捨てられたお姫様

みるみる

文字の大きさ
上 下
5 / 46

5、リナの双子の妹、ナターシャ姫

しおりを挟む

ナステカ王国には今年16歳になる綺麗なお姫様がいました。お姫様にはナターシャという可愛い名前がありましたが、まわりの人々はこのナターシャ姫を、妖精のように美しく、どこか儚げな様子を喩えて「妖精姫」と呼んでいました。


ですが、実際の「妖精姫」は、人々のイメージとはかなり違っていました。どこか傲慢で、我がままな姫なのでした。

「はぁ、相変わらず何をしていても満たされないわぁ。」

「姫、またそれですか?」

ナターシャ姫の婚約者、トランタ王国の第二王子バンデルは、姫と一緒にお茶をしていましたが、姫のいつもの口癖には少し辟易していました。


「‥だって、国中の魔女達の祝福のおかげで、ピアノや刺繍、ダンスだって何だって‥‥何の努力をしなくても、できてしまうのよ。‥だから、私は退屈なの。

‥‥一度でいいから、何かを一生懸命努力して成し遂げてみたいわ。‥‥まあ、どうせまた努力する前に出来てしまうのでしょうけど。」


「アハハ、贅沢な悩みだなぁ。だけど、何かを一生懸命努力してみたいか、うん、なんとなく分かるような気がする。」

「でしょう?‥それにしても私の苦手な事って何かあるのかしら?」

「‥乗馬?」

「あっ、それならもうやったわ。馬に乗った途端、すぐにコツを掴んでしまったわ。」

「‥じゃあ、恋は?」

「‥‥えっ‥馬鹿ね。私にはあなたという婚約者がいるじゃない。‥恋なんて必要ないでしょ?」

「‥恋の祝福は受けてないの?」

「‥まあ、祝福を与える魔女達も、私には必要ないと思ったのでしょうね。」

「‥そうなんだ。‥僕は一度でいいから、小説や劇のような恋がしてみたいかな。」

「‥えっ‥。」

「‥あっ、もちろん君との婚約は大歓迎だし、君と結婚してこの国に永住する事も承知しているよ。」

「‥‥。」

「‥ただの妄想だよ。ごめん、ナターシャ。」

「‥‥あなたは私を好きではないというの?」

「‥だって、生まれた時からの婚約者だっただろ?正直君をあまり異性として意識していなかったかもしれない。」
 

「‥‥帰って。」

「‥え?」

「‥帰ってよ!」

ナターシャ姫は、従者にバンデル王子を玄関まで送るように言って、お茶会の席から立ち去ってしまいました。

「‥‥急に何なんだ‥。」

「失礼ながら‥バンデル様はもう少し女心というものを小説などから学んだ方が良いのかもしれません。」

「‥そうなのか?さっきの会話に何かナターシャ姫を怒らせる要素があったのか?」

「‥姫様の前で、別の女性と恋をしたいと言っているように感じました。」

「‥‥まあ、「妖精姫」と呼ばれるだけあって美しい外見には好感が持てるけど、姫の性格は妖精のように儚げな、という感じではないよなぁ。何だか傲慢で自己中心的な感じがしてしまうんだ。」

「‥‥。」

「あっ、否定しないんだね。‥あの顔で、違う性格の女の人なら、もっと好きになれたのかもな‥‥なんてね。でも、大丈夫。僕は我がままなナターシャ姫も嫌いじゃないよ。小さな頃からずっと一緒にいたせいか、一緒にいると凄く楽なんだ。だから、結婚しても彼女となら楽しく過ごして行けると思うんだ。」

「ナターシャ姫を大切にして下さいね。」

「‥分かってるよ。」

バンデル王子は、そう言ってトランタ王国へと帰国しました。次の滞在の時までには、姫の喜びそうなプレゼントでも贈って、姫の機嫌を取らなきゃな、なんて考えながら‥‥。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

彼女はいなかった。

豆狸
恋愛
「……興奮した辺境伯令嬢が勝手に落ちたのだ。あの場所に彼女はいなかった」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

婚約破棄は誰が為の

瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。 宣言した王太子は気付いていなかった。 この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを…… 10話程度の予定。1話約千文字です 10/9日HOTランキング5位 10/10HOTランキング1位になりました! ありがとうございます!!

処理中です...