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36、王の狂気

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私がクロノスを出産し何ヶ月か過ぎた頃、国民達が待ちに待った、王と私の結婚式がようやく行われました。

大聖堂で、教皇様の前でお互いに永遠の愛を誓い合った後、街を馬車でパレードし、たくさんの国民に祝福されました。私は祝福してくれた国民達全てに笑顔で手を振り応えました。

そんな私の姿を見て感動した国民達は、私の事を「聖母のような王妃マリア様」として讃えてくれました。

一方、私と王の子供クロノスは、産まれてから一度も病気や怪我をせずに、スクスクと育っていきました。3歳になり、言葉も流暢になりましたし、色々と好奇心も旺盛になってきたようです。

今もこうして、侍女や護衛達の目をかい潜って王の部屋にまで来てしまいました。


「おかあさま、父上とばかり話していないで、僕とも遊んで下さい。」

「クロノス、寂しい思いをさせてごめんなさいね。あと少ししたら、すぐ行きますからね。」

王の部屋に、ひょっこりと遊びに来たクロノスに私は優しく話しかけました。ですが、王はご立腹です。

「クロノス、お前は俺のあとを継ぐ身でありながら、父の仕事の邪魔をするとは、何という事だ!マリア、お前もクロノスを甘やかし過ぎる!」

「‥申し訳ありません。ですがクロノスはまだ3歳です。」

「‥俺が3歳の時は、もっと落ち着いていたし勉強だってしっかりやっていた。」

「‥‥。」

私は侍女を呼びクロノスの事を頼むと、引き続き書類の整理をしました。

「クロノスは、俺に似てないな。髪も顔も‥。あれは本当に俺の子か?」 

「間違いなくあなたの御子です。‥あの子は強いて言えば、私のルシフェルの姿によく似ています。」

「‥そうだな。あの金髪も青い瞳もルシフェルそのものだ。あれは間違いなくお前の子だ、ルシフェル。」

「あの子はあなたにもよく似ていますよ。甘えん坊な所とか。」

「‥‥俺は甘えん坊なんかではない。‥下らない事を言うな。」

「はい。」

王は私の言葉を聞き、一瞬腑に落ちないような顔を見せましたが、またすぐに仕事に集中しました。

私も王の横に立ち、王が決裁した書類を仕分けていきました。

しばらくすると、王が壁に掛かった時計に目をやりました。

私は、王が休憩をとりたいのだと思い、侍女にお茶を頼もうと扉に向かいました。ですが、王が私の腕を掴んで私の動きを止めてしまいました。

「‥あなた?」

「‥ルシフェル、今は誰もいないし‥ここでしてみないか?」

「してみるってまさか‥‥。」

王は私の体を抱き寄せると、膝の上にはのせました。

「最近は、毎晩クロノスが邪魔してきて碌にできていなかったじゃないか‥。」

「‥いつ誰が来るか分からないじゃないですか。駄目です。」

「‥大丈夫だ。」

王はきつく私を抱きしめると、片方の手で私の胸元を露わにし、その胸の頂きを吸い始めました。

「‥そこは‥駄目です。」

「‥ずっとクロノスに独占されてたんだ。もう良いだろ?」

「‥クロノスは、乳離れをまだ完全には出来ていません。まだたまに吸いに来るのです。」

「‥それはいかんな。‥だから最初からクロノスを乳母に任せておけば良かったのに。」

「‥地球でも乳母なんて見た事ないですし、それに他人の乳をクロノスに吸わせるのはちょっと‥‥。」

「‥もう良い。とにかくこれは今日からまた俺のものだ。」 
 
王はそう言って執拗に、私の乳首ばかりを舐めたり吸ったりし続けるのでした。

「‥ルシフェル、立て。」

「‥えっ。」

王は急に立ち上がり、私を机の前まで連れて行くと、私に机に手をつくように言いました。

私が言われた通りにすると、王は私のスカートを捲り上げ、下着を脱がせてしまいました。私は部屋の入り口の扉に向かい、お尻を突き出した格好になってしまいました。

「‥これは嫌です。」

「‥大丈夫だ。」

「‥うっ、う‥‥。」

王は私の腰を掴むと、後ろから一気に挿入してきました。まだ入り口が濡れていない為、苦痛が伴いました。ですが、王はそんな事はお構いなしに、激しく腰を打ち付けてきました。

「‥あっ、駄目‥誰か‥来ちゃ‥う。鍵は‥かけてあ‥るのですか?」

王はそんな私の言葉など聞く耳も持たずに、狂ったように腰を動かしています。

私は抵抗する事を諦めて、王にされるがままになっていました。

するとその時、扉をノックし誰かが部屋に入って来ました。

「‥王、‥あっ!失礼しました。」

入って来たはずの誰かは、またすぐに退室していきました。

私は自分のこんな姿を見られてしまった事が恥ずかしくて居た堪れない思いでいましたのに、王はそんな事などどうでも良いといった風です。

「‥ルシフェル、‥‥っ。」

王は吐精してスッキリしたのか、自身の股間を清拭すると、再び何食わぬ顔で仕事に戻りました。

「‥‥。」

私は、太腿に王の精液が垂れてくるのを感じました。慌てて清拭しますが、何となく肌に嫌な感じが残り、顔を顰めてしまいました。


「‥ルシフェル、そんな顔もするんだな。‥それに、君は近頃ちっとも悪魔っぽくない。

俺も時々君が悪魔だという事を忘れてしまうよ。‥だって君はどこからどう見ても、外見も中身も人間の母親そのものだ。」

「‥‥。」

「‥まあ、良いさ。」

オホン、

「宰相、待たせたな。入れ。」

「‥‥!」

「‥あっ、すみません。失礼します。」

扉を開けて、王の部屋に入って来たのは宰相でした。

きっと先程、私と王の行為の最中に部屋に入って来たのも宰相なのでしょう。

私はかつて恋した相手にあられもない姿を見られてしまったのです。

私と宰相は、お互いに何となく気まずさを感じながらその場にいました。

そして、そんな私達の様子を愉しそうに眺める王の姿がありました。

私が王をじーっと見つめてますと、いやらしい笑顔を浮かべる王と目が合ってしまいました。

王は私から目を逸らさずに、さらに笑みを深めるのでした。

この瞬間、私は確信しました。

王が宰相にわざと私達が交わり合う姿を見せたのだと‥‥。

王は我が子クロノスと宰相に嫉妬していたのでした。

私の知ってる彼は、いつの間にか私の知らない彼になっていました。

私の知らない賢王マルキに‥‥。

彼はこの時から少しずつ内なる狂気を見せ始めました。
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