捨てられたお姫様

みるみる

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24、ニルバァナ大国の王都へ

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ラナンとリナは、まだニルバァナ大国の中にいました。どうやらラナンは、このニルバァナ大国の隅々まで見て回るつもりのようです。勿論偉大な魔法使いを探す為に‥‥。

「とりあえず王都へ行こう。王都は一番人が多い所だからね。偉大な魔法使いに関するヒントがきっと見つかるはずだ。」

「王都‥そう言えばまだ行ってなかったですね。‥こんな格好で大丈夫かしら?みんなお洒落をしてるんでしょ?」

リナは古びたワンピースをラナンに見せて尋ねました。

「‥‥リナ、新しい服と靴を買おう。」

「‥私、お金全く持ってないです。」

「お金なら大丈夫。こう見えても沢山稼いで貯めまくってるからね。それに、お父さんが娘に服を買ってあげるのは、当たり前の事だからね。」

「‥‥助かります。ありがとう。」

ラナンはそう言うと、リナの手を引っ張り王都へ続く道沿いの何店もの洋服店の前を通り過ぎて行きました。ですが、ある洋服店を見つけた途端、すぐにその店に入りました。そして、着くなり早々にリナに服をこの店で買うように促してきました。

「‥リナ、この洋服店なら品質も縫製も心配ない。安心して服を選ぶと良いよ。」

「はい。‥‥でも高そう‥。」

リナは思わずそう呟いてしまいました。

「お嬢さん、心配ないですよ。このお店の洋服はそんなに高くないようにしてありますので。」

「‥あっ、すみません。あまりにこのお店の洋服が素敵でしたので‥。」

リナはお店のご主人に先程の呟きを聞かれていたと知り、本当に申し訳なさそうに謝罪しました。

「店長、娘に似合いそうなワンピースを何点かとドレス、それに靴や帽子も宜しく頼みます。」

ラナンはそう言うと、店の椅子に腰掛けてしまいました。

お店に入ってからものの数分で、店長はリナに似合いそうなワンピース数点とドレスに靴、それに帽子を選び出してきました。

ラナンは店長に支払いを済ませてお店を出ると、辺りに誰もいない事を確信して、リナに買った洋服類を全て空間収納しました。

リナは早速新しいワンピースに身を包み、嬉しそうにくるくるまわっています。ラナンは綺麗な洋服を着て嬉しそうにしているリナを見て、改めてその美しさに感心しました。

「‥リナ、やっぱり着替えない方が良かったかもしれないな。そんなに可愛くなると、誰かに誘拐されてしまうじゃないかと、心配になるよ。」

「‥いやいや、そんな事言うのお父さんだけだから。‥私みたいな地味な田舎者に、誰も見向きしないって。」

リナはそう言いましたが、道でリナとすれ違う男性は必ずリナの事を振り返りました。

リナの元来の美しさが、綺麗な洋服を着たせいで、ますます際立ってしまったようです。

ですがリナは、人々の視線を集めながらも、全くその事に気付かないままさっさと歩いて王都へと向かいました。

道行く男性がリナに声をかけようとしても、リナが全く目もくれずに早歩きで歩いて行ってしまうものですから、声をかけそびれてがっかりする男性が何人もいました。

そんな男性達を横目で見ながら、ラナンは何だか可笑しくてニヤニヤしながらリナの後を歩いて行きました。

そんな風に二人してさっさと歩いて行く事一時間、やっと王都に着きました。ですが時はすでに夕方になっていました。

「‥今日はもう図書館は閉まってしまったかな。‥‥仕方ない。宿をとって、明日の朝一番で図書館へ行くか。‥いや、今から行って閉館後の様子も少し見てみようかな。」

ラナンは図書館で何か読みたい本があるのか、王都へ着くなりすぐに図書館へ行こうとしました。

「‥お父さん、図書館で本を読みたいなら、明日にしたら?」

「‥本も読みたいんだけど‥それ以外にも目的があるんだ。」

「‥何だろう‥嫌な予感がする。」

「まあまあ、とりあえず行こうか。」

ラナンはそう言って、リナの手を引っ張り強引に図書館へ連れて行きました。

図書館へ着くと、館長らしき人が図書館の入り口に鍵をかけて立ち去ろうとしていました。  
 
「館長、私はこういう者です。‥この図書館にまつわるある噂について協会から調査にやって来ました。」

ラナンはそう言って謎のプレートを館長に見せました。

「‥そのプレートは‥分かりました。裏手へどうぞ。ご案内します。」

館長は、ラナン達を連れて図書館の裏出入り口へ向かいました。

「‥あなたは魔法協会に所属する魔法使いだったんですね。」  

館長は鍵を開けながら、ラナンに話しかけました。

「はい。師匠が魔法協会のお偉いさんだったので、自分も自然とそこの協会の会員になったんです。」

「‥でも、会員になるにはよほどの実力がないと駄目なんですよね。‥それにしても、協会へ調査を依頼してすぐに来てくれるとは‥。」

「魔法使い同士の特別な通信手段があるんです。」

「ほぉ~、そうなんですか。」

館長は、ラナンの話を聞きながら館内の図書閲覧室へ二人を案内しました。

「中に入れないように柵がしてあるのは、何故ですか?」

ラナンが聞くと‥‥店長が部屋の天井の方を指差しました。

見ると、沢山の本が蝶々のように飛んでいます。   

「‥‥‥ちなみにこの蝶々達は人を襲ってくる事もらあります。中に入るのはかなり危険なのです。‥ただ、不思議とこの柵の外には空飛ぶ本達は飛び出て来ないんですけどね。」

館長はラナンの方を向いて、両肩を上げてお手上げポーズをとって見せました。

「‥市民からたくさんの苦情が来て困ってたんですよ。本はいつ読めるかとの問い合わせも続いてて‥。もう私達だけではなす術がなくて、困ってたんです。」

ラナンは館長に、明日の朝一番でまた来る事を約束して、その日は宿に帰る事にしました。

「‥あれ?宿なんてとってたっけ?」

リナが不思議に思っていると、ラナンは微笑んで種明かしをしてくれました。

「昨日の夜に魔法使い通信で、この国の王都の図書館についての調査を依頼されたんだ。その時に、宿も手配してもらったんだ。」

「いつの間にそんな依頼を受けたの‥‥?ってそんな便利な通信があるなら、偉大な魔法使いについても、その通信で色々と情報が得られるのでは?」

「いやいや、そんな簡単な話じゃないんだよ。偉大な魔法使いは、魔法使い協会に属していない別格の伝説級の魔法使いなんだ。‥だから誰もその実態を知らないんだよ。」

「‥私達、そんな謎の人物を追ってるんですね。何だか無謀な旅をしている気がします‥‥。」

「‥‥きっと大丈夫だ。僕達はいつか絶対に偉大な魔法使いに会える。その時が来たらね‥‥‥。」

「えっ?その時って‥‥。」

リナはこの王都についてからというもの、ラナンの事がますます分からなくなっていました。

ラナンの事、図書館の事、魔法使い協会の事など‥‥リナの中にたくさんの疑問が生じていました。

そのせいでしょうか‥心身共に疲れ果てたリナは、宿の部屋へ着くなりすぐにベッドに横になって眠ってしまいました。

ラナンはリナに寝具をかけてやると、明日図書館に行って、空飛ぶ本の調査をする為に、魔法の本を徹夜で読み漁るのでした。
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