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17、ロザンナの回想

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ロザンナがまだロベールと知り合う前、ロザンナはまだ恋を知りませんでした。

父親同士が仲の良いガナンとは、何となくお互いの家を行き来するようになりましたが、ガナンを特別に好きだとかそう言った気持ちはありませんでした。

やがてそんな二人も年頃になり婚約をして、まわりも結婚を意識するようになりました。

ロザンナはガナンの真面目で寡黙なところが嫌いではありませんでしたが、このままガナンと結婚してつまらない生活を送るのか‥と思うと憂鬱になりました。

ガナンの趣味や性格が、ロザンナとは合わなかったのです。

ガナンは庭の手入れをしたり、読書をしたりする事が好きでしたが、ロザンナはそんな事よりも、買い物をしたり、男性に甘い言葉をかけられたり優しく抱きしめて貰ったりする事に憧れていたのです。デートをしたり、プレゼントを貰う事にも憧れていました。

ですが、ガナンはそういった事をロザンナに一切してこなかったのです。

ロザンナは、それでも他に好きな男性もいない為、ガナンと結婚するしかないと諦めていたのです。

そんなロザンナに、ある日衝撃的な出会いが訪れました。画家のロベールがこの地にやってきたのです。

ロザンナの美しさに惹かれたロベールは、彼女を絵のモデルに誘いました。

そして絵のモデルと画家として二人っきりで過ごすうちに、いつしか二人は結ばれました。

ですが、ロベールは田舎は嫌いなので長居はしないといい、すぐに王都へ帰ると言い出しました。

ロザンナは何もかもを捨てて、ロベールに付いて行く事にしました。‥この時一瞬ロベールの顔がひきつりましたが、渋々ロザンナの同行を承諾したのでした。

ロザンナがロベールに付いていって王都へ来た時、ロベールの裏の顔を知る事になりました。

既婚のご婦人方と毎晩浮気をし、絵を描くことは二の次の生活をしていたのです。

ロザンナが作った食事も一度も口をつけた事はありませんでした。

ロベールだけは外で食事を済ませてくるからです。

ロザンナは寂しくて毎晩泣き暮らしましたが、それでもロベールの妻の座に固執しました。何年も何年も‥。

‥そんなある日、ロベールのアトリエに時々来ていた若いモデルの女の子が妊娠しました。ロベールの子でした。

ロベールは大喜びして、そのモデルの子を家に住ませました。

そしてロザンナは、モデルの女の子のお世話をする事になりました。出産も手伝いましたし、赤ちゃんのお世話も手伝いました。

外でロザンナが赤ちゃんの布おむつを洗っている時に、ロベールとモデルの女の子が話している声が聞こえてきました。

ロザンナが声のする方へ近づき、壁に耳をつけると‥‥

「ねえ、ロベール。あの女をいつまでここに住まわせるの?邪魔なんだけど。」

「まあまあ、ただで家事を全てやってくれるんだ。ありがたい話じゃないか。」

「でも‥。」

「それなら‥赤ちゃんが大きくなって手がかからなくなったら追い出そうか。」

「嬉しい!」

この時初めてロザンナは知りました。二人に自分が家政婦扱いをされていた事を‥。

ロザンナは悔しくて溢れ出る涙を腕で拭いながら、声を殺して泣きました。泣き声をあの二人に聞かれる訳にはいかないのです。

ロザンナは、この時ある決意をしました。

赤ちゃんをいっぱい可愛がって自分に懐かせてやろうと。そうして‥モデルの若い女の子を追い出してやろうと思ったのです。

ですが何年かするうちに、赤ちゃんだった子供は生意気な少女に成長し、ロザンナをやはり家政婦扱いするのでした。

ロザンナはもう我慢しきれずに何度も田舎へ帰ろうとしました。

‥ですが、ロザンナがいないと家事をやる人がいない事に気付いたロベール達は、ロザンナを追い出す事をやめて、逆に田舎へ帰らせないようにしようとしてきました。

それからまた何年かしたある日、買い物をしていたロザンナは、そのまま衝動的に自分のいた田舎へ走り出しました。途中荷馬車にも乗せてもらったりしながら、何とか田舎の自宅へ帰る事が出来たのです。

実家では弟がお嫁さんが迎えており、母は心労で亡くなっていました。

父親は、突然帰ってきたロザンナを当然叱りましたが‥苦労してきた娘の事を思うと無碍にもできず、そのまま家に住まわせる事にしました。

ロザンナは、家で過ごすうちにふとガナンのことが気になりました。

ガナンが結婚した事も聞いていましたので、どんなお嫁さんなのかをこっそり見に行く事にしました。
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