控えている。それに‥。」

ガタガタッ、バタンッ!

王様が話し始めた途端に大きな音がしました。そして王様の席の後ろに突然二人の人物が現れました。一人は男、もう一人はナターシャ姫にそっくりな薄汚い格好をした女でした。

「キャーッ!あなた、あなたの後ろに‥ナターシャそっくりの薄汚い女がいるわ!」

「うわぁ!」

王様達は、驚いて椅子から転げ落ちそうになりました。

「だっ誰だ!‥お前達は人間か?‥‥それに、お前は‥ナターシャなのか?」

「‥‥‥。」

リナはさっきまで山の中にいたのに突然この部屋に飛ばされた為、部屋の様子をぐるりと見回したり、怯えた様子の王様や王妃様を見て、首を傾げました。

「ラナン、ここがどこか分かる?」

リナがラナンにそう問うと、ラナンはニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべて答えました。

「‥ああ、よく分かるよ。ここはリナの産まれたお城の中だ。‥そして目の前にいるのが君の両親だ。」

ラナンは王様に近づき、王様の先ほどの質問に答えました。

「僕達が人間かどうか知りたいのですか?僕達はあなたの送った暗殺者に殺された哀れな男女の亡霊ですよ。

特にこの女性‥ナターシャ姫に似てますよね?この女性は、あなたが暗殺者を送って殺したナターシャ姫の姉ですよ。‥‥あなた達への恨みの念が強すぎて天国へ行けずに彷徨っているのです。」

ラナンはリナの方を向いて頷きました。どうやらラナンは、リナに幽霊のふりをしろと言いたいようです。

リナは自分を捨てて殺そうとした両親に対して、少なからず恨みの気持ちは持ってましたので、ラナンの芝居に快くのることにしました。

「‥よくも私を捨てて殺したわね!‥許さないわ!それに‥‥私の名前はどうして呼んでくれないの?‥まさか、私の名前はつけていなかったの?」

リナは髪を乱して鬼の形相で、お化けのふりをしながら王様に詰め寄りました。

「‥わ、悪かった。だが、これも国の為なんだ。私達は何も悪くない!恨むなら悪い魔女や占い師を恨め!‥だから、早く消えてくれ!消えろー!」

王様は尻餅をついたまま後退りして、リナから逃げようとしました。

リナは王様に再度尋ねました。

「‥私の名前は?」

「‥ない。お前の名前は付けてない。‥‥消えろ、早く消えていなくなれ!この薄汚いお化けめ!」

「‥そうよ、あなたを産んだ私達に感謝するどころか恨むなんてあんまりよ。それに恨む相手は私達じゃないでしょう?私達だって、あなたが呪われた子じゃなければ捨てなかったわよ。これも国の為なの!」

王様と王妃様はそう言って、リナにテーブルの上のパンやサラダや果物、そしてスープのお皿まで投げつけてきました。

リナは、体中に食べ物を投げつけられてドロドロになってしまいました。

ですが、リナにとっては体が汚れた事よりも、両親が自分に名前をつけてくれなかった事や、自分を捨てて殺そうとした事を正当化した事に、大変傷ついていました。

リナは王様達を睨みつけながらも、その目から涙を流していました。

その様子を見ていたラナンは、さすがにリナが可哀想に思えて、リナを抱き寄せると自分の胸の中で泣かせてやりました。


この時ラナンの心の中に、生まれてはじめての激しい怒りの感情が芽生えていました。
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